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IIJ.news vol.164 June 2021
コロナ禍を機に、従来のビジネスのあり方、進め方だけでなく、企業にとって必要とされるIT設備や環境も変化を余儀なくされた。
ここでは、普段はIT環境を提供する立場であるIIJが、自社のIT環境をどのように「ニューノーマル」に対応させてきたのか、紹介したいと思う。
IIJサービスプロダクト推進本部
営業推進部 マーケティング課 シニアプロダクトマネジャー
向平 友治
IIJサービス全般のマーケティング及びサービス企画推進を担当。主にサービス企画、各種サーベイ、プロモーション企画を推進。
「リモートワーク」や「場所にとらわれない働き方」といったテーマは、コロナ禍以前から議論されていました。
例えば、東京オリンピック期間中、都心にあるオフィスへの出社が困難になるといった一時的な必要性に対する議論がありました。それ以外にも、日本企業の生産性の低さへの課題意識から、一部の企業では「ジョブ型雇用」を採用し、社員に求める「ジョブ」を明確に定義して、それが達成されるのであれば働く場所や時間にはこだわらない、という考え方も登場し始めました。しかしながら、そのためには現状の評価制度や給与制度を大きく変える必要があり、広く普及するには至りませんでした。
それがコロナ禍によって一変しました。なかば強制的にリモートワークに切り替えざるを得なくなり、社員の多くが在宅勤務する機会が増えました。これまでのIT環境は基本的に「従業員はオフィスに集合している」という状態を前提に構築されていたのですが、この前提が崩れ始めたのです。
物理的なオフィスに集合して仕事をする時間が大幅に減り、代わりにWEB会議などデジタル上でのコミュニケーションを活用しながら業務する時間が増えました。この新たな形態は「メインのオフィスはデジタル上に存在する」とも言い換えられるでしょう。
IIJはこのデジタル上のオフィス空間を「デジタルワークプレース」と定義し、デジタルワークプレスを構築するためのさまざまなサービスを提供してきました。他方、お客さま向けのサービス提供者であるIIJがそうしたサービスを積極的に活用することで、IIJ自身も生産性の高いデジタルワークプレースを構築しています。
自宅などのリモートワーク環境から社内システムやファイルサーバなどへのアクセスやWEB会議を実施する際には、社外から社内のネットワークにアクセスする経路が必要となります。
コロナ禍以前でも、営業担当者などが外出先から社内のリソースにアクセスするための経路として「リモートアクセスVPN」と呼ばれる接続環境を用意していた企業も多かったと思います。この接続方法は基本的に、外出先から接続する一部の社員が一時的に利用するだけのキャパシティと品質を確保しておけばよく、オフィス内のネットワーク設備と比べて比較的小規模な利用が想定されていました。
しかしリモートワーカーが増えると、これまでの少数による一時利用ではなく、多くの社員がオフィス内のネットワークのように常時利用するようになります。そこで、リモートアクセスVPNの設備増強やライセンス追加を急いで行なったという企業も多かったのではないでしょうか。
IIJでもそれまで利用していたリモートアクセスVPNに加え、追加のリモートアクセス経路として、お客さまにも提供しているサービスである「IIJフレックスモビリティサービス」を自社のリモートワーカー向けに追加で採用しました。
従来の一般的なリモートアクセスVPNの課題として「つながりにくく、切れやすい」、「速度が遅い」などの問題がありました。そのような課題がありながらも、あくまで一時的な用途であったため、大きな問題にはなりませんでした。しかし、多くの社員がリモートワークを採用するようになると、その品質は生産性に直結するため、リモートワークであっても、オフィスにいる時と同じ品質のネットワークが求められるようになりました。
IIJフレックスモビリティサービスは、「つながりにくく、切れやすい」、「速度が遅い」といった課題を独自の技術で解消した、これまでにない新しいリモートアクセスサービスで、多くのお客さまにご利用いただいています。これを自社でも採用することで、リモートワークであってもオフィス内にいる時と変わらないネットワーク品質を実現しています。
IIJでは、メールやスケジュール、WEB会議のツールにMicrosoft365(以下、M365)を採用しています。コロナ禍以降、主にTeamsを利用するWEB会議がこれまで以上に行なわれるようになったため、先述のリモートアクセス経路だけではなく、M365までの経路でも安定したネットワーク品質が求められるようになりました。
IIJではM365への通信は、自社サービスである「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure Peering Service」をコロナ禍以前から利用しています。これはIIJの社内ネットワークとM365までをダイレクトに接続するサービスで、インターネット経由の通信と比較すると、高い安定性を確保できます。これにより、昨春以降、WEB会議利用が大幅に増えても、安定した通信品質を維持できています。
「場所にとらわれないで働く」ことが普通になると、日によってオフィスに出社するスタッフとリモートワーカーが混在してきます。例えば、チームミーティングの日に、チームメンバーの多くが出社していたため、オフィスでは出社組が会議室やミーティングルームで会議に参加しつつ、リモートワーカーはWEB会議で参加するというケースもあるでしょう。その際、課題になるのが、人数が多いオフィス側で行なわれる物理的コミュニケーションにリモートワーカーがついていけない……という状況です。
IIJでは、両者のコミュニケーションギャップを少しでも埋めるべく、「Teams Rooms」と呼ばれる専用端末を設置しました。Teams Roomsでは、会議室に専用端末を据え置くので、会議室自体とWEB会議を接続して使えるかたちになります。これにより、会議室全体の画像が確認でき、最適化された専用マイクで会議室での会話を拾えるので、リモートワーカーと出社組のコミュニケーションギャップを最小限に抑えることができます。
オフィスへ出社する機会と出社する社員が減少することで、IIJではフリーアドレス化への変更を順次進めています。
IIJではコロナ禍以前からTeamsを利用した外線・内線通話機能の検証および一部オフィスでの先行導入を進めていましたが、このフリーアドレス環境ではその機能が有用であり、順次展開を進める予定です。これが導入されることで、スマートフォンやPCで外線・内線通話の応答ができるようになり、場所に縛られない電話対応が可能になります。
本稿でご紹介した以外にも、フリーアドレス化や固定電話のクラウド化など、さまざまなデジタルワークプレースを順次推進しています。IIJでは、どのような環境下でもサービス品質を維持・向上していけるよう、生産性を落とさない環境構築に取り組んでいます。
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