ページの先頭です


ページ内移動用のリンクです

  1. ホーム
  2. IIJについて
  3. 情報発信
  4. 広報誌(IIJ.news)
  5. IIJ.news Vol.168 February 2022
  6. エンタープライズマーケットの概況とビジネスクラウドの展開

IT Topics 2022 エンタープライズマーケットの概況とビジネスクラウドの展開

IIJ.news Vol.168 February 2022

いわゆる「第四次産業革命」がもたらした時代の流れは、コロナ禍にともなう半ば強制的な社会変革により、いっそう激しさ・加速度を増している。
時代はいまだ不透明な様相を呈しているが、ここを乗り切るにはどのような指針が必要なのか?

執筆者プロフィール

IIJ 専務取締役

北村 公一

1978年、新日本製鐵株式会社(現、日本製鉄株式会社)に入社。研究開発本部、エレクトロニクス・情報通信事業本部に勤務した後、2002年4月新日鉄ソリューションズ株式会社に転出。同社にて、2004年6月取締役、2009年9月常務取締役、2012年4月専務取締役、2014年4月取締役副社長執行役員を歴任。この間、産業(製造業)部門、流通部門、鉄鋼部門、テレコム部門、公共部門、等を担当すると共に、海外現法、営業統括、ソリューション企画・コンサルティング、IoT、等も管掌。2019年8月に同社を退職し、同年9月より当社顧問に。2021年6月より専務取締役に就任。ビジネスユニット長を所管。

パラダイムシフトに対峙する

2021年はコロナ禍に明け暮れた1年でした。まだ予断を許さないものの、今年2022年はアフターコロナに向かうと予想されます。

コロナ禍は、従来からの働き方改革やデジタルシフトを一気に加速させ、人々の行動様式や価値観を大きく変容させました。具体的には、テレワークやオンライン会議がビジネスに取り込まれ、ビジネス以外でも、ネットショッピング、動画配信、オンライン授業(講座)などの需要を大きく喚起しました。この潮流は不可逆的であり、アフターコロナにおいても継続すると考えられます。

法人ビジネスの領域では、インターネットに代表されるネットワークや(スマートフォンなどのIT機器を含む)ITの格段の進歩・普及により、現在は第四次産業革命の真っ只中にいると言えます。18世紀後半の英国における蒸気機関の発明(第一次産業革命)、19世紀全般にわたる化学・電気・石油・鉄鋼などの広範囲な技術革新(第二次産業革命)、20世紀末のコンピュータの出現(第三次産業革命)は、それぞれ我々の生活に大きな変化をもたらしましたが、いずれも製造・供給サイドに軸足を置いた、規模の経済における革命でした。

一方、今日の第四次産業革命では、かつての地産地消の経済が崩壊し、差別化された製品・サービスが時間や国境を越えて市場を席捲する時代が到来しました。ネットを介した世界共通のプラットフォーム上でグローバル化・均質化され、ECに代表されるバーチャル(ネット)な空間が、これまでのリアルな空間に取って変わりました。

豊かな時代になったことで、モノの所有に固執しないで、理想とする生活や体験を追求・消費することに人々の興味は移り、シェアリングエコノミー(車のライドシェアなど)やサーキュラーエコノミー(メルカリなど)をはじめ、ITの世界でも、オンプレミスやプライベートクラウドから SaaS やパブリッククラウドへの移行、さらには買い切り・所有からサブスクリプションモデルへの移行などが急速に進んでいます。これはつまり、良い製品を高品質で大量・安価に提供する製造・供給サイドの経済から、必要なモノを、必要な量だけ、必要な時に調達する需要サイドの経済に転換したと言い換えられます。

2022年はこうしたアフターコロナ下で進む我々の働き方・暮らしの変化と、法人ビジネスにおける第四次産業革命がもたらしたパラダイムシフトの2つの大きな潮流(ニューノーマル)に、我々がどのように対峙していくのかが問われる年になります。

エンタープライズマーケットの概況

アフターコロナ下での働き方・暮らしの変化への対応ですが、従来からIIJでは、場所や時間にとらわれない多様な働き方・暮らしを実現するデジタル上のオフィス空間をデジタルワークプレース(DWP)と位置付け、全ての方々に共通して使っていただけるエンタープライズマーケットの拡大を目指してきました。

以前は、出張者や一部の在宅勤務者が利用していた社外から社内IT環境へのアクセスが、コロナ禍を機に一気に拡大し、インターネット接続・モバイル接続などの需要が逼迫しました。

この状況に対しては、オフィスITで必要とされる多様な機能を適材適所で組み合わせ、アセットレスで提供するDWPの拡充で対応してきました(いわゆる「ウィズコロナ」対応)。今後はアフターコロナを見越して、ユーザが快適に使用できるユーザビリティのさらなる改善(認証やレスポンスなど)とセキュリティ強化を中心に、DWPのいっそうの進化を目指します。

図1 IIJが目指すDWP

例えば「IIJフレックスモビリティサービス」は独自の仕組みによってVPNの課題を解消し、"切れない、速い、遅れない"リモートアクセスを実現し、コロナ禍においても多くの方々にご利用いただいていますが、これからはセキュリティ強化と生産性向上を実現する「可視化」を進めていきます。

具体的には「ゼロトラスト」と呼ばれる環境下で「誰が、いつ、どの端末から、どのアプリケーションに、あるいはどのサイトにアクセスできる/できない」といったことを制御したり、それらの記録をログとして保存することによって、セキュリティの徹底を図ります。同時に、可視化機能により、ユーザの詳細な利用状況をリアルタイムに把握することで、生産性のモニタリングを可能にします。

ビジネスクラウドの展開

次に、第四次産業革命がもたらしたパラダイムシフトへの対応に関してですが、2022年は企業・社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)が、これまでと違う次元で加速すると考えられます。

製造業においては、前述した通り、良い製品を高品質で大量・安価に製造・販売するプロダクトアウトモデルから、人々が欲しがるモノ、生活や体験に必要なモノを必要な期間だけサービスとして提供するというマーケットインモデルへの転換が求められています。流通・サービス業においては、ECなどのバーチャルな空間の拡大が今後も継続すると考えられます。金融業では、キャッシュレスが進み、ネット銀行や仮想通貨を含む新たなフィンテック関連企業の台頭が目立ってきました。政府においても、デジタル庁を中心にデジタルガバメントへの移行が進められています。

このように全ての分野においてデジタルシフトが顕著で、多くの企業・組織が、DX推進を目指した「攻めのIT組織」を設立し、差別化された新たなビジネスモデルを実現するITの内製化やラボ型アジャイル開発に挑んでいます。2022年は、この動きが加速するとともに、これまでの大企業中心から中・小企業へと裾野が広がっていくのではないでしょうか。

IIJが提供するDX支援サービス

必ずしも「DX=IT」というわけではありませんが、DXの実現にはITが不可欠です。2022年、IIJはデジタルビジネスプラットフォーム(DBP)を提供することで、このビジネスクラウド市場へタイムリーに打って出たいと考えています。そこで、まず力を入れたいのが「データ活用の推進」です。

グローバルな商品やサービスを提供する企業は、長年、静的・時系列的なバリューチェーン (製造業の「企画→設計→製造→販売→保守」といったライフサイクル)と原材料の調達で競争優位を保ってきました。かつての製造立国日本は、第三次産業革命下において、このビジネスモデルで勝者になり得たわけです。引き続きバリューチェーンや調達は重要ですが、今後は多くの企業にとって新鮮でグローバルなデータが最重要になってきます。企業はグローバルにつながった膨大なデータを絶えず生成・循環・分析することにより、人々が望む本当の需要を掴むことができるからです。

この重要なデータ活用の推進のために、IIJは以下の3つのサービス提供と、それらのサービスによるDX推進を支援していきます。

①モダナイゼーション

まず「モダナイゼーション」です。現在でも多くの企業・組織のシステムは旧来のホストコンピュータやオンプレミス環境に残っており、巨大でビジネス的にも重要な基幹システムほどこの傾向が顕著です。これらのレガシーシステムは、システムが導入ベンダにロックインされていることが多いため、データ活用がむずかしく、また高価です。そのため、新しいオープンな環境への移行(モダナイゼーション)が求められています。

IIJでは2021年10月、モダナイゼーションを容易にする「IIJ GIO インフラストラクチャー P2 Gen.2」(P2 Gen.2)をリリースしました。P2 Gen.2 は、パブリッククラウドの手軽さ、プライベートクラウドの自由度という双方のメリットを持ち合わせ、モダナイゼーションを強力に支援します。

②マルチクラウド

次に「マルチクラウド」ですが、現在、システムのプライベート保有から、Azure、AWS、GCP、OCIなどのパブリッククラウドやM365などの SaaS を目的に応じて取り入れるマルチクラウドが隆盛を極めています。DX下におけるデータ活用では、ホストコンピュータ、オンプレミス、パブリッククラウドなど多岐にわたるマルチクラウド空間に散在しているデータをいかに連携させるかが重要となります。

IIJではパブリッククラウドライセンスの提供を含む標準の接続サービスを用意し、IIJの閉域網につないでいただくことにより、短期間でスムーズなデータ連携を実現します。

③クラウドデータハブ

3つ目の「クラウドデータハブ」は、マルチクラウド環境におけるセキュアなデータ活用を可能にする仕組みです。DXのデータ活用においては、さまざまなデータを連携させる必要がありますが、その際、問題になるのはデータのセキュリティです。

図2 IIJ GIOをHUBとしたマルチクラウド活用の世界へ

クラウドデータハブの概要は、機密性の高いデータや機微データをセキュアなクラウドに保持し、必要に応じてパブリッククラウドなどにある機密性の低いデータやサービスと融合させ、総合的なデータ連携を行なうとともに、データリークを防ぐというものです。APIやETLの利用によって、既存システムに手を加えることなく、手軽で安価な実現が可能です。こちらは現在、開発を進めており、2022年度のリリースを予定しています。

以上3つの方向性に加え、IIJはDX推進において複数のアドバンテージを保持していると考えています。例えば、通信事業者としてのIIJは数少ないフルMVNOです。ライトMVNOとは異なり、自身で顧客管理などのシステムを有していることから、SIMカードの発行やDX、特に IoT で必要となる各種の通信を制御でき、さらに、ローカル5G、プライベートLTE、LPWAといった要件に応じた通信と統合したかたちで提供できます。

製造業の工場や現場におけるOT(OperationalTechnology)支援では、エッジコンピューティングの推進に力を入れています。IIJの最新鋭データセンター「白井データセンターキャンパス」を基点に検証を進め、マイクロデータセンター(MDC)*を含むエッジデータセンターソリューション(DXedge)の提供を開始しました。DXedge は、MDCの導入・設置から運用・保守をオールインワンで提供するソリューションで、製造業を中心とする企業のDX推進を強力にサポートします。

本稿で述べた通り、2022年、IIJは得意とするDWPのさらなる進化と発展を通して、業種を問わず、アフターコロナにおける快適で安全なオフィス・IT環境の実現を支援していきます。同時に、第四次産業革命下のビジネスのパラダイムシフトを牽引するために、ビジネスクラウド市場への取り組みを強化していきます。

IIJはインターネットを軸に、ネットワーク、クラウド、通信、セキュリティなど NIer とSIer の領域をカバーできる数少ないITベンダです。このポジションを活かして、今後はDWPのみならず、DX推進のためのビジネスクラウド、DBPの推進にも力を入れていきます。

2022年、IIJは創業から30年目の節目の年をむかえます。さらなる成長のスタートとなる年にしたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

* マイクロデータセンター:冷蔵庫ほどの筐体に必要な機能を凝縮したデータセンター。


ページの終わりです

ページの先頭へ戻る