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IIJ.news Vol.166 October 2021
マルチクラウドやハイブリッドクラウドの増加にともなう業務の複雑化や恒常的な人材難により、情報システム部門は厳しい運営を強いられている。
そこで IIJ では「IIJ 統合運用管理サービス(UOM)」において、こうした課題を解決する新たなツールの提供を開始した。
IIJ クラウド本部クラウドサービス3部 副部長
福原 亮
サポートセンター勤務、システム監視運用設計担当を経てIIJ統合運用管理サービス(UOM)を始めとする、アウトソーシングサービスの企画/開発に従事。
マルチクラウドやハイブリッドクラウドを前提としたシステムが徐々に一般的になるなか、企業の情報システム部門(以下、IT部門)は、従来とは異なる取り組みが求められています。しかし、増大するシステムに対しIT人材は減少の一途をたどっており、このままでは業務遂行が困難になりつつあると考えられます。
システムの実情は、WEBサイトや基幹業務系まで多岐にわたるほか、個々に最適化して構築されることも多く、その構成や運用管理の仕組みがまちまちであるケースが散見されます。さらに、人材難を補うために(複数のベンダに運用を任せる)マルチベンダ化が進み、システム運用に関連した業務をいっそう複雑にしています。
こうした「システム増に比例した業務増」という構造から脱却できない状況で、IT部門は苦境に立たされています。
このような背景のもと、IIJでは2012年から「IIJ統合運用管理サービス(UOM)」を提供し、マルチクラウドの監視やオペレーションの自動化に取り組んできました。そして現時点で650社以上にご利用いただいています。
さらに近年では、お客さまからいただくご相談が、システムの監視やアウトソーシングだけでなく、運用業務の効率化を目指す仕組みにまでおよぶようになりました。そこでIT部門の業務を効率化する機能として、パブリッククラウドの運用で得たノウハウをテンプレートに盛り込み、それらを具備した「構成管理」と「ITSMツール」を新たに開発し、提供することにしました。
まず、実際の運用業務においてどのような課題があるのか、見てみましょう。
「構成管理」の側面から見ると、オンプレのサーバ情報、ソフトウェア情報、保守情報といった項目は、Excel で管理されていることが多い一方、AWSや Azure などクラウドサービスの構成が Excel で管理されているケースは少ないようです。仮に Excelで管理していると、次のような課題を抱えていることが多々あります。
Excel は便利なツールですが、手作業に起因する更新漏れが起こったり、登録データの棚卸しに追われるなど、作業負担が発生しがちです。そこで「構成管理」ツールを使うことで、次のような効果が期待できます。
WEB画面入力、CSVインポートのほか、Excelのインポートで長年使ってきた Excel データを活用して、構成情報として一元登録できます。Excel データはサーバ、ソフトウェア、AWS、Azure などの構成テンプレートに沿って一覧化されます。一元化したデータは、ノード毎に管理グループを設定し、運用体制に合わせてアクセス制御できます。構成テンプレートは業務実態に合わせてカスタマイズが可能で、従来の Excel を活かしてツール化できます。
アカウントやアクセスキーを使って、定期的にサーバ、ソフトウェア、パブリッククラウド情報を自動収集し、構成管理情報を最新化します。Excel から取り込んだデータも自動更新でき、更新データを Excel 形式でダウンロードして従来の運用を続けることも可能なので、手作業による更新漏れを防ぎます。
保守やライセンスの期限情報を登録しておくことで、期限が切れる前に自動通知が管理者に届き、更新漏れのリスクを減らします。また、保守情報はサーバやソフトウェアと紐づけて管理できるので、システム障害時にはノード情報をキーに保守情報を迅速かつ容易に参照して、障害対応につなげることができます。
次に、システムを運用する業務に目を向けてみましょう。
システム運用者にとって避けられないのが、アラート発生時の障害管理ですが、このほかにもシステム変更作業の管理、問題事象の管理など、さまざまな業務プロセスが存在します。よって、これらの業務プロセス(ITIL:Information Technology Infrastructure Library)が適切に実行されないと、予期せぬシステム障害を引き起こしたり、障害の根本対策まで踏み込めず場当たり的な対応になるなど、管理者にとって頭の痛い状況に陥ってしまいます。例えば――
こうした課題に対し、「ITSMツール」を使用することで、次のような改善が期待できます。
複数の管理ツールから発生したアラートを、インシデントチケットとして自動起票し、一元管理できます。登録されたインシデントは、発生ノードに応じて設定した管理グループによりアクセス制限されるため、対応が必要なインシデントのみ表示され、システム担当者は迅速に障害対応を進めることができます。また、IT管理者には全てのインシデントが横断的に表示され、ワンツールで複数システムのインシデント状況を把握できるようになり、管理ツールを使い分ける煩わしさから解放されます。
運用業務に合わせた業務プロセスをワークフローとして定義できます。システム担当者は業務フローに沿って対応することで、属人的な業務による運用品質のばらつきを抑えます。ワークフローは、あらかじめ用意されたサンプルのほか、業務実態に合わせてカスタマイズでき、専門知識がなくてもドラック& ドロップ形式で作ることが可能です。IT管理者はワークフローの進行状況を見ることで、システム担当者からの報告に頼ることなく、業務進捗を把握できます。
システム変更をともなう作業では、作業のリスク・影響を検討し、IT管理者の承認を得るプロセスを義務付けることで、作業品質の向上が期待できます。承認プロセスはインシデントや問題などの管理にも利用でき、IT運用統制を強化します。
ここでご紹介した二つの業務効率化ツールには、運用当事者ならではのノウハウを詰め込んだテンプレートが備わっており、運用業務を効率化するMMP(マルチクラウドマネジメントプラットフォーム)としてご利用いただけます。そして、マルチクラウド環境のシステム監視・運用と業務運用を一元的にサポートする「オペレーションのハブ」として、去る10月1日から提供を開始しています。
今回は第一弾として、二つの機能をリリースするに至りましたが、IT部門にはまだまだ効率化すべき業務が残されています。今後も例えば、IT利用部門とのあいだでの問い合わせ、各種依頼に対応するサービスデスク業務、クラウドのデリバリー業務などもフォローしていく予定です。引き続き、UOMの機能展開にご期待ください!
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