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IIJ.news Vol.168 February 2022
IIJ Global Solutions China Inc.
副総経理 技術統括部長
李 天一
今回は、上海の Starbucks as a Service を紹介します。「スターバックス」と言えば、「おしゃれ」、「高級感がある」、「コーヒーが美味しい」、「サービスがいい」、「気軽に入れる」などを連想しますが、ここ(写真)には店員もいませんし、スターバックスであることすら認識できないほどのシンプルさです。
日本のコンビニのカフェコーナーに似ていて、自分でメニューを操作し、その時の気分に合ったコーヒーを選択すれば、目の前のマシンが淹れてくれる仕組みです。日頃、スターバックスで見慣れた、丁寧で陽気なバリスタこそ登場しませんが、スターバックス品質であることに変わりはありません。メニューも豊富で、写真のマシンはホット、アイス含め計17種類のドリンクを提供できます。使い勝手も良好で、味をお好みに調整する方法や操作手順がわかりやすく書かれています。肝心の価格設定は、上海市内のスターバックス店舗における小売価格の半分以下で、社員向け福利厚生の一環として会社補填できる仕組みもあります。
スターバックス社は中国国内においてフランチャイズ制を敷かず、全店直営の方針にこだわりながらも、2021年春には店舗数が5000以上に達しています。では今回、どうしてこのような業態に参戦したのか?
気になって調査してみました。
スターバックスの店舗の立地条件はなかなか厳しく、例えば、一般的なオフィスビルなら大手上場企業のヘッドクオーターが入居していることや、観光地なら国家観光局認定の(中国全土にわずか306箇所しかない!)最高水準観光地(5A級)でなければならず、さらにいずれの場合もビルあるいは観光地のなかからアクセス可能といった条件が設けられていることが判明しました。
筆者は、関係者からの聞き込みに自身の推測を加え、スターバックスの新規市場参戦の狙いを次のように結論づけました。
コロナ禍のなかでも事業を拡大したい、これまでに培ったブランド力を活かして新規マーケットに参入したい。その際、店舗の選定基準は変えたくないが、従来のビジネスモデルである「人が集まる場所に特別なサービスと空間を提供する」では、容易に"解"を見出すことができない。そこで、Starbucks as a Service という真逆の方向に転換してはどうか。
具体的には――「人が集まる場所に特別なサービスと空間を提供する」は、「もともと人が集まるところに進出し、スターバックスのコーヒーを飲みたい時にすぐに飲めるようにする」。また「コロナ禍では組織をまたぐ人の移動は制約されるケースが多い」ことに関しては、「組織内だと比較的自由に移動できるので、そこに入り込む方針に切り換える」、そして「組織における福利厚生の一環やコミュニケーション活発化の場」としてサービスを提供する―― ということです。
ちなみに、Starbucks as a Service は、中国の著名大学とのコラボレーション企画を進めており、清華大学、北京大学をはじめ、上海交通大学、復旦大学、南京大学、厦門大学などですでに営業を開始しているそうです。
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