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IIJ.news vol.163 April 2021
IIJ MVNO事業部 事業統括部シニアエンジニア
堂前 清隆
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
リモートワークが急速に普及し、仕事をする場所として自宅が重視されるようになりました。長時間の座り作業のために、椅子や机を新調したという話も聞きますが、会社へのアクセスに使うインターネット接続環境も、改めて見直してみてはいかがでしょうか?今回は、自宅で利用するWi-Fiについてお話ししたいと思います。
家庭用のWi-Fi 機器は、たくさん新製品が発売されています。それらはたしかに性能が良いのですが、買い換える前にWi-Fi 機器の設定を確認することで、状況を多少改善できる場合があります。
まず確認したいのは、Wi-Fi が利用するチャンネルです。Wi-Fi はおもに「2.4GHz」「5GHz」の電波を使っており、2.4GHzでは14のチャンネルが、5GHzでは19のチャンネルが用意されています。複数のWi-Fi アクセスポイントが同じチャンネルを使ってしまうと、干渉が起こり、通信効率が低下してしまいます。
オフィスに業務用のWi-Fi アクセスポイントを設置する場合、電波が干渉しないようにエンジニアが設計して機器を設置しますが、自宅では普通そのようなことは行なわれません。家庭用のアクセスポイントは、周囲で使われていないチャンネルを調べて自動的に選択する機能がありますので、通常、それに任せていることが多いと思います。
ところが最近は、住宅地でもWi-Fi の利用者が増え、自宅に機器を設置した時は空いていたチャンネルが、いつの間にか他のお宅の機器のチャンネルと重なってしまっていることがあります。ほとんどのアクセスポイントは電源をONにした時のみ、チャンネルの自動選択が働くので、長期間アクセスポイントの電源をつけっぱなしにしていた場合は、一度電源を OFF-ONして、自動選択をやり直してみると良いかもしれません。
5GHz のチャンネルは、W52、W53、W56 というグループにわかれています。全てのチャンネルを使ったほうが重複が起きにくいのですが、W53、W56 のグループのチャンネルは、航空・気象レーダーなどと電波が重なっています。利用開始前に付近でレーダーが使われていないか確認が行なわれるため、電源を入れてから1分くらいは、電波が発信されないという使いにくさがあります。このため、機器によっては出荷時に W53、W56 を使わないように設定されている場合があります。周辺の住宅でもWi-Fi が使われていてチャンネルに空きが少ない場合、アクセスポイントの設定で W53、W56 を有効にすると重複が避けられるかもしれません。ただし、上述した通り、W53、W56 は機器の電源を入れてから1分間は電波が出てきませんので、それを理解して利用する必要があります。
しかし、設定の見直しだけでは、状況が改善しないこともあります。最近は家庭でWi-Fi を利用する機器が増えています。パソコンに加え、スマホ、ゲーム機、ネット対応動画端末、IoT センサなど、気がつくと10台を超える端末が常時Wi-Fi を使っていることもあるでしょう。少し古めのWi-Fi アクセスポイントは、一つのアクセスポイントで対応できる機器の数が8台や10台程度しかない場合もあります。こうしたアクセスポイントに多くの機器をつなぐと、通信が不安定になったり、突然動作が停止してしまうこともあります。
また、アクセスポイントを構成する部品のなかには、例えば、コンデンサのように長いあいだ電気を通していると劣化してしまうものもあります。コンデンサが劣化すると、明確に動作がおかしくはなくても、なんとなく通信に支障が出たり、負荷が高い時に異常動作することもあります。
こうした場合はやむを得ませんので、新しい機器に買い換えるしかありません。部品の劣化は、設置場所の温度・湿度などの影響も受けるため、なかなか判断がむずかしいのですが、筆者は利用開始から4年が過ぎて動作が怪しくなると、部品の劣化を疑い、買い換えを検討するようにしています。
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