伊藤忠商事の100%出資子会社として設立されたコネクシオ。通信キャリア各社の携帯電話を販売し、現在268の通信キャリア認定ショップ直営店を運営する同社だが、店舗数の増加にともない、既存のPOSシステムに課題が発生していた。「これまで通信キャリア認定ショップでは、クライアント/サーバ型のPOSシステムを導入していました。既存のPOSシステムは、5年に1度のサイクルでハードウェアをリプレースする必要があり、巨額のコストが発生します。更に、POSレジが故障した際のダウンタイムによる機会損失も課題でした」と、同社の高木健一氏は説明する。
更に、「業務効率の課題」もあったという。「従来型POSシステムの場合、通信キャリアごとの異なる要件への対応ができず、レジの操作も物理キーに縛られてしまうため、帳票の作成といった手作業を必要とする業務が多く発生していました。また、ほとんどの店舗ではPOSレジを1台しか設置することができなかったため、スタッフはレジまで行き来する必要がありました」と同社の黒崎健宗氏は振り返る。
そこで同社が注目したのが、タブレットデバイスだ。物理キーに縛られないタブレットデバイスであれば、通信キャリアごとの要件に沿ったPOS業務を行うことができる。処理作業はデータセンター上で行われるため、店舗にはタブレットデバイスを整備するだけでよく、コストや設置台数の問題もクリアできるのだ。従来の課題を解消すべく、同社は同ソリューション導入へ向けた情報収集を開始した。
POSシステムの移行検討にあたり、「条件としてはまずタブレットデバイスを使用すること。次に当社が必要とするセキュリティ要件を満たすこと。そして、これらを当社が目指すコスト内で実現することの3点がありました」と同社の山田伸二氏は説明する。
その結果、「IIJ GIO POSサービスを利用したネイティブアプリ開発」を採用。「今回は、実現方法やプロジェクト体制、実績などを重視しました。IIJの提案は、プロジェクトを円滑に進めるための体制が非常に強固で、成功が期待できました。また、大規模な導入実績を持っているなど、信用度が他社に勝っていたことも大きな要因でした」と高木氏は話す。
検討当時、IIJ GIO POSサービスはiOSを活用したソリューションであり、iOSでの開発を予定していたという。しかし、急遽Windows OSへの切り替えが検討された。
この仕様変更について、「いずれは従来型POSシステムからタブレット型のPOSシステムが業界標準になるだろうという考えがありました。そうすると、汎用性の高いWindows OSであることが業界的には望ましい。ですので、無理を承知でWindows OSへの変更をお願いしました」と、高木氏はそのときの思いを語る。
IIJでは仕様変更に対応すべく、専任の開発チームを結成。同社も2014年4月より、通信キャリア認定ショップの業務担当者も交え、業務内容の洗い出しを実施。新たなPOSシステムの要件定義を開始した。
2in1タブレットデバイスの機種選定では、現場からの高い評判を受け、Surface Pro 3の採用の決定に伴い、ネイティブアプリを含む本格的な開発がスタート。開発はシステムの完成度を高めるべく約1年半かけて進められ、2016年3月より、IIJ GIO POSサービスとSurface Pro 3を活用した新POSシステムの運用が開始された。「現場スタッフへのヒアリングを行い、必要な機能に過不足がないように盛り込みました。細かな部分までIIJに対応いただけたので、高クオリティなシステムを完成できたと考えています」と、同社の二宮智和氏はIIJによる開発を高く評価する。
2016年3月より新POSシステムの運用を開始したが、その効果は既に表れ始めている。「導入後は大きなトラブルもなく、これまでのPOSシステムと比べてもスムーズに運用できています。具体的な効果としては、まず帳票作成や保管の手間が省けたことが挙げられます。帳票類は個人情報にあたるため、厳重な保管が必要でした。ペーパーレス化は、業務改善に加え、セキュリティリスクの低減としても大きな効果があるといえます」と、二宮氏は業務改善面の効果を挙げる。
こうした業務改善は、CS向上にも結びつくことが期待されている。隙間時間にSurface Pro 3をノートPCとして活用することで、事務作業も効率化でき、そこから生み出された時間を接客に充てることが可能だ。
「新POSシステムへの移行により、大幅なコスト削減を見通しています。これはデバイスの調達やシステムの開発費用、IIJのクラウド利用料なども含めた見通しです。コスト削減という観点だけでも、新システムへの移行は大きな意義があったと考えています」と高木氏は話す。更に、「2016年10月8日の時点では、新POSシステムを導入しているのは8店舗のみですが、順次導入店舗を拡大していきます」 と黒崎氏は語る。
続けて、高木氏はIIJの技術力について「今回のプロジェクトを通じ、IIJの高い技術力と優れた進行管理能力、そしてSurface Pro 3のデバイスとしての優位性を実感することができました。IIJやマイクロソフトをパートナーとして、今後も順次、POSシステムのアップデートを続けていきたいと思います」と語る。今後も新POSシステムの導入を進めるコネクシオのパートナーとして、IIJは今まで以上にサポートしていく構えだ。
※ 本記事は2016年10月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。