澤居氏
基盤については、オンプレミスではなくクラウドを検討しました。それまでIaaSやPaaSとしてクラウドの利用はしていなかったので、ゼロからの選択でした。Amazon Web Services(AWS)と他のパブリッククラウドが候補に挙がりましたが、両製品の比較をした時に、当時はAWSの方が安価であったこと、実績の多さなどからAWSを選択しました。
澤居氏
IIJからは、既にネットワークサービスの提供を受けていました。基幹システム基盤のデータセンターに対してIIJのネットワークで接続する形態です。そうしたネットワーク環境だったので、AWSについてもIIJに相談してみました。
澤居氏
AWSに関しては他のベンダーの見積もりも取ったのですが、ネットワークを他社に変えるつもりが当面はないこと、クラウド基盤を今後増やしていくことも考慮し、トラブル時の窓口を一本化できるIIJに依頼するのが最適解と判断しました。既にIIJネットワーク網からの足回り回線が引いてあり、IIJ Smart HUBのAWS Direct Connectを使うことでAWSに対して閉域接続できる環境が整っていたので、依頼しやすかったということもあります。
澤居氏
今回利用するシステムは外部公開しないので、非常に高いセキュリティは現時点では不要と考えていました。そうした中で、IIJのナレッジにもとづきAWSセキュリティのベストプラクティスを提供する「IIJセキュアベースライン」というソリューションを紹介されました。それだけでもAWSの定めるセキュリティスコアに対して90%以上の数値を計測可能でした。現状の用途としては十分な機能を持つと考え、利用することにしました。
澤居氏
現在利用している販売管理システムは導入から20年近くたっていて、サポートの打ち切りを打診されていました。販売、会計システムは別のパッケージに置き換え、その他周辺システムをAWS基盤へ統合する方向で実施しました。基幹システムの移行は2025年4月に時期が決まっていたので、AWSへの移行もそのスケジュールに合わせて実施することになりました。
澤居氏
2022年秋ごろから検討を開始し、2023年秋にAWSが稼働しました。基幹システムの移行は2025年4月稼働に向けて作業を進めています。Forguncyは既に稼働していて、業務改善ツールの移行を進めています。現状では3割程度がForguncyに移行したところです。また新しい業務改善ツールとして、インボイス制度対応の請求書作成システムや営業の日報システムなどをForguncy上で新規に開発するなど、集約と活用が始まっています。基幹システムと連携するAWS上の周辺システムも2025年4月稼働を目指して開発を進めています。
澤居氏
野良ツールが減りましたし、実際に動いているツールの把握もしやすくなりました。一括管理できるので改修もしやすくなりました。ツールを使うユーザ側からも、Forguncyで一括管理されていることでツールを探したり、最新ツールを確認したりする必要がなくなり、手間が省けるようになったという声が上がっています。
AWSを基盤としたことについて、トラブルや障害も発生していませんし、サービスを停止したいときは従量課金なので気兼ねなく停止できるメリットも感じています。今後、新しい機能の追加やスペックの向上が柔軟にできることにも期待しています。
澤居氏
構築する段階で綿密に打ち合わせをしたので、トラブルはありませんでしたし、スケジュールも計画通りに進みました。検収前に通信が一部通らなかったことがありましたが、対応依頼に対して迅速に反応してもらえました。
澤居氏
将来的には基幹システムと連携したECサイト構築を想定しています。その基盤として、AWSを活用することを考えています。さらに将来は、フジモリ産業が提供する製品から利用データを集約するようなIoTサービスなども検討しています。今回AWSを導入したことで、今後の情報集約基盤としてもAWSの活用を検討しています。
※ 本記事は2024年9月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
Excelなどで作成した業務改善ツールを一元管理する必要性が高まる
フジモリ産業のデジタルイノベーションについて教えてください。
フジモリ産業 澤居伸匡氏
工場にはアナログで手作業の運用がありますし、業務も煩雑化していますので、デジタル技術を使った効率化が求められてきました。一方で製品のIoT化など、製品に対するIT技術支援も求められています。デジタルイノベーション推進部では、社内の各部門にヒアリングをして、技術提案などをする形で積極的なデジタルイノベーションに取り組んでいます。
事業推進部
デジタルイノベーション推進部長
兼 情報システム課 課長
澤居 伸匡氏
業務改善を進める中での課題はどのようなことでしょうか。
澤居氏
各部署のヒアリングをしていくと、主にExcelベースの業務改善ツールが増えて管理しにくくなっていることが分かりました。マクロを組んだり、VBAを使ったりして作られたもので、棚卸しすると100種類ほどのツールがありました。使われているツールだけでも70~80種類ほどあります。一方で、バージョンアップで動かなくなったり、作成者が異動や退職でいなくなったりしたため改修できなくなっているツールも数十種類に上りました。そこで業務改善ツールを集約して、Webアプリ化することを検討しました。具体的には、ノーコード/ローコードツールを導入して、既存の業務改善ツールをWebアプリとして開発し置き換えようというものです。
ノーコード/ローコードツールはどのように選択しましたか。
澤居氏
複数のツールを検証しました。1つの製品は、自由度が高く何でもできることは分かりましたが、技術的にハードルが高く自社では扱いきれないと判断しました。他のいくつかの製品は、実際に検証したところ既存ツールを置き換えるには力不足で、できても3割程度しか集約できないことが分かりました。そうして検討している中で「Forguncy」を見つけました。トライアルしたところ、既存ツールの8割ほどを集約できそうだと分かりました。
また、Webアプリは基本的に自社開発する予定ですが、難しい場合はForguncyのパートナー企業にWebアプリ開発を依頼することも想定しています。