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となりの情シス Special 経営に資する情シスになるための思考転換のヒント

IIJ.news Vol.183 August 2024

モチベートセミナー③ ISENSE株式会社
岡田章二氏は、ISENSEの事業目的に「情報テクノロジーを企業経営に活かすこと」を掲げている。
本稿では「経営に資する情シスになるための思考転換のヒント」と題されたモチベートセミナーの内容を紹介する。

執筆者プロフィール

ISENSE株式会社
代表取締役社長

岡田 章二 氏

ユニクロ(現ファーストリテイリング)で24年にわたり、業務改革とシステム化を推進。その後、RIZAPグループのCIOを経て、2019年にISENSEを起業。現在はDX推進に留まらず、数社の取締役や経営アドバイザー、基幹系プロジェクトの立て直し、次世代リーダーの育成などに従事している。

本記事は2023年9月の講演内容をもとに再構成しています。
記事内のデータや組織名・役職などは当時のものです。

経営に資する情シスになるための行動規範

岡田:
ISENSEでは“こういうふうにはなってはならない”という「逆行動規範」を定めていますが、今回はこれに倣って「情シスを元気にする」というテーマのもと「情シスが取るべき行動規範」を考えてみたいと思います(図1)。

業務部門の要望を鵜呑みにしてはならない!

岡田:
まずは「業務部門の要望を鵜呑みにしてはならない理由」についてです。多くの日本企業にはセクショナリズムが存在し、他部署の業務に口出しできない状況になっています。そのため、全社目線で改革の要件を整理できる人材がほぼ存在しないのが実態です。さらに、組織がサイロ化されていると部分最適になりがちで、何か改善しようとしても、議論の場に出てくるのは業務に詳しい担当者になり、その時点で大きな改革は起こせなくなってしまいます(図2)。

では、なぜセクショナリズムが生まれるのでしょうか。残念ながら、大企業は歴史的にセクショナリズムを生みやすい構造になっています。日本では年功序列・終身雇用が定着しており、職務分掌があります。加えて、職務権限決裁権や役職手当までつくため、中間管理職は自分の配下の組織に対する絶対権力を持ってしまいます。その結果、部下の評価は上司次第となり、上司が理解できないような変革は実行できず、顧客ではなく上司のほうを向いて仕事をするという慣習に甘んじてしまうのです。こうした状況に立ち向かわなければならないのが、多くの日本企業に共通する課題です。

図1 経営に資する情シスになるための行動規範

図2 セクショナリズムが生まれる構造

経営、業務部門、情シスの関係性

岡田:
組織のあり方をもう少し掘り下げて、「経営」「業務部門」「情報システム部門」の関係性から見てみましょう(図3)。

多くの日本企業では「経営」「業務部門」「システム部門」の3者が“分断”しているのではないでしょうか。ITに関する知見がない経営は現場任せの無関心状態に、業務部門は経営からの“よろしくやってくれ”に従ってシステム部門に不満をぶつける無責任状態に、そして経営とうまく対話できないシステム部門は業務部門のニーズを実現するだけの下請け状態に――こうして3者それぞれが不満を抱く状態になってしまうのです。

このバラバラの3者を連携させなければならず、その役割にはCIOやプロジェクトリーダーが就き、変革の旗振り役を担います。その際、そうした重責を他人任せにするのではなく、3者をきちんと取り込んで、全社的に取り組む必要があります(図4)。

変革に際して、優秀な経営者は次のように語ります。「“システム作り”は社員の働き方を変える根幹となるため経営の役割であり、業務部門は仕事の半分を“仕組み作り”に費やすべきで、システム部門は現場以上に現場を熟知して“業務を作り直す”といった気概を持たなければならない」と。

特に経営者は「働き方を決める仕組み」となるようなシステム作りには積極的に介入すべきです。システムは大きく2つに分類されます。業務効率を高めるための「便利ツール型」と、基幹システムのような「業務プロセス型」です。特に後者は会社の事業継続を左右するため、全社的な目線が必須であり、経営が主導的に推進していかなければならない分野だと言えます。

図3 日本企業の組織の実態

図4 理想的な企業内連携

組織作りで腐心したこと

岡田:
かつての情報システム部門には「要望を聞いてシステム化する。エンドユーザがお客さまである」といったマインドを持った人が多くいました。私がファーストリテイリングでCIOの立場からチームを率いていた際は、時に現場の声を否定しながらでも変革を進めていくカルチャーを作ろうと試み、そこがもっとも腐心した点でもありました。

情シスが議論しなければならないのは「何の課題を解決するのか」という点です。しかし、本来解決すべき課題は、ITで直接解消できるものではなく、仕事のやり方や物事の判断の仕方を変えることが求められます。情シスは、そうした一連の変革を支えるための仕組みを作るのだ、という意識を持つことが非常に重要です。あとは、経営と同じ目線から成長を見据え、必要とあらば先回りして物事を考えなければなりません。そういったマインドを持つ組織にすることが肝要であり、やり甲斐を感じられる部分でもあるのです。

これからの情シスに必要な“思考の転換”

岡田:
将来を担う情シスの皆さんに「Stay Simple」という言葉を贈りたいと思います。
  • なるべく作らない
  • 百点満点を⽬指さない
  • 業務ユーザの満⾜はあきらめる
  • 最後までやり切ることにこだわらない
  • 声の⼤きな⼈に従わない

これらを意識すると、投資コストやランニングコストを抑えられ、変革を早く実現でき、属人的になりにくく、軌道修正もしやすくなります。

近年、DX推進が盛んですが、これは本来、成果が出るかどうかわからない試みと言えます。よって「成果が出ないと判明した瞬間、やめる」といった決断をできることが非常に重要です。最後までやり切ることにこだわらなければ、儲からないデスマーチを途中でやめたり、計画を変更できるようになります。このように「シンプルに仕事を進めること(Stay Simple)」を学んで、これまでの価値観を少し変えてみてはいかがでしょうか。


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