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IIJ.news Vol.179 December 2023
「GIGAスクール構想」は、日本の教育現場に大きな変革をもたらした。
ここでは、同構想の現状や課題、IIJの取り組みについて紹介する。
IIJ 執行役員 公共システム事業部長
波多野 剛
2020年度にGIGAスクール構想によるIT環境整備が急速に進められたことで、“1人1台端末”は、今や全国の小中学生にとってスタンダードになりつつあります。
また、世間のDX化に向けた取り組みにともない、近年大きな課題となっている教職員の残業や業務負担を削減すべく、業務フローのシステム化や、ゼロトラストの考え方のもとにセキュリティ対策を検討している自治体も増えています。
これまで高等教育機関で先行して進められてきた端末を用いた授業形態が小中学校にも広まった今、IIJでは、小中学校または公立高校を管轄する自治体の教育委員会向けに「快適に1人1台環境を実現するためのネットワーク」の提案を各地で行なっています。
近い将来(文部科学省では令和六年度を本格稼働年度と位置づけている)全校児童生徒がデジタル教科書やCBT(Computer Based Testing)による学力試験などのために端末を本格的に利用するとなると、WAN回線の増速が急務になります。また、デジタル教科書をはじめ、子どもたちの学びを支援する学習アプリケーションの大半はSaaSによって提供されており、学校現場においてインターネットへの接続環境が常時必要な状態となっています。
IIJが改善案を提示した、千葉市教育委員会の次期教育情報ネットワークの構成を策定する際にも、全ての学びの根幹となるインターネット接続回線の帯域保証化が要件の1つに挙がりました。そして、市内の全学校を対象に、ICTを活用したアクティブラーニングの導入も視野に入れ、端末を最大限に活用して新たな学びを推進するための環境整備が検討されています。また、校務システムへのアクセスにはVDI(Virtual Desktop Infrastructure)が利用されていますが、授業以外の校務に充てられる時間が限られているにもかかわらず、校務システムへアクセスする際の“立ち上がり”が遅いことが、教職員の負担になっている実情も提案時にうかがっていました。
解決策としては、データセンターを中心として新規仮想基盤を構築することを想定し、各拠点からの回線を一度集約する「データセンター集約型」の構成を提案しました。
いわゆる校務系と呼ばれる教職員が業務を行なう際に使用するネットワークと、児童生徒が授業の際に通信する学習系ネットワークを分離し、学習系のみをローカルブレイクアウトする構成をとる自治体も多いのですが、この方式だとISP側での集約率をユーザ側が把握できないため、ボトルネックとなるポイントがわからないというデメリットがあります。
それに対しIIJの提案では、インターネット接続の回線帯域と各拠点から集約される回線帯域の和を契約者側で設定できるデータセンター集約型構成のメリットを踏まえ、学校など全拠点168箇所から1~3Gbpsの専用回線(帯域保証型WAN)合計271本を介してIIJのデータセンターに接続し、データセンターから300Gbpsの帯域保証型回線を経由してインターネットに接続するネットワーク環境を構築します。
これは文部科学省で提示されたデジタル教科書利用時における帯域期待値(デジタル教科書の見開きデータ容量〈2GB〉を3秒以内でダウンロードできる)に、児童生徒数の利用率を50パーセントと仮定・試算して、各校に敷設する回線本数を導き出したもので、他の自治体においても参考になるネットワーク構成であると考えています。
GIGAスクール構想は、将来の日本を担う子どもたちの学びを抜本的に変えました。学習で利用するアプリケーションも、AIを活用したドリルや、紙でのやり取りしかなかった時代には成し得なかった学習管理・自己管理を容易に実現できるようになり、一人ひとりの可能性を開花させるチャンスが広がりました。
こうしたアプリケーションを快適に利用するうえで、ネットワークの整備は不可欠です。十全なインフラを軸としたIIJのGIGAスクールソリューションは、今後も教育現場の改善に寄与してまいります。
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