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IT Topics 2023 Topic 3 エッジコンピューティング

IIJ.news Vol.174 February 2023

クラウドの本格利用に次いで現れた「エッジコンピューティング」とは何なのか?
本稿では「クラウド×エッジ」のデジタルプラットフォームの将来像とIIJの取り組みを紹介する。

執筆者プロフィール

IIJ 基盤エンジニアリング本部
基盤サービス部 サービス開発課長

室崎 貴司

クラウドとエッジの役割分担

物理的な場所を意識させないクラウドへデータを“集中”させて処理することが一般化しています。その一方で、IoT機器、端末、カメラ、センサといったエッジデバイスから生まれるデータは爆発的に増加しており、クラウド、ネットワークの利用コストの増加やデータレジデンシー*1が課題となり始めています。

また、5Gと組み合わせた自動運転などのリアルタイム制御の普及には、ミリ秒単位での低遅延処理が要求されます。そのためには、エッジデバイスや利用者に近い場所に処理を“分散”させることで、応答・処理速度の向上や負荷の低減などを実現する「エッジコンピューティング」が不可欠となります。近い将来、クラウドでの集中処理だけではなく、エッジと連携した分散処理や、エッジで1次処理を行なうといった「クラウド×エッジ」で役割分担するデジタルプラットフォームも一般的になるでしょう。

クラウド利用と同じユーザ体験をエッジ、オンプレミスでも

DockerやKubernetesなどのコンテナ技術の普及により、クラウド×エッジで役割分担するエッジコンピューティングの実用が現実的になってきました。コンテナ化されたアプリケーションは可搬性が向上しており、迅速かつ効率的なエッジ展開が可能です。同時に、ハードウェア、ネットワークおよび、それらの収容設備を含むエッジ基盤も事業に合わせた展開、シンプルな運用が望まれます。

IIJでは、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI)、パブリッククラウド事業者のクラウドアプライアンスといったハードウェア、クラウド接続のネットワークサービス、それらを収容する屋内外どのような環境にも設置可能なマイクロデータセンターをワンストップかつマネージドで提供していきます。

これらを通して、従来のオンプレミスやプライベートクラウドとのハイブリッドクラウドでは享受できない、パブリッククラウド利用と同等のユーザ体験が実現されます。そしてお客さまは、エッジの運用リソースやコストを抑え、自分たちの事業やDXの推進に注力できます。

ユースケースの拡大

2021年末にエッジデータセンターソリューション「DX edge」をリリースして以来、多くのお客さまとの対話を通して複数の業界向けユースケースが見えてきました。そのなかからいくつか紹介すると――

製造業DX
スマート工場の実現。生産設備の本格的なIoT化にともない爆発的に増えるデータをエッジ処理することで、コストを削減し、データレジデンシーを確保する。
建設DX
移動可能なエッジデータセンターの利点を生かし、土木・建設現場でAIによる安全管理やリアルタイムなBIM/CIM*2反映だけでなく、現場ネットワーク(低軌道衛星インターネット、ローカル5G、Wi-Fi、LPWA*3)も合わせてワンストップで提供する。
公共DX・災対
エッジデータセンターを分散配置して統合的に利用することで、地域のデータ地産地消、デジタル実装を実現。また、大規模災害(自然災害、広域の停電や通信障害など)の際、住民サービスの継続やレジリエンス向上を実現する。

今後もこうしたユースケース以外でも、業界の課題解決に資するソリューションを(パートナーとの協業も含めて)開発していきます。

技術面では、IIJ白井データセンターキャンパスでIoT、AIカメラとエッジデータセンターによるエッジコンピューティングの実証実験を行なっています。また、低軌道衛星インターネットサービスでの回線バックアップや、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたカーボンニュートラル(脱炭素)に向けた実証も始まります。さらには、IIJならではの“エッジの効いた”エッジ基盤をデータセンター見学者にも体験していただけるデモ展示も用意しています。

  1. *1データレジデンシー:データそのものの保管場所。企業はクラウドサービスを利用する際、個人情報などの機密情報が、どの国・地域に所在するデータセンターに保管されるのか、法的観点からも注意が必要となる。
  2. *2BIM/CIM:建設業界で3次元モデルを活用して地形や構造物などを調査・設計・施工・維持する技術。
  3. *3LPWA:省電力かつ長距離での無線通信が可能な通信技術の総称。IIJでは免許不要なLoRaWAN®を提供している。

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