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コラム|Column

ASEAN地域におけるデータシステム運用の課題

2019/02/27

ASEAN地域における情報システムの環境変化

筆者がASEAN地域に拠点を開設してから、早4年が経過しようとしていますが、その間のスマートフォン、モバイル端末の急速な浸透には目を見はるものがあります。
電車の中やレストランで食事をしながらSNSやYouTubeを見ているのは日本でもおなじみの光景ですが、ASEAN地域では、老若男女関係なくとにかく時間さえあればスマートフォンを見ています。イヤフォンを使わずに大きな音でYouTubeを見ているのもおなじみの光景ですが、筆者はこちらの方が自由で健全であり、逆に日本は少し窮屈ではと思い始めており、すっかり現地になじんできたと感じています。
このような傾向は日本でも想像できる範囲だと思いますが、ASEAN地域では普及率が低い車のナビゲーションシステムの代わりにスマートフォンを利用するケースも多く、仕事の連絡もLINEや、 WhatsAppでやり取りするケースがあるなど日本での感覚以上にスマートフォン、モバイル端末の使用範囲は広いです。 宣伝広告、マーケティング分析をはじめとする、情報利活用のための情報がソーシャルネットワーク上にたくさん集まっており、企業もその情報を利用したいと考えるのは自然な流れで、こういったビッグデータやデータマートなど情報収集インフラの構築の案件も多くなっています。

反面、10年以上前に構築したシステムが世の中の流れや制度に合わせ、継ぎ足しながら運用されており、ネットワーク速度や情報セキュリティ(漏洩や消失など)について多くの企業が不安と不満を抱えながら運用しているという実態もあります。 利用する側は日本を追い抜いたといっても良いほど情報機器を活用しているにもかかわらず、運用する側のシステムインフラの整備は進んでおらず、ASEAN地域はシステム運用におけるリスクが急速に膨らんでいるのです。

数年前、洪水によりタイのハードディスク工場が長期にわたり業務停止に追い込まれたのは記憶に新しいと思います。このケースは大きなニュースになりましたが、ニュースにならない水害などの天災は日常的に起きており、社会インフラはまだまだ脆弱な部分がある中で、情報システムの利用者は加速度的に増加し、業務においてなくてはならないものになっています。 このような状況において、ASEAN地域の多くの企業は社内のPCやシステムの環境および実データのバックアップを、極めて簡易的な方法で実施しています。フルバックアップの内容も媒体でPCの横に積んで保管する例もあります。また、有事の際の復旧対応はおろか、情報セキュリティについても全く考慮されていないのが実態です。バックアップのための媒体の紛失が発生したとき、気づくことが出来るか心配になります。

一方で、一般データ保護規制(GDPR)のような世界的なプライバシー保護規制を受け、ASEAN地域も急速にその動きが広がっています。シンガポール、マレーシア、フィリピン、ベトナムではすでに情報保護に関する規制が制定され、タイにおいても規制整備の計画があります。近隣諸国も続々とこの流れに乗ることになるのは想像に難くありません。 脆弱なインフラと増大するデータ、保護規制の強化という環境の中、各企業様がセキュリティを意識したシステムの再整備を迫られるのは必然と言わざるをえません。

ASEAN企業のデータシステムの課題

ご紹介した通りASEAN地域のデータは、ニーズもリスクも膨らんだ危険な状態と言えます。
そういった流れから、データセンター増設、ネットワーク拡張、高性能なハードウェアを含むクラウドインフラ基盤の利用がASEAN地域でも進んではいます。
十分な予算があれば、帯域の太いネットワークを施設し、巨大なデータベースを配置することで、リモートバックアップやデータレプリケーションなどのディザスタリカバリの仕組みをセキュリティについても考慮しながら構築することが可能で、その環境も整いつつあります。
しかしASEAN地域の企業の大半は専任のIT部門を持っていないことに加え、システム構築に大規模の投資を行なうことは難しいのが現実です。

そのため、少し進んだ管理を行っている企業でも数ギガのファイルをリモートでバックアップするのに10時間以上かけて送信し、途中エラーで中断した場合は、一から送りなおすというような運用をするのが現状です。
必要な時に必要なデータが使えないわけですから、運用だけを考えると媒体を積み上げておく方がかえって良かったケースもあるかもしれません。
そういった制約の中で運用を構築する訳ですから、ネットワーク障害時の運用、後続処理への自動連携など、企業間、クラウド環境とのデータ連携の要件が十分に考慮されておらず、結果的に運用コストも掛かっているのです。セキュリティ(データ改ざん、ハッキング、データの中身の保証)対策など望むべくもない、というのが大多数の企業の現状と言えるでしょう。

こういった難しい問題に対して、全ての要件に対応する機能を自力で実装し、各国政府からの通達に応じたシステム変更や運用も行い、ハードウェアの保守切れによる再開発/システムテストにも対応できる仕組みを維持していくことは、人材の流動性が高く担当変更が頻繁にあるASEAN地域で良い選択となることはないと言えます。

ASEAN地域の課題を解決するためのソリューション

HULFTは25年間「ファイルのサイズが大きくてバックアップ転送に時間がかかる」「転送が失敗した時の影響が大きい。原因もわからないのでいつ事故が発生するかわからない」といったシステム連携のお客様のお悩みにお応えし続けてきた結果、現在約9,000社、43か国のお客様でご愛顧いただいております。

上述のASEAN地域の状況は、HULFTがリリースされた25年前の日本とよく似ています。先ずは安全な場所へ安全にデータを転送し、後続の処理に連携するという、地味ながら信頼性が求められる領域をパッケージングしたHULFTという製品が生まれたのは必然でした。
現在のASEAN地域においては、バックアップをはじめ、データ管理の状態を目の当たりにし、保管先までパッケージングしたソリューションを提供することが必要と考え、シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシアにおいて、現地通信事業者と業務提携し、現地の事情に即したサービスを展開するIIJグループとバックアップソリューションの立ち上げを進めております。
IIJグループがタイで展開しているクラウド環境Leap GIO Cloudと弊社HULFTの強みを組み合わせることで、当地域にまさに必要とされているバックアップソリューションを構築することが可能となりました。バックアップやDRサイトの用途だけではなく、工場や拠点間のデータ連携HUBはもちろん、冒頭にお話ししたビッグデータを蓄積するデータマートとして活用することも可能です。セキュリティについてもお任せいただけます。
当ソリューションでお客様の重要なデータファイルを定期的に確実に安全な場所にバックアップし、ASEAN地域のお客様の課題解決にお役立ちしたいと考えております。

バックアップソリューションのみならず、クラウド連携、データ保全などデータ連携に関する課題や検討事項がありましたら、お気軽にご相談ください。

KAZUFUMI IKEDA(池田 和史)

HULFT Pte. Ltd.Head of Thailand Market Business Development

大学卒業後、(株)西武情報センター(現:(株)セゾン情報システムズ)に入社。
1993年に発売されたファイル転送ソフトウェアHULFTの発売と同時に営業部門に配属。
メインフレームからオープン系へのダウンサイジング、オンプレミスからクラウドへ、システムのメインストリームが変化を遂げる中、20年間以上一貫してデータ連携製品の営業最前線で走り続けてきた。
ファイル転送からEAIまで幅広い知識を持つ"最前線で戦える営業"として、2016年に東南アジアの営業責任者として赴任。シンガポールを拠点に広く東南アジア地域で活動した後、2018年に深く現地に入り込むため拠点をタイへ移す。
現在は活動のすべてをタイに集中。現地パートナー様と共に、ローカルに入り込んだ営業活動を行っている。