近藤氏
いいえ、実はオンプレミスのVPN装置をリプレースするように話が進んでいました。セッション切断の課題については解決策が見つかっていませんでしたが、ライセンス数と性能の問題をクリアするためにVPN装置のリプレースで対応する予定でした。見積もりを取って社内の決裁を通す直前まで進んでいました。
そうしたときに、IIJの担当者から、「全社リモートワークにするというニュースを見ましたが、システムは大丈夫そうですか?」と連絡があったのです。もう決裁直前でしたから対応は難しいことを伝えた上で、話だけ聞くことになりました。
近藤氏
まず、「セッションが切れない、切れにくい」ということが、これまでの弊社の課題に対して解決策になると響きました。業務を更にリモートワークに移行するとなると、VPN接続することでセッションが切れて業務遂行にストレスがかかる事態が想定されます。これをクリアできるのは大きなポイントです。
また、IIJフレックスモビリティサービスには、特定のトラフィックをVPN経由にせず直接インターネットに流す「スプリットトンネル」の機能が備わっていました。ビデオ会議やストレージサービスなど、大容量の通信をクラウドサービスとの間でやりとりすることが増えると、VPNのスループットが枯渇する心配がありました。それをスプリットトンネルでインターネットに直接逃がすことで、対処できると考えました。
近藤氏
話が進んでいたオンプレミスのVPN装置のリプレースでは、ライセンス数の問題は解決できても、セッションの切れやすさやスループットの課題には対応できません。新型コロナウイルス対策で全社リモートワークに移行することも考えると、課題を解決できるIIJフレックスモビリティサービスの導入に大きなメリットを感じて、上司に相談したところ、理解してもらえました。
近藤氏
実は、オンプレミスのVPN装置のリプレースよりもコストがかかることが最大の問題でした。それだけに上司に提案はしてみたものの、半分はダメだろうと諦めていたほどでした。ところが、IIJフレックスモビリティサービスの利用で得られるメリットに理解を示してもらえて、予想外に話が進んでいきました。
機能面では、デモを見て実際にインターネット通信を切断してから再接続したような状況でもセッションが切れないことを確認しました。その上、1990年代からインターネット業界を牽引してきたIIJの社内で実際に利用しているサービスということで、信頼感があったことも決め手の1つでした。
近藤氏
やはりコストアップは最小限に抑えたいので、サービスメニューの整理などにより無理のない範囲で料金の圧縮を検討してもらいました。一方で、オンプレミスのVPN装置では自社で運用し続けなければならず、情報システム部門の負担が継続します。これをサービスに移行すれば、運用はIIJ側に任せることができます。そうした運用面でのメリットを考えることで、機能面のメリットと併せてコストアップ分を吸収できると考えました。
近藤氏
2020年2月ごろにIIJの担当者から話をもらい、本格的に話を始めたのが3月末頃、4月に正式発注しました。大型連休を挟んで回線の手配に1ヵ月半ほどかかり、本稼働が始まったのは6月末でした。導入期間も、運用開始後も、トラブルらしいトラブルはなく、スムーズな切り替えができたと感じています。個人的には、ちょうど社名変更の時期と重なり、作業がダブルパンチになったのでキツかったのですが、IIJフレックスモビリティサービスへの移行がスムーズで助かりました。
近藤氏
これは社員一同、以前より良くなったと高く評価しています。特にエンジニアからは、課題だったVPN中のセッション切断がなくなり、とても助かっているという声をもらっています。
コロナ対策でスタッフがほぼ会社に来ないような状況で、300ライセンスのフレックスモビリティのうち、230~240のアカウントで同時に利用することも少なくないのですが、問題なくリモートアクセスを実現できています。ビデオ会議やクラウドストレージなどを利用するクラウド系のトラフィックを、スプリットトンネルによって直接インターネットに流せている効果は大きく、VPNとビデオ会議の同時利用をするような状況でもストレスが軽減されたという声が届いています。また、情報システム担当の運用負荷も個人的にはコストに見合った効果が得られていると感じています。
オンプレミスで機器をリプレースする方向が既定路線だった中で、IIJから話を聞いて「これはいいな」と思って即決で方向転換をしましたが、結果として「やって良かった」と思っています。
近藤氏
コンタクトセンターなどサポート部門のスタッフのリモートワークの実現について、IIJフレックスモビリティサービスを利用した検討を進めています。
個人情報を扱うサポート部門では、データをパソコンに残さないVDI(仮想デスクトップ)の利用を考えています。
近藤氏
個人的には1990年代からISP(インターネットサービスプロバイダー)としてよく知っていて、当時から技術力はすごいと感じていました。IIJの継続と拡大のスタンスは、弊社としても見習っていきたいと感じていますし、導入したサービスも含めてこれからもより良いサービスを提供してもらいたいです。
※ 本記事は2020年10月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
※ 会社名及びサービス名などは、各社の登録商標または商標です。
VPNのライセンスが足りず、セッションが切れやすい課題も
GMOグローバルサイン・ホールディングス様について、ご紹介いただけますか。
GMOグローバルサイン・ホールディングス 近藤明浩氏
GMOグローバルサイン・ホールディングスは、GMOインターネットグループの企業で、旧GMOクラウドが2020年9月1日に名称変更して誕生しました。クラウド・ホスティング事業、セキュリティ事業、ソリューション事業を展開する中で、電子認証サービスの「GlobalSign(グローバルサイン)」の知名度が国内外で高まり、ブランド認知向上を図る狙いで名称変更しました。「脱ハンコ」を実現する電子契約サービス「GMO電子印鑑Agree」による企業の業務効率化支援にも力を入れています。
以前からリモートワークを推進されていたそうですね。
近藤氏
新型コロナウイルス感染症の影響が出る前から、社内のエンジニアにリモートワークを推奨してきました。そのためにオンプレミスでVPN装置を導入・運用して、リモートアクセスに対応できる環境を用意していました。当時の契約ライセンス数は200でしたが、リモートワークを推奨しているといっても週に2日といった利用の仕方で、東京の拠点だけで200人を超えるエンジニアがいましたが、問題なく利用できていました。
VPN環境で課題は感じていましたか。
近藤氏
既存のVPN装置はサポートの関係で、既にライセンスの追加購入ができない状況になっていました。また、従来からリモートワークの必要性が高かったエンジニアからは、VPNを経由してサーバなどに接続している途中でVPNが切断されることが多く、いちいち再接続しなければならないことへの苦情が上がっていました。セッションが切れると、それまでの作業が無駄になることもあります。数年にわたり、これらを課題として持っていました。
そうした中で、2020年になると新型コロナウイルスの影響でリモートワークの拡充が急速に求められるようになりました。弊社では、東京本社と大阪オフィスの従業員の合計240名ほどがリモートワークを実施することになりました。既存のVPN装置ではライセンス数が不足するだけでなく、性能的にも限界があることが見えていましたから、リプレースを急ぐことにしました。