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Diameterによる通信ポリシー制御

  • (※)このページで紹介している事項は記事初出時点の情報に基づいたものです。本ページはアーカイブとして掲載しています。

2012年8月28日

2012年2月にLTE対応を行ったIIJモバイルサービスでは、Diameterプロトコルを用いた通信制御を行っています。本稿では、プロトコルの概要や、通信制御を取りまく状況をご説明します。

3GPP Gx/Gyインタフェース

3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、ユーザの通信をリアルタイムに制御するために、Gx(通信ルールの管理)、Gy(通信量の管理)というインタフェースを規定しており、OCS(Online Charging System)がユーザの通信状況を把握し、PCRF(Policy and Charging Rules Function)からそれにあわせた通信ルールを適用することになっています。IIJmio高速モバイル/Dサービスをご利用のお客様には、速度管理がGx、クーポン管理がGyとお伝えするとイメージしやすいでしょうか。

通信制御システム概要図

Gx、Gyインタフェースの通信は、Diameterという認証プロトコル上で動作しています。認証プロトコルとしてはRadiusが現在も広く利用されていますが、Diameterはその後継として策定されたプロトコルです(ただし、Radiusとの互換性はありません)。数多い変更点のうち、以下の2点が設計上の大きな違いであると考えています。

ステートフルである
DiameterはTCP(またはSCTP)上で動作し、その中で定期的にメッセージ(Device-Watchdog-Request/Answer)を交換して相手の応答を確認しあうステートフルなモデルになっています。UDPを利用するRadiusでは一定時間応答がなかったらリトライするといった再送管理が一般的でしたが、Diameterでは障害検知、冗長化したセカンダリサーバへのフェイルオーバができるといった点で有利といえます。
また、Diameterにはセッションという概念があり、例えば、あるユーザが接続してから切断するまでに行われた一連の認証メッセージには、同一のセッションIDが割り当てられるようになっています。Radiusでも、Acct-Session-Idなど特定の属性を利用することで同様の機能を実現していますが、その属性を利用するかどうかは実装に任されていました。Diameterではセッション管理が必須になっているため、よりステートを意識した仕様になっています。
Diameterアプリケーションとして自由に拡張できる
メッセージのフローなどをDiameterアプリケーションとして定義し、拡張することができます。クライアント/サーバ間ではどういったアプリケーションに対応しているかのネゴシエーション(Capability-Exchange-Request/Answer)が行われ、両者が対応している場合に実際のメッセージ交換が行われます。

Gx、GyもDiameter Credit Control ApplicationというDiameterアプリケーションとして動作していて、次のようなメッセージ交換が行われています。

メッセージフロー

IIJでは、Gx、Gyを利用する通信制御システムをほぼ独自で開発し、サーバ運用を行っています。なお、IIJでは通信量(バイト)に基づいた制限を実施していますが、"Credit" Controlなので仕様としては通信時間や料金(通信内容に応じて料金を設定する)に応じた制御も定義されています。

オンラインチャージングについての考察

自由な情報基盤としてのインターネットと制御は相容れない性質をもつ部分もありますが、IIJでは、NTTドコモ網を利用したMVNOサービス(IIJモバイルサービス/タイプD、IIJmio高速モバイル/Dサービス)において、以下の観点からGx、Gy制御を実装しています。

公正な利用の推進
IIJはNTTドコモとの間で網の接続を行い、無線によるサービスを提供しています。お客様の利用状況に応じて接続部分の帯域を増やす対応を行っていますが、制御を行わないと一部のお客様によって帯域が占有され、他のお客様の通信品質を著しく劣化させる危険性があります。そういった事態を回避するために、制御を行っています。
プリペイド型料金プランの実現
事後に多額のパケット通信料を請求する方式では、通信事業者として行うべきリスクコントロールをお客様の料金に転嫁した形になります。そこで、プリペイド型の料金プランを実現し、事前に申し込まれた通信量分のサービスを正しく提供するために、Gyによって通信量をリアルタイムに把握しています。
継続的な接続性の提供
通信事業者として、継続的な接続性を提供することが何よりも重要であると考えています。通信量を超過した際に切断させるのであれば、必ずしもGxは必要ではないのですが、Gxでの速度制限を併用することで、文字や音声による必要最低限な通信を継続して提供しています。

LTEによるモバイル通信の高速大容量化が進む中、通信制御は大きな課題となっています。3GPPでも最近になってOCS/PCRF間のSyインタフェースが策定されるなど、オンラインチャージングをはじめとした制御技術は、当面注目を集めることになりそうです。限られたリソースを効率的に利用するという観点から、通信制御の必要性をご理解ください。

今後に向けて

困難な点もありましたが、IIJでは、通信制御システムを自社で開発したことにより、複数の回線で通信量をシェアするというMVNOならではのサービスを、いち早く提供できました。

オンラインチャージングを先行導入したMVNO事業者として、今後も魅力あるサービスを開発し、実際に使ってみてご納得いただけるサービスをリリースしていきますので、今後ともご期待ください。

参考文献

上記では簡単なご紹介にとどまっていますので、Gx,Gyの技術的なところをお調べいただく場合は、以下をご参照ください。

また、Diameterの動作を検証されたい場合は、以下のようなものがあります。Gx,Gy機能については追加で実装する必要がありますが、ご興味がありましたら、ご参照ください。

阪本 裕介

執筆者プロフィール

阪本 裕介(さかもと ゆうすけ)

IIJ ネットワーク本部 ネットワークサービス部 モバイルサービス課
2009年IIJ入社。 IDゲートウェイサービスのサポート業務を経て、現在はRadiusやDiameterといった認証サーバの開発/運用、モバイルサービス向けの物流システム運用などを担当。

関連リンク

  • IIJ Technical WEEK 2012 講演資料 「MVNOによるOCSの実装」 [PDF:1.54MB]PDF
    IIJはGx/Gyによるオンラインチャージングシステム(OCS)を今年2月より運用し、IIJmioブランドで個性的な接続サービスを提供開始するなど、MVNOとして着実に成長しています。本セッションでは、日本でもおそらく初めてとなるMVNOによるOCSの実装を、レイヤ2MVNOのネットワーク構成と共にご紹介します。 (2012年11月15日)
  • 最新の技術動向 「MVNOによるLTE接続」
    IIJでは、2008年1月より提供している3Gによるモバイル接続サービスに加え、2012年2月にはLTE(Long Term Evolution)によるモバイル接続サービスを開始しました。LTEといえば速度と遅延に注目が集まるところですが、ここでは3GとLTEの設備や接続方式について簡単に紹介します。 (2012年2月27日)

関連サービス・ソリューション


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