ふくおかフィナンシャルグループ 大上記央氏
生成AIのビジネス活用を模索している2023年4月に、IIJから「まず社内で使ってみることが大切」との提案を受けました。その提案は使うことを促すだけでなく、運用の定着、AI活用の社内への浸透、そしてビジネス価値の創出までフェーズを区切って進めていく具体的なものでした。
しかもIIJは「Azure OpenAI Service」を活用した生成AIのセキュアな活用環境を構築する技術力もあります。ビジネス活用を見据えた段階的な提案と、その実現を支えるソリューションを他社に先駆けて提案してくれたことが決め手になりました。
大上氏
既にMicrosoft 365を導入しており、その際にセキュリティ対策もしっかりサポートしてもらいました。また、IIJはMicrosoftのソリューション パートナー認定を取得し、Microsoftと緊密なパートナーシップを構築しています。IIJは金融機関として対処すべきセキュリティ対策を提案できる力を持っているので、セキュリティ面での不安はありませんでした。
ふくおかフィナンシャルグループ 江上優氏
Microsoftとの関係性で言えば、もう1つ、大きな選定ポイントがあります。今後の拡張性への対応です。
当時から、Microsoft 365内の各アプリにて様々なAI機能を活用できるサービス「Copilot」の将来的な提供がMicrosoftから公表されており、当社はそれを有望視していたため、そうしたニーズにも迅速に対応できるIIJが協業相手としてふさわしいと判断しました。
武重氏
生成AIを銀行業務にどのように活用するか、業務実装と社内活用をどのように進めていくか、当社における全体戦略をまとめました。実はこのロードマップ策定のきっかけになったのが、「まず社内で使ってみることが大切」というIIJの提案だったのです。利用開始後、どのタイミングで何をすべきかまで提案してくれましたので、生成AI活用の全体戦略を考える上でとても参考になりました。
IIJの提案を参考に策定したロードマップは、大きく「DAY1」と「DAY2」の2つのフェーズで構成されています。DAY1はまず社内で生成AIを活用し、その浸透を図ります。DAY2では社内の情報活用を促進し、将来的にはその利用範囲を社外にも広げていきたいと考えています。
そして、その先に見据えているのが、お客さま向けサービスの完全自動化です。アプリでATMのような銀行サービスを利用できるだけでなく、様々な手続きもアプリでできるようにし、分からないことがあればAIがアシスタントする。そんな世界観を目指しています。
武重氏
2023年4月にIIJから提案を受け、同年5月にIIJと正式契約して「Azure OpenAI Service」をベースにした生成AI活用基盤の構築がスタートし、同年6月には構築が完了しました。実質1ヵ月程で生成AIが使える環境が整いました。
その後、同年7月から一部の従業員によるトライアルを進め、やはり業務に役立つことが見えてきたことから活用ロードマップの策定を進め、2023年9月に経営層に上申しました。
江上氏
トライアルの実施には、生成AIの基礎的な知識や使い方、ルールなどをまとめた利用者向けガイドの作成が必要でした。実はこのときもIIJから知見やノウハウを提供してもらい、非常に参考になりました。こうして全社的に利用できる環境を整えていって、2023年12月から生成AIの社内利用がスタートしました。
武重氏
IIJは基盤を構築するだけでなく、生成AIのエンジンとなるLLM(大規模言語モデル)の考え方やモジュール機能なども詳しく説明してくれ、生成AIの得意分野や不得手な分野を知ることができました。こうした情報は、生成AIを使いこなす上で非常に有用です。IIJの豊富な知見と高い技術力を改めて実感しました。
江上氏
「Azure OpenAI Service」はリリース以降、何度かバージョンアップしていますが、IIJは常に先回りして最新の情報を提供してくれます。分からないことについても、手取り足取りの丁寧な対応で、安心感があります。
江上氏
本部、営業店など約6,000人が利用できる環境を整えており、徐々に利用が広がっています。
具体的には各種文書の下書き、企画のアイデア出しやその壁打ち、マーケット情報の整理などに使っているケースが多いですね。実際に利用した従業員から、社内SNSで多くの活用事例が寄せられており、導入効果を実感しています。トライアル時のアンケートでは、一人当たり約30分/1日の業務時間短縮効果があるとの結果が出ていましたので、今後もしっかりと利用を促進していきたいです。
武重氏
これとは別に、生成AIの業務利用を促進する環境整備にも取り組んでいます。銀行業務は多岐にわたり、ルールや手続きも複雑です。必要な情報を探すだけでも一苦労です。
そこで、行内データと生成AIを組み合わせた情報検索の検証プロジェクトを、IIJと共に進めているところです。完成すれば、チャットで問い合わせるだけで、必要な文書や手続き、作業の進め方が即座に分かるようになる予定です。
武重氏
先程紹介したように、将来的には生成AIの活用による、お客さま向けサービスの完全自動化を目指します。しかし、すべてを生成AIに置き換えるという意味ではありません。
ローンや融資の相談のように、どうしても対面の対応が欠かせない業務もあります。自動化できるところは自動化することで、担当者は対面のコミュニケーションに充てる時間が増え、よりきめ細かなお客さま対応が可能になります。デジタルと人の融合で、より価値あるサービスを提供していく。これが私たちの目指す「金融DX」の姿です。
今後もIIJと共にAIのビジネス活用を推進し、地域と共に発展する地域金融グループとしての存在感をさらに高めていきます。
※ 本記事は2024年1月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
生成AIのビジネス活用に早くから着目
御社は経済産業省が選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に2022年から2年連続で選ばれました。DXに注力する狙いと背景を教えてください。
ふくおかフィナンシャルグループ 武重太郎氏
当グループは福岡銀行、熊本銀行、十八親和銀行、福岡中央銀行、みんなの銀行からなる地域金融グループです。5行のシナジーを発揮し、地域経済の活性化と発展に貢献しています。
一方、昨今は人口減少や少子高齢化の進展、スマートフォンの普及などにより、金融機関を取り巻く環境は大きく変化しています。お客さまの多様なニーズと期待に応えるためには、価値ある金融サービスの提供が必須です。それを加速するため、DXを推進しています。
2022年4月には社長直轄の組織として、私たちが所属するDX推進本部が誕生しました。現在、総勢約130人で活動しています。
DXは内製化を軸に進めています。
武重氏
お客さま起点でサービスを提供するためには、最新技術をいち早くキャッチアップすることが大切です。開発のスピードと柔軟性も高める必要があります。そのため、内製によるアジャイル開発にシフトしました。
2022年度よりスタートした中期経営計画では、非対面取引を拡充させる「個人向けアプリ」と「法人ポータル」、そしてデジタルとデータを活用した「SFA(営業支援システム)」を三大プロジェクトと位置付け、その実現に取り組んでいます。このプロジェクトもDX推進本部が中心となり、内製によるアジャイル開発で進めています。
ChatGPTをはじめとする生成AIが登場し、そのビジネス活用の期待が高まっています。御社ではその可能性をどのように受け止めていましたか。
武重氏
銀行業務は稟議書、提案書など様々な文書を数多く作成します。情報収集やドラフトの作成において、生成AIは有用性が高いと思います。ChatGPTが登場した頃から、その業務活用を模索していました。