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Technical Now 株式会社横浜銀行 銀行業務を支える行内ネットワークを刷新。セキュアかつ可用性の高い統合基盤を実現

IIJ.news Vol.166 October 2021

2020年12月に創立100 周年をむかえた横浜銀行。日本最大級の地方銀行である同行は、事業戦略の一環として行内ネットワークの変革に取り組んだ。その実現を担うパートナーに選定したのが IIJ である。同行を中心とするコンコルディア・フィナンシャルグループのネットワークおよびセキュリティシステムを共通化し、グループシナジーによるお客さま本位の銀行サービスの提供に力を入れている。

株式会社横浜銀行
ICT 推進部 グループ長
福田 覚洋 氏

株式会社横浜銀行
ICT 推進部 グループ長
武藤 康治 氏

株式会社横浜銀行
ICT 推進部 プロフェッショナル
平野 篤志 氏

[導入前の課題]クラウド利用に最適で冗長性の高いネットワークが必要

―― ビジネスを支える ICT について、どのような考えにもとづいて活用されていますか。

武藤:
行内業務の効率化はもちろん、お客さまに最適な金融サービスを提供するうえで、ICT が担う役割は非常に大きいです。近年はクラウドサービスも積極的に活用し、インターネットバンキング、スマートフォン向けの残高照会アプリ、来店予約システムなどチャネル・サービスの拡充を図っています。2020年1月には Microsoft 365 を導入し、これを軸に働き方改革も推進しています。
平野:
ICT の活用と並んで重視しているのが、セキュリティです。クラウドの利用拡大とともにインターネットの利用も増えているため、サイバーセキュリティの動向を踏まえ、常に最新の対策に取り組んでいます。

―― 既存の行内ネットワークにどのような課題を抱えていましたか。

武藤:
課題は3つありました。1つ目は老朽化です。これは当行だけでなく、グループの東日本銀行も同じです。別々のネットワークを構築・運用していたのですが、ともにリプレース時期が近づいていました。2つ目は耐障害性の向上です。既存ネットワークで採用していた2拠点におけるアクティブ/スタンバイ構成において障害時の切り替え時間が課題でした。また、業務利用していないスタンバイ回線の維持費も負担になっていました。3つ目はネットワークの性能向上です。クラウド利用の拡大や Microsoft 365 の導入を見据え、ネットワークの柔軟なサイジングやさらなる性能強化が必要でした。

[選定の決め手]幅広いポートフォリオと要件に寄り添った提案を評価

―― 課題解決に向け、どのような基盤の実現を目指したのですか。求めていた要件を教えてください。

福田:
既存ネットワークの刷新を機にグループ統合基盤を構築することにしました。インターネット接続回線もアクティブ/アクティブの構成に変えることで、耐障害性を高めると同時に負荷分散を図り、高い冗長性を確保しようと考えました。さらに帯域も増速して、アクセスが集中してもボトルネックが発生しない通信環境を整備しようと考えました。
平野:
セキュリティに関しては、標的型メール攻撃やランサムウェアの攻撃が増えており、当行も危機感を抱いていました。最近の攻撃は非常に巧妙で、水際で完全にブロックすることはむずかしく、「侵入前提」の対策が必須と言われています。入口/出口対策を強固にして侵入を防ぎつつ、たとえ侵入されてもマルウェア感染被害を最小限に食い止めるため、ログを分析して検知する対策が必要です。セキュリティ機能もグループで統合すれば、全体のセキュリティレベルが向上し、運用の効率化も期待できます。

―― 新たな基盤を実現するパートナーとして IIJ を選定した理由を教えてください。

武藤:
ネットワークやサイバーセキュリティ対策のポートフォリオが幅広く、導入実績も豊富でした。IIJ から提供されるソリューションの多くはアセットレスで利用できるようサービス化されており、導入も想像以上に容易でした。また、検討段階から当行の立場に立って、最適な構成を考えてくれたことも大きな選定ポイントになりました。行内ネットワークのリプレースは、2018年初から複数ベンダの提案を比較検討し始めましたが、IIJ は当行の要件を汲み取り、本社および事務センターの2拠点によるアクティブ/アクティブの冗長構成を提案し、ネットワーク機器も運用負荷を軽減するマネージド型サービスで構成してくれました。当行のニーズに非常にマッチしていたため、2018年12月に正式契約し、リプレースプロジェクトをスタートしました。

―― Microsoft 365へのダイレクト接続用のネットワークも整備されました。

平野:
Microsoft 365 の導入も決めていましたが、通信量が不透明だったので、ネットワークにどれだけのスペックが必要なのか読み切れませんでした。IIJ はサービスを提供するだけでなく、職務毎にネットワークの利用状況などを調査し、必要な帯域やセッション数などを試算・提案してくれました。それにより最適なサイズを実現できました。

―― 行内ネットワークに続いて、リモートアクセス回線もリプレースされました。その経緯と狙いを教えてください。

平野:
リモートアクセス回線のリプレースは、2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック対応のためです。大会期間中は公共交通機関の混雑緩和のため、テレワークが推奨されていました。以前からリモートアクセス環境は整えていましたが、渉外担当など特定業務の利用を想定したもので、テレワーク環境にはスペックが不足していました。そこで、2019年6月に「IIJ フレックスモビリティサービス」を導入することにしたのです。これは、ユーザが切断のオペレーションをしない限り接続が継続する“切れない” VPN サービスで、VPN の課題だった「遅さ」と「切れやすさ」を解消できます。サービスとして提供されるので、アカウントを柔軟に追加できる点も魅力でした。

[導入後の効果]通信品質が向上し、多層防御でセキュリティも強化

―― 改めて、今回リプレースした行内ネットワーク基盤の全体像を教えてください。

武藤:
マネージド型のスイッチやルータを導入し、本社および事務センターの2拠点による冗長構成を実現しました。2020年1月より、グループ共通の統合基盤として稼働を開始しています。この統合基盤はグループ各社の外部接続のゲートウェイの役割も担っています。本社および事務センターにインターネット接続回線を導入し、100Mbps だった帯域もそれぞれ 200Mbps のアクティブ/アクティブの構成に増速し、負荷分散を図っています。また、これとは別に Microsoft 365 へのダイレクト接続用として、本社および事務センターにそれぞれ 500Mbps のネットワークも導入しました。ExpressRoute を経由して接続する仕組みです。
平野:
統合基盤は外部接続のゲートウェイとなるため、セキュリティ対策も強化しました。ファイアウォールや WEB/メールセキュリティによる入口/出口対策のほか、サンドボックスによる振る舞い検知も組み合わせた多層防御を実現しています。また、CASB(Cloud Access Security Broker)による WEB 利用の可視化や IIJ の SOC サービスの活用により、迅速なセキュリティインシデント対応も可能になりました。

―― 今回のリプレースにより、どのようなメリットを実感していますか。

武藤:
以前は行内からインターネットへのアクセスが集中すると、レスポンスが遅いといった不満が寄せられることもありましたが、今はまったくありません。利用者の満足度が上がっているのを実感します。IIJ フレックスモビリティサービスは、結果的にコロナ禍への対応にも役立ち、テレワークによる在宅勤務にスムーズに移行できました。以前のリモートアクセス回線に比べて、接続が簡単で通信品質も向上したと利用者に好評です。
平野:
セキュリティ面では、多層防御を IIJ のサービスに一本化し、SOC でより多くの相関分析ができるようになりました。これによりインシデントの検知精度が向上し、過検知・誤検知は明らかに減少しています。インシデントが発生しても、検知から調査まで IIJ がワンストップで対応してくれるので、運用負荷も軽減されています。

―― 最後に今後の展望を教えてください。

福田:
今回のリプレースでグループ共通の統合基盤を実現できました。統合により運用効率を向上できたことに加え、ネットワークの増速やセキュリティ強化にもグループ全体として取り組めるようになりました。今後もこの基盤をベースにグループシナジーの向上を図り、コロナ禍の克服と地域の持続的な成長に貢献していきます。

横浜銀行 CONCORDIA コンコルディア・フィナンシャルグループ

株式会社横浜銀行

  • 本社:神奈川県横浜市西区みなとみらい3丁目1番1号
  • 創業:1920 年12月16日
  • 資本金:2,156 億2,800万円
    (2020 年3月31日現在)
  • 従業員数:4,559人(2020年3月31日現在)

ライフステージに応じた総合金融サービスを提供。近年はコンコルディア・フィナンシャルグループの中核銀行としての活動も強化。高度の専門性と職業倫理を持つ金融のプロフェッショナルとして、お客さま本位の取り組みを推進し、地域社会にとって魅力溢れる金融グループを目指す。

 ※本記事は2021年1月に取材した内容を元に構成しています。


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