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IIJ.news Vol.174 February 2023
産業分野におけるIoT活用は、実現場への導入フェーズに入りつつある。
ここでは個々のユースケースを見ながら、IIJのIoT事業の概況をリポートする。
IIJ IoTビジネス事業部長
岡田 晋介
2022年のIoT市場を振り返ると、実現場・実業務への浸透の年であったと感じています。IIJは産業・農業・ホーム・エネルギーといった分野でIoT事業を展開していますが、お客さまの取り組みが実現場への導入フェーズへと進み、多拠点展開へと広がるケースが増えてきました。コロナ禍以降、一時期は新規投資を控える動きが見られ、その後も物流の混乱やモノ不足といったマイナス要因があったものの、IoTのような新規事業への投資は進んでいると考えます。
IIJモバイルサービスの法人向けIoT SIMは、コロナ禍が始まった2020年上期末時点で96.8万回線であったのに対し、2022年上期末時点では約150万契約に達しており右肩上がりの成長を続けています。ワンストップで提供するIoT事業全体で見た場合、2020年度に比べて2022年度の売上は倍増が見込まれており、IoT関連ビジネスも引き続き堅調です。
ユースケースを見てみると、「遠隔」がポイントになっていると言えます。折からの人手不足やコロナ禍を機にリモート化が進んだこともあって、遠隔化が現場に浸透しています。例えば、現場の様子をセンサなどでデジタル化し監視する、設置された機器を遠隔制御する、得られたデータを活用して付加価値を創造する、といった取り組みです。ビルや施設であれば、従来なら人が行なっていた点検業務をセンサによりリモート化する、あるいは、開閉設備の状態を監視しつつ遠隔で制御する、といった省人化・迅速化がこれに当たります。また、屋外現場であれば水害の被害低減に向けて河川やため池を監視する、農業であれば水田の水管理(水位・温度)や給水弁の遠隔操作などです。こうしたユースケースは従来からありましたが、実現場・実業務での活用が進み、試験的導入から多拠点への展開へと広がりつつある点が、ここ最近の大きな変化であると感じています。
実業務での活用が進む背景には、効果の実感といった意識の面や、正しくデータを取るための技術の選択と現場設置など経験の蓄積があると考えられます。IIJでは“ワンストップ提供力”を活かして、実現場での無線ネットワーク構築からセンサ設置まで、お客さまをサポートしています。
IoTの導入効果を持続させ、新たな価値を創造するためには、「セキュリティ」と「データ活用」がポイントになります。
セキュリティに関してIIJは、セキュリティブランド「WizSafe」のITセキュリティサービスの展開実績をもとに、産業向けにはネットワークセキュリティ対策を実装するソフトウェア「FSEG」(エフセグ)、グローバルではマネージド型のゼロトラストネットワークアクセスサービス「Safous」(セーファス)、デバイスセキュリティでは「IoTトラストサービス」などを展開中です。2023年2月には、IoTに取り組むうえで不可欠となるネットワークとデバイス監視・管理、データ収集機能を備えた「IIJ IoTサービス」において、「VPNアクセス」機能をリリースしました。これまでは閉域モバイルネットワークでの利用が中心でしたが、有線ネットワーク、LPWA、衛星通信など用途に応じたネットワークの選択や、既設ネットワークを活用する際にもセキュアなデータの取り扱いと的確な機器管理を実現できます。
データ活用に関しては、機能の提供に留まらず、農業IoT分野では、発育指数(DVI)を用いることで水稲水管理の自動化を目指す取り組みを進めており、農家さんのお力もお借りしながら、IIJ自身でデータ活用の実証を行なっています。産業分野では、村田製作所とのパートナーシップのもと、データサービスプラットフォームの展開を進めています。東南アジアにおける交通量の見える化(トラフィックカウンタ)システムの協業実績を活かして、データ収集から販売支援までをワンストップで提供するプラットフォームを、2023年夏から東南アジア向けに展開する予定です。
IoTの取り組みは、その「現場」に解決すべき課題や価値創造のヒントが詰まっていると考えています。IIJのIoT事業は、これまで同様に現場へ足を運びながら、実現場・実業務における活用をお客さまとともに切り拓いてまいります。
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