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アシオット株式会社 様

最先端IoTとAIを活用した自動検針サービスにIIJのLTEが採用
中国本土へのSIMカード供給を実現しトータルでのコスト削減を実現

「エッジAI」を駆使してIoTサービスを提供するアシオット株式会社(以下、アシオット)は、従来型の電気・ガス・水道メーターを後付のOCRカメラを活用してスマート化する自動検針サブスクリプションサービス「OCR式LPWA自動検針サービス」を開発し業界の注目を集めている。また、近日中に産業用設備の遠隔自動検針及び点検サービスを実現する「ASmartカメラ」もリリースを予定し、その両方に「IIJモバイルサービス」のSIMが採用され、その運用が秒読み段階に入った。IIJ独自のサービスにより、アシオットの中国工場へ直接SIMカードを供給するとともに、在庫期間中の通信料金を圧縮することでトータルなコスト削減が期待されている。

導入前の課題

電気・ガス・水道メーターに取り付けたOCRカメラの通信品質低下が問題化

OCR式LPWA自動検針サービスの概要についてお聞かせください。

三上氏

OCR式LPWA自動検針サービスは、電気、ガス、水道など既に設置されている様々な機械式・電気式メーターを低料金でスマートメーター化するサブスクリプションサービスです。電気・ガス・水道の従来型メーターの数字が表示される部分に、独自設計の数値読取用アタッチメントを取り付けてOCRカメラ本体を装着します。OCRカメラが数字を撮影すると、その画像からAIが値を読み取り、LPWA通信でクラウドサーバにアップロード。検針履歴をデータベース化することで、時間帯ごとの使用量をPC・スマートフォン・タブレットで可視化します。他にも、使用量異常、前回比異常、OCRカメラ内蔵バッテリー異常などを検出するとともに、検針履歴から検針票や時間帯別料金に対応した料金内訳付請求書、使用料金明細書なども自動作成できます。それにより、省人化、効率化を実現し、ヒューマンエラーの削減や、スマートメーターへの切り替え費用の節約、省エネ分析などに貢献します。
そしてこのOCR式LPWA自動検針サービスは、業界を超えたモバイルコンピューティングの普及促進団体である「モバイルコンピューティング推進コンソーシアム」(MCPC)が、IoT/AI分野で優れた成果を顕彰する「MCPC award 2021」において、サービス&ソリューション部門での優秀賞を受賞することができました。

アシオット株式会社
代表取締役社長
三上 楊平 氏

受賞おめでとうございます。既存のメーターを手軽かつ安価にスマートメーター化することで、継続的な省エネルギーと資源の節約をより身近なものにした点が高く評価された結果ですね。

三上氏

そのように受け止めています。既設の電気・ガス、水道メーターの多くは指針値を自動的に送信できない従来型メーターのままです。スマートメーターの導入コストは従来型メーターのおよそ6~12倍になるため、それがスマート化を遅らせている要因にもなっているのでしょう。従来型メーターには多くの課題があります。例えば、高齢化社会の進行に伴い、今後検針員の労働力不足が予想されています。また、人が目視でメーターを確認するため計測ミスや記載漏れなどが発生する可能性があるほか、毎日検針できないため、仮に使用量などに異常が発生してもすぐには検知できないことも問題視されています。

省エネルギー実現には、エネルギー消費状況をこまめに把握することが必要です。

三上氏

そのとおりです。ある調査では、外食産業の関連店舗のうち半数以上の事業者がエネルギー消費量を正確に把握していないという実態も明らかになっています。国内ではまだ省エネルギー対策の技術や方法論が確立されておらず、事業者各自の努力か、あるいは第三者のコンサルティングに頼っているのが現状です。OCR式LPWA自動検針サービスによる従来型メーターのスマート化が普及すれば、ビッグデータ分析による省エネルギー対策の方法論と技術の確立が進み、エネルギー消費の最適化をお客様に提案できると考えています。

今後リリース予定のASmartカメラについてもご紹介ください。

三上氏

ASmartカメラは、2021年度中に市場へ投入する予定の、工場などで活用する遠隔自動検針及び点検サービスを実現する製品です。こちらも、既存の計器に取り付け、数値を自動収集してスマート化を実現しますが、数字だけではなく指示針式の計器の読み取りにも対応します。複数の指示針式計器をエッジAIが同時に読み取ることも可能で、ビッグデータ分析による最適な省エネルギー対策や業務の自動化を実現します。AIの認識処理をエッジ側で実行するため、通信データ量を大幅に削減でき、低遅延による高速なレスポンスや、個人情報排除によるプライバシー保護、セキュリティリスクの低減なども可能にします。また、本体に学習済みAIモデルを移植することで、産業用設備点検の自動化・自律化のみならず、他の応用シーンにも対応できるよう柔軟性を向上しています。例えば、商業施設での人数カウンタ・行列感知・来棚検知・自動発注や、福祉施設での人物追跡・行動検知・防犯など、様々なユースケースにも応用できる可能性を持っています。

OCR式LPWA自動検針サービスの通信部分においては、これまでどのような課題があったのでしょうか。

三上氏

OCR式LPWA自動検針サービスは既に数千台が出荷され、通信機能にはZETAやLoRa、NB-IoTなど複数の他キャリアのLPWA規格を採用してきました。電気・ガス・水道メーターはコンクリートで囲まれた部屋や鉄製の扉の中、地中などに設置されていることが多く、そのような電波が通りにくい環境では通信品質が低下することが課題でした。また、山間部や島嶼部などでは通信が不安定になるキャリアもあるため、別途外部アンテナを接続したり、キャリアから提供されたブースターを追加設置したりするなどの工夫も必要でした。そうした理由から、新たに通信可能域の広いNTTドコモ網を使えるLTE-M方式のSIMカードをラインナップに加えることで通信品質を高めることが必要だと考えました。
もう1つの課題は、SIMカードの調達、配送、保管、テストに関することです。OCRカメラ本体は中国本土のEMS(電子機器の製造受託サービス)企業で生産を行っているため、部品のほとんどは中国国内で調達します。OCRカメラは日本国内で使用するので、当然日本で使えるSIMカードを装着するのですが、日本の携帯電話会社のSIMカードは中国では入手できないため、当社が生産に必要な分のSIMカードを日本で調達し、中国のEMSに届けていました。手間が増える上に、都度配送コストもかかります。また、日本の携帯電話会社のSIMカードは中国で開通処理ができないため、EMSでは最終的な出荷テストができません。全て日本に持ち込んでから最終テストを実施しているので、国内で不良品が発見されることもありました。更に、現状のSIMカードは日本で契約した翌月から月額料金の支払いが発生してしまうため、出荷前の在庫中に費用がかかることも問題でした。

利用イメージ

選定の決め手

中国国内の工場に直接SIMカード供給できたのはIIJモバイルサービスだけ

それらの課題の解決に向けて選択されたのがIIJモバイルサービスだったわけですね。

三上氏

はい。LTE-M方式のSIMカードを追加採用する際には、次の3つを選択の条件にしました。第1は、通信品質の高さです。IIJモバイルサービスはNTTドコモ網を活用できるため通信は安定している上に品質も信頼でき、通信可能エリアも国内最大です。悪条件の環境でも、外部アンテナやブースターを併用せずに運用できる可能性があるのは大きなアドバンテージでした。第2は、中国国内でSIMカードの供給を受けられることです。IIJモバイルサービスは、IIJと取引のあるSIMカードベンダと協力することで、EMSに直接供給することが可能でした。この条件に対応できたのは、国内ではIIJモバイルサービスだけです。第3は、多角的なコスト削減です。IIJモバイルサービスはリーズナブルな通信料に加え、SIMライフサイクル管理機能が利用できることがポイントでした。任意の時にマニュアルで開通操作ができるので、出荷前や在庫期間中の無駄なコストを抑制できると考えました。

ASmartカメラにもIIJモバイルサービスをご採用いただきました。

三上氏

2021年12月生産予定のOCR式LPWA自動検針サービスLTE-M版に続き、年度内リリース予定のASmartカメラにもIIJモバイルサービスの採用を決めました。特にASmartカメラでは、低消費電力型マイコンを使用したLPWA通信モジュールと、IIJモバイルサービスのLTE-Mのメリットを組み合わせ、かつ基地局との通信間隔を拡大して端末の消費電力を削減する技術のeDRX(extended Discontinuous Reception)を併用しています。それにより撮影・送信回数が8,000回を超えても3年以上バッテリー交換が不要となる長寿命化を実現しました。

導入後の効果

トータルで毎月数十万円のコストダウンが可能になると試算

OCR式LPWA自動検針サービスとASmartカメラにIIJモバイルサービスを活用することで、どのような効果が期待できるでしょうか。

三上氏

様々な面でのコスト削減が可能になると考えます。1つ目は、新規に利用料金の安いLTE-Mを加えられること。2つ目は、SIMを取り付けて出荷してもお客様がOCRカメラを取り付けて開通処理をするまで月額費用がかからないこと。OCR式LPWA自動検針サービスは1,000回線単位で提供するため、毎月数十万円のコストダウンが可能になると試算しています。3つ目は、IIJのサポートによって中国国内での試験用SIMカードも調達できること。今後は日本から供給する必要も少なくなるとともに、EMS側で出荷テストまで実施できるので、国内でテストをする手間と時間も削減できます。不良品が発生しても全て中国側で対処するので、それらをトータルで考えるとコスト削減効果は非常に大きいと感じています。
また、まだ本格導入前の評価段階ですが、従来のLPWA版よりもNTTドコモ網を使ったIIJモバイルサービスのLTE-M版の方が、明らかに通信状態が安定し、運用も楽です。ビジネスを拡大していく上で通信品質や使い勝手の向上は大きな優位点になると思います。
更に、SIMライフサイクル管理機能は、APIによる開通コントロールが可能になるので、当社のようなIoTの製品やサービスを展開するビジネスでは、今後も非常に便利に使えるのではないかと期待しています。

今後の計画についてもお聞かせください。

三上氏

今後OCR式LPWA自動検針サービスやASmartカメラが本格的に普及していけば、現状のプラスチックSIMカードをチップ型SIMやSoftSIMなどに進化させ、生産コストや部品調達コストの削減にも挑戦しようと思っています。SIMカードが不要になれば工場の組み立て手順も簡易化できる上に、スロットなどの部品も不要になり、防塵・防水設計も容易になります。
また、IIJはSIMカードだけではなく、低消費電力と長距離通信が特長のアンライセンス系無線通信方式「LoRaWAN」を利用したIoTソリューションも提供しているので、それとOCR式LPWA自動検針サービスやASmartカメラと組み合わせて選択肢を広げることで、セルラ方式での通信が難しいビルの地下室や密閉空間などにも柔軟に対応できるサービス開発も視野に入れています。

最後にIIJに対するご評価やご要望をお聞かせください。

三上氏

開発プロジェクトを通じ、IIJの技術力、サービス力、サポート力は本当に素晴らしいと感じました。当社のサービスは通信とデータ利活用が命なので、今後更にビジネスを普及させていくためにはIIJのパートナーシップは不可欠となります。これからも一緒にビジネスを作って行けることを期待しています。

導入したサービス・ソリューション

お客様プロフィール

アシオット株式会社
本社:東京都町田市中町1-4-2 MBDA No.216
設立:2020年6月17日
“明日のIoTを支える使命感”を社名の由来とし、「エッジAI」技術を駆使して、お客様の多種多様なニーズにもお応えできるよう広範囲に渡るサービスを提供。主な事業内容は、1)最先端のIoTとAI技術を用いたデバイスとサービスの企画・開発、2)ビッグデータ分析による付加価値提供、3)IoT+AIコンサルティング。世界市場に通用するITプラットフォームやサービスを創り、新しい価値を提供できる技術者集団としてビジネスを展開している。

アシオット株式会社

※ 本記事は2021年11月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

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