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IIJ.news Vol.181 April 2024
IIJ グローバル事業本部 グローバル事業開発部 タシケント駐在事務所
文園 純一郎
IIJはウズベクテレコムとの共同プロジェクトを受託したことを機に、2023年12月、ウズベキスタンの首都タシケントに駐在事務所を開設しました。筆者が所長に就任し、現地雇用のエンジニアと二人で、中央アジア、コーカサス、中東の新規案件開拓を目指して、マーケティング活動を行なっています。
タシケントは人口200万人を超える、中央アジア最大の都市です。2016年に就任したミルジヨーエフ大統領は、民主・改革路線を志向し、国内の治安や外交関係は良好です。人口の約60パーセントが30歳以下の若い国で、タシケントは建設ラッシュに沸いています。日本ではまだメジャーではありませんが、世界中のさまざまな企業が、タシケントを有望な投資先として注目しています。
ウズベキスタンでは、誰もがみな「マイナンバー的ID」の管理下にあり、さまざまな情報がこのIDと連携しています。例えば、スピード違反をしている車がいたとします。タシケントでは至るところにセンサ付きカメラが設置されており、違反した車の走行動画が自動撮影されます。そしてシステムが運転手のスマホに「車を特定した。スピード違反の罰金を支払え」と、証拠の動画を添えたメッセージを送ります。罰金はスマホ決済で支払えます。スマホの電話番号、ナンバープレート、お金の流れなどが、全てマイナンバー的IDと紐づくかたちで一元的に管理されているからこそできるDXです。
ウズベキスタンの人は「ポジティブで合理的、バランス感覚に優れている」という印象を筆者は持っているのですが、スピード違反の罰金制度一つとっても、国民性が色濃く表れている気がしてなりません。個人情報が政府の管理下に置かれても、生活が便利になることのメリットを選ぶのでしょう。
ウズベキスタンのIT産業は、海外からコールセンター業務などを請け負う段階から、オフショア開発などを担っていける段階へと向かいつつあります。目下、若い世代に対するIT教育の拡充を、大統領の強いリーダーシップのもと、国を挙げて進めていますが、変化への適応力が高い国民がDXを受け入れたことで、「スピード違反DX」のようなシステムが早々に実現されました(DXへの対応がむずかしい人々へのフォロー体制も国がきちんと整えています)。
思えばロシア語もウズベク語もできない筆者が、英語が通じないタシケントで事務所を立ち上げ、登記、納税、家賃の支払いなどをこなせているのは、この国のあらゆる手続きがデジタル化されているからにほかなりません。
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