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IIJ.news vol.164 June 2021
IIJ MVNO事業部 事業統括部シニアエンジニア
堂前 清隆
「IIJmioの中の人」の1人として、IIJ公式技術ブログ「てくろぐ」の執筆や、イベント「IIJmio meeting」を開催しています。エンジニアとしてコンテナ型データセンターの開発やケータイサイトのシステム運用、スマホの挙動調査まで、インターネットのさまざまなことを手掛けてきました。
今年も各地で梅雨入りしたとのニュースが報じられています。この時期から秋口まで、日本では台風を含む風水害が頻発します。私たちコンピュータや通信に関わる人間は、こうした災害をキッカケに起こる「停電」をとても気にしています。
通信機器が置かれた局舎やクラウドのサーバがあるデータセンターは非常用発電機などで停電への備えをしていますが、クラウド利用者の作業場所、特にご家庭での対策は普及していません。最近はノートパソコンが使われることが多いため、バッテリーが残っているあいだはパソコンを使うことはできますが、停電によって通信機器への電力供給が途絶えると、インターネットやクラウドを利用できなくなます。また「ひかり電話」に代表される電話とインターネットの回線を共用するサービスの普及により、停電時にはインターネットだけでなく、電話も使えなくなるのではないか、といった心配もあります。そこで今回は、数時間から半日程度の停電を想定して、家庭の通信機器に電力を供給するための「UPS」や「モバイル電源」を紹介します。
UPS は無停電電源とも呼ばれ、もともとは業務用のサーバやストレージの停電対策に使うものです。UPS には蓄電池が使われており、壁のコンセントにつなぐ充電用のプラグと、電源を供給する機器をつなぐコンセントを備えています。UPS を利用する際は、充電用のプラグと電力を供給する機器を常時接続して、蓄電池を充電しながら利用します。そして、停電が発生すると自動的に充電池からの電源供給に切り替わるため、停電を気にせずに使い続けることができます。 家庭にも設置可能な小型の UPS が1~2万円程度で販売されています。このサイズの製品は、供給できる電力はあまり多くありませんが、通信機器や電話機であれば数時間は十分に使えるでしょう。
UPS は鉛の蓄電池を使ったものが多く、比較的重量があるのが注意点です。また、蓄電池は次第に劣化するので、2~3年に一度は交換する必要があります。ほとんどの UPS は蓄電池の状態を監視する機能もついているため、警告が出たら専用の電池を購入して交換します。
モバイル電源は、スマホの充電などに使うモバイルバッテリーを大型化したもので、100V のコンセントにつなぐ機器も利用できます。キャンプなどのアウトドア用に購入される方も多く、レジャーと災害対策を兼ねた装備として活用できます。
多くのモバイル電源は UPS とは異なり、電源や機器を常時つないでおくようにはなっていません。あらかじめ充電を行なったうえで、取り外して保管しておきます。そして停電が起こったら、モバイル電源のコンセントに機器をつないで使用します。
電池や回路の特性上、保管中のモバイル電源は少しずつ電力が減っていくことが避けられないので、防災用として使うのであれば、時々電池の残量を確認する必要があります。また、モバイル電源の多くは、蓄電池を交換できない構造のため、電池が劣化してしまった場合は、本体ごと買い換える必要があります。
最後に、UPS やモバイル電源で通信機器に電力を供給する際に注意すべき点を二つ紹介します。一つは、コードレスホンの親機や FAX にも電源を供給することです。家庭で使われている多機能な電話機は、電話機自体にも電力の供給が必要です。もう一つは、マンションなどの集合住宅では、各部屋に設置された通信機器以外に共用部分に中継用の機器が導入されていることがほとんどであり、この中継用の機器にも電力が供給されていないと、通信や通話が行なえません。ただ、中継機器のために UPS や非常電源を用意しているかどうかは建物によって異なりますので、管理組合などの会合の折りに、共用部分の機器への電源供給について確認しておくのが良いかもしれません。
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