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栽培暦や経験則に頼ってきた人手の水管理作業の負荷をIoT技術で大幅軽減
2022年12月16日
株式会社インターネットイニシアティブ
当社は、稲作の水管理において、水田に設置したセンサーから取得したデータを元に稲の生育状況を算出し、算出した生育状況に応じて水管理を自動で行う仕組み(※特許出願中)を開発いたしました。
本技術は、通常、栽培暦(※1)を参考に人手で行っている水管理を、稲の生育状況を指数化した「発育指数(以下、DVI:DeVelopment Index)(※2)」を用いて、自動で水管理をできるようにしたもので、2021年から2022年に美唄市で実証実験を行い、農作業の時間を大幅に短縮するとともに、従来と同様の収穫量を得ることができたことで、本技術の有効性が確認されました。
水稲栽培農家にとって水田の水管理は大きな労働負荷となっており、ICTを活用した水管理の効率化が推進されています。水管理は通常、栽培暦をもとに行いますが、圃場によって移植日(田植日)が異なったり、年によって気象条件が違ったりするため、人が各圃場に赴き生育状況を目視して対応する必要があり、作業と移動に多くの時間を費やしています。そこで当社では、圃場毎に異なる条件でも対応できる水管理の自動化を目指し、気温や水温などの気象データを取得し、そこから生育状況を算出したうえで、生育状況を時間軸とする水管理を考案しました。生育状況を指数化したDVIを用いることで、気象条件や栽培期間のずれに影響されない定量的な水管理が可能となります。
今回開発した水田水管理自動化システムは、水田センサーや給水装置といった現場のIoT機器とクラウドシステムをネットワークで連携させ、以下の水管理プロセスを自動で実現します。
本実証実験は、北海道美唄市営農者、美唄市ICT農業推進協議会、および株式会社笑農和(えのわ)の協力のもと、美唄市の圃場にて、2021年6月から2022年8月まで行いました。
検証は広さ2.0ha、1.2haの2つの圃場に、水田センサー(IIJ)、給水装置(笑農和)を各1台ずつ設置、移植日(5月中旬~下旬)から出穂期(7月下旬~8月上旬)の期間にDVIによる生育推定を行い、その中で幼穂形成期(6月中旬~下旬)から出穂期(7月下旬~8月上旬)の期間、本システムを使って自動水管理を行いました。
栽培期間に低温になることが多い北海道では、熱帯植物の稲は気温によって収穫量・品質に影響を受けやすくなります。特に幼穂形成期から出穂期の間に幼穂が低温にさらされると生育不良が起きやすく、この期間深水管理が推奨されています。本実証実験では、この期間、夜間に水温が高いパイプラインから給水し、早朝前後に停止して圃場の水温を効率よく保つ、といったスケジュール機能も実装し、検証しました。
2年間にわたる実証実験の結果、開発した仕組みを利用することで、気象条件が異なる年においても同水準の生育を行えることが確認でき、DVIに基づいて水管理を自動化する仕組みの有効性を証明しました。
DVIを利用した水管理では、移植日の違いや地域の違いを意識することなく、栽培管理の比較・再現が可能になります。またDVIの算出方式には、営農者が経験則で判断していた気象・気候要素が指数として取り込まれているため、気象条件にも影響されにくい安定した水管理を行うことができます。
このように、水田の水管理を、リアルタイムでデータ取得・分析・制御を行うシステムを使い、DVIを用いたうえで自動化することで、作業負荷の大幅な軽減や栽培技術水準の維持が可能となります。
本実証実験では主に北海道で行われている深水管理についての自動化検証を行いました。作業時間の大幅軽減に加えて、熟練された営農者の水管理方法をIoT技術で可視化・定量化することで、収穫量の増加や品質向上に加えて、水管理技術の継承のサポートも期待されます。
今後は、この自動水管理システムを日本全国で利用できるように機能拡張・改良を進めていく予定です。
IIJエンジニアブログにて、稲の発育指数(DVI)について紹介しています。
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