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となりの情シス Special 情報システム部門のための社内プレゼンス向上のヒント

IIJ.news Vol.183 August 2024

モチベートセミナー② 株式会社コーセー
本稿では、コーセーの進藤広輔氏がモチベートセミナーで行なった講演
「『情シス』が変わり会社を変える。これからの『情シス』が進むべき道」の内容を紹介する。

執筆者プロフィール

株式会社コーセー
経営企画部 DX推進担当部長 兼 情報統括部
グループマネージャー

進藤 広輔 氏

2020年2月、コーセーに入社。前職のAWSでは、企業のDXの礎となるクラウド化の推進を支援。コーセー入社後は、ビジネスとシステムの両面からコロナ禍対応を進めると同時に、各種DXプロジェクトを牽引している。

本記事は2023年6月の講演内容をもとに再構成しています。
記事内のデータや組織名・役職などは当時のものです。

情シスはどうあるべきか?

進藤:
ChatGPT-4に「生成AIの影響を受ける職種トップ5は?」という質問をしてみたところ、次の5つの職種が挙げられました。
  • ライター、コンテンツクリエーター
  • カスタマーサポート、チャットボットエージェント
  • データサイエンティスト、データアナリスト
  • デザイナー、クリエイティブエージェント
  • 法律家、契約担当者

人気の高い職種も含まれていますね。これまで花形だった職種でも、AIが得意とする分野であれば、なくなってしまう可能性があるということです。こうした世の中の移り変わりも意識しながら、情報システム部門はどうあるべきかについて、お話ししたいと思います。

情シスが抱えるジレンマ

進藤:
私は情シスの方と交流する機会が多くありますが、皆さん似たようなことを感じていらっしゃいます。それは、情シスが抱える息苦しさやプレゼンスの低さは、単一の要因によるのではなく、構造的な問題や課題から引き起こされているということです。それらを7Sのフレームワークに当てはめて、図1のように整理してみました。

このように、さまざまな要素が積み重なって構造的な課題が形成されており、何か一つを解決すれば、今の情シスが抱えている問題が解決するというものではないことがわかります。また「現状/課題」をそのまま課題として捉えて改善を図ろうとしても、必ずしもそれが成果につながらないことは、皆さんも経験されているのではないでしょうか。

大切なのは「現状/課題」を引き起こしている真の原因をきちんと突き止めることですが、真の原因はIT領域に限った話ではなく、日本企業の伝統的な体質によって誘引されている可能性が高く、なかなか一筋縄ではいかないということです。そして情シスが抱えるジレンマは、あらゆる「リソース」を起点とする問題が多いことに気づきます。

図1 情シスが抱える課題の真因

情シスが目指すべき姿

進藤:
では、こうした環境で情シスのプレゼンスを上げるには、どうしたらいいのでしょうか。情シスは企業におけるIT全般を司る組織です。経営活動を支えるための“守り”と テクノロジーとデータを活用し競争力を高めるための“攻め”のバランスを強く意識する必要があります。そしてもう1つ、情報システムに携わる人間が意識しなければいけない大事なこと――それは「自分たちが唯一無二の存在だという強い自覚」です。

昨今の企業において、システムなくして経営が成り立つシーンは皆無です。よって、自分たちがエンジンでありハンドルでもあるという自覚を持ち、仕事に取り組むことが、情シスのプレゼンス向上、ひいては会社の業績を上げていくうえで不可欠になります。

コーセーの情シス(情報統括部)の事例

進藤:
コーセーの情報統括部は5つの課からなり、それぞれが対になる業務部門と一対一で向き合う形態となっています。そして、新卒・中途採用と合わせて事業部門からの異動者を募るなど、組織の活性化にも取り組んでいます。ですが、まだ新しいことへのチャレンジは十分でないため、図2のように8つの資源の観点から課題を捉えて解決を図るべく、一人ひとりの意識の変革に取り組んでいます。こうした動きを計画的に遂行する過程においてIT戦略で重視するポイントも「技術的戦略」から「組織/人材戦略」へと推移しています。

「テクノロジー/システム」の観点で実施した内容について簡単にご紹介します。以前は業務システムごとに機能を作り込んでいましたが、現在はシステムのハブになる機能を集約し、共通基盤化を実施しています。また、システムパターンを標準化することでスピードアップを図り、フレームワークからネットワークまでの範囲を抽象化して、ビジネスロジックに集中できるようにしています。そのほかにも、開発におけるノーコード・ローコードの優先やサーバレスの方針などを定めています。

次に「組織/人材」の観点での取り組みとしては、プロジェクト制を敷いたり、CoE(Center of Excellence)を確立したりして、経営リソースの集約を図っています。さらに、情報統括部のスキルマップを定めて、個人の志向に応じたキャリアプランを形成できるようにしています。例えば、情報システムに関心のないビジネス系の人材でも同分野でのキャリア形成が可能であることを示しています。

これまでの日本の情シスには「キャリアビジョンを十分に示せていない」という課題がありました。「キャリアパスがない」「ロールモデルがない」といった状況のなか、転職するといったアクションもとりづらく、閉鎖的な環境に陥ってしまうケースもあるのではないでしょうか。そうならないために、キャリアパスやロールモデルのサンプルを提示しながら対話を重ね、各自が目指すべき姿や挑戦してみたい職種について、年齢を問わず誰でも選べるような状態を作るようにしています(図3)。

図2 資源から考える顕在課題と抜本的な解決を図るための方策

クラウドを基礎としつつ画一的なエンジニア像からの脱却 → 人材の多様性を重視 → 個人の指向に応じたキャリアプラン形成

図3 情報統括部スキルマップ

強い個と多様性を兼ね備えた集団

進藤:
我々が目指す「組織/人材」のあり方として「強い個と多様性を兼ね備えた集団」を目指したいと考えています。そのために必要なのは、テック系に偏らず、ビジネス系のスキルもしっかりと身に付けられる組織および環境です。加えて、経営層の想いや考えがダイレクトに伝わり、メンバー間に情報格差がないオープンでフラットな環境作りも、組織が機能的・効率的であるためには不可欠です。

情シスが企業戦略に貢献していなければ、コスト部門と捉えられてしまうので、ビジネスに直接貢献できる範囲をいかに増やしていけるかが、今後の大きな命題になると考えています。

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