阪倉氏
2019年11月に、IIJの本社に出向き、フレックスモビリティサービスのハンズオンセミナーで実際に体験利用をしてみました。従来利用していたVPNサービスでは、つなぐための操作や、切れた後の再接続の操作が必要でしたが、フレックスモビリティサービスは基本的に常時接続のように利用できることが分かりました。切れにくいですし、切れたとしても自動的に再接続してくれるので、ユーザは再接続の手間をかけることなく業務を続けられます。これならばオリンピック・パラリンピックに向けて新しいVPNサービスとして導入する価値があると判断しました。
阪倉氏
2019年12月に契約をして、2020年2月をメドに3,000ユーザのリモートアクセス環境を整備することにしました。その間にテスト環境で導入して、挙動を確認していきました。在宅勤務などの外部からのリモートアクセスではセキュリティが大きな課題です。そこは、ユーザ認証やデバイス認証などにより、セキュリティが担保された端末だけ接続するというポリシーで運用できることを確認しました。その上で、パソコンをインターネットに接続した段階で自動的にVPNにつながる利便性は有効だと感じました。
矢吹氏
緊急事態宣言が発出されたときには、弊社でも在宅勤務が大規模に実施されることが想定されました。当初の約3,000ユーザの導入から、グループ会社の社員も含めてリモートアクセスが必要になる追加の約3,000ユーザをすぐに増枠しました。
緊急事態宣言が発出された状況で、感染者が社内に出てしまうと事業継続に影響が及びます。出社する必要がない社員がすぐに在宅勤務に切り替えられて、どうしても出社する必要がある社員も密にならずに安心して働ける環境を整えるためにも、迅速に対応してくれたIIJの俊敏さは頼もしかったです。
矢吹氏
4月から6月にかけての緊急事態宣言下では、実際に東京、大阪の両本社の従業員を中心に在宅勤務を実施することになりました。両本社の関連だけで1,500人ほどの在籍があり、これらの従業員は100%近くが在宅勤務を実施しました。
重要なことは、コロナ禍のような想定外のことが起きたときに、すぐに対応できる俊敏性だと思います。欲しいときにすぐに動いてくれて、万が一ダメなときには次善策を打てるか。フレックスモビリティサービスに対してIIJは、優れた対応力で要求に応えてくれました。今回、緊急事態宣言下の5月は仕事にならなかった会社が多いと聞いていますが、弊社では東京・大阪の両本社も現場も含めて問題なく稼働することができました。これはIIJの対応力のおかげだと感じています。
阪倉氏
当初の3,000ユーザの予定から最大6,000ユーザへのライセンス増加に対して、実際には5,200~5,300ユーザの利用で緊急事態宣言を乗り切りました。フレックスモビリティサービスを利用したリモートアクセス環境が軌道に乗るまでの間に、大きなトラブルはありませんでした。
一方で、緊急時の対応として工夫した点もありました。もともと、VPN環境でリモートアクセスを利用できる従業員は、事前に申請してもらって登録する方法を採っていました。この数が約3,000ユーザだったわけです。しかし、コロナ禍の対応ではVPN環境利用に対して従業員からの申請後に登録するような手続きを踏んでいたら、リモートアクセスできずに業務が止まってしまうリスクがあります。そこで、グループ会社も含めて登録が済んでいない残りの3,000人近い従業員に対しては、あらかじめフレックスモビリティサービスに登録しておき、必要に応じてすぐにVPN接続ができる体制を用意しました。こうした工夫も有事の対応としては必要になると思います。
阪倉氏
以前のVPNサービスを利用していたときは、「切れた」「つながりにくい」といった不満の声が多く聞こえていました。ところが、緊急事態宣言による在宅勤務の急拡大を経た現在に至るまで、以前のような不満の声が聞かれなくなりました。これはVPNの品質が向上して安定していることを示していると思います。
矢吹氏
苦情は来ていませんし、ユーザ視点だとかなり評価は高いです。思った以上にスループットも出ていることも評価できる点です。
阪倉氏
私たち管理者の立場からすると、操作画面の使い勝手をもう少し改善してもらいたいという要望はあります。とはいえ、ユーザから文句を言われないということは、管理者としてはとてもハッピーですし、サービス全般の使い勝手はいいと感じています。
矢吹氏
VPN環境は有事にも最大の想定ユーザがつなぎにきても対応できるだけの環境を整えることができました。今後も、クラウドファーストの視点で、さらにシステムの改善を続けていきたいと思います。
※ 本記事は2020年9月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
つながりにくいVPNを我慢しながら使用
カネカ様の事業概要を教えてください。
カネカ 矢吹哲朗氏
「カガクでネガイをカナエル会社」のキャッチコピーでお馴染みの化学メーカです。「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の取り組みを強化するESG経営を実践し、環境、エネルギー、食糧問題、健康など幅広い社会問題の解決に挑戦しています。
例えば、カネカ生分解性ポリマーPHBHは、100%植物由来で、海水中でも微生物によって分解されて二酸化炭素と水になることで、海洋マイクロプラスチック問題の解決に貢献します。「食」の分野では、これまで難しかった還元型コエンザイムQ10の量産化方法を確立するなど、長年培った発酵技術をベースに機能性食品素材を次々と展開するほか、本物志向の牛乳やベルギーヨーグルトなどの提供も手掛けています。
多様な働き方を実現するために、これまでもVPNによるリモート接続環境を構築していたそうですね。
カネカ 阪倉敦史氏
出張はもちろんのこと、社外や自宅から社内システムにアクセスできる環境を提供していました。営業部門や企画部門などが中心的ですが、業務で必要な人間にはVPNでリモートアクセスできるようにしていました。
矢吹氏
通常の業務での利用だけでなく、災害対応や事業継続といった視点でも、リモートアクセスは必要不可欠だと考えています。グループ会社も含めて、既存のVPNサービスには約3,000ユーザが登録していました。一方で、実際には同時アクセスは200ユーザまでで、すべての登録済みのユーザが同時に利用することは前提になっていませんでした。
既存のVPN環境には満足していたのでしょうか。
阪倉氏
一定レベルで満足できていたという状況でした。利用法としても、アプリをクリックしてIDとパスワードを入力して、社内システムに接続する必要があるときだけオンデマンドでつないでいました。同時アクセスが200ユーザでも、従来は事足りていたのです。
とはいえ、既存のVPNサービスは8年ほど継続して利用していたので、課題も浮かび上がっていて、変えなきゃいけないという意識はありました。最大の課題は「VPN接続した後で頻繁に切れる」「その後の再接続がつながりにくい」ということでした。使いにくい状況ではありましたが、3,000ユーザの乗り換えの負担を考えると、そこまでして更新するようないい製品が見つからなかったため、我慢しながら使っていたというのが実態でした。
変化のきっかけはどこにありましたか。
阪倉氏
2020年夏に予定されていた東京オリンピック・パラリンピックへの対応です。東京エリアでは通勤に支障が出ることが予想され、在宅勤務の協力要請が出ることを想定していました。そうなると、200人の同時アクセスでは不足しますし、オンデマンドでの利用というよりも常時接続する形態になりますから、切れやすく再接続がしにくい既存のVPNでは要件が満たせません。新しい製品・サービスを本格的に探すようになりました。
そうした中で、2019年10月にIIJのメールマガジンでVPNサービスの「フレックスモビリティサービス」の案内を見かけ、これは良さそうではということでIIJに連絡することにしました。