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モリト株式会社 様

商社が開発した初のIoT製品にIIJが採用
通信品質の高信頼性と攻めの低料金設定で市場席巻を狙う

ハトメ・ホック、マジックテープ®、靴の中敷きなど5分野で国内市場No.1の占有率を持つモリトジャパン株式会社(現:モリト株式会社。以下、モリトジャパン)は、同社初の本格的IoTポートフォリオとして、GPSで見守る月額制サービス「みまるく」を開発。デバイスの通信手段に「IIJモバイルサービス/タイプI パケットシェア」(以下、IIJモバイルタイプI)のnanoSIMを採用した。見守りサービスとしては後発ながら、業界最安値レベルの料金設定を実現。安心のバックボーンと信頼性の高いブランド力で、ユーザーの安心感を高め、ランドセルメーカーとのコラボレーションを起爆剤に、来年度は約2万台の販売をめざす。

導入前の課題

奇抜な機能よりも基本機能の充実と安価な価格設定を重視

「みまるく」の概要と開発経緯について教えてください。

大野氏

「みまるく」は、GPSで位置を知らせる専用デバイスを、保護者所有のアプリケーションに登録して見守る月額制サービスです。デバイスを持ち歩く方の現在地や、過去の行動履歴をスマートフォンから確認できます。位置情報の取得はトリプル測位方式(GPS、携帯電話の基地局、Wi-Fiアクセスポイントに対応した位置情報取得)を採用し、GPSが利用できない場所にも対応しています。また、特定のエリアを自由に設定し、そこへ出入りしたタイミングでの通知や、デバイス側からも発信できる「お知らせボタン」も搭載するなど、双方に安心を与えられる機能を多数備えています。1台のデバイスを最大10名が同時に見守ることができるほか、アプリに最大5台のデバイスを登録し、1つの画面で複数の人を効率的に見守ることが可能なのも「みまるく」ならではの特徴です。

川上氏

開発のきっかけは少しユニークでした。ある時、長年取引のあるランドセルメーカーから、子どもの見守りに役立つIT製品を作ってくれないかというご依頼をいただいたのです。昨今は、子どもを狙った犯罪が増加傾向にある中で、幼保時代を卒業し、1人で行動し始めた小学校低学年世代の児童の見守りが課題となっています。その年頃のお子様にはスマホを持たせることが早いと考える保護者が多い中で、スマホに代わる小型携帯端末を求める声が多くなってきたというのです。
当社はこれまでITに関連した製品を本格的に開発してこなかったため、一時は躊躇していたのですが、取引先の協力工場でGPSモジュールを製造している会社が見つかり、その出会いが後押しとなって2018年末に本格的にプロジェクトが始まりました。それから2年をかけて携帯用デバイスとアプリを開発。それを「みまるく」として製品化しました。

モリトジャパン株式会社
ビジネスサプライ営業部 第1課 課長
大野 伸一 氏

その開発過程でどのような課題があったのでしょうか。

大野氏

開発プロジェクトをスタートした時、既に市場では類似のサービスがいくつか存在していました。そのため、差別化にあたっては、奇抜な機能よりも基本的な機能をより高めて、誰にでも使いやすい操作性や、導入しやすい価格帯を実現することが重要だと感じていました。その鍵となったのがLPWAの採用でした。LPWAは従来の3G/LTE通信方式と比べると消費電力が少なく、1度の充電で長時間運用できると考えたのです。
そこで、LTE-M(LTE Cat.M1)とNB-IoT(LTE Cat.NB1)を選択肢として挙げ、当初はNB-IoTの活用を進めていました。しかし、ソフトウェアのアップデートが頻繁に必要なことや、LTE-Mよりも狭い周波数を利用するので通信速度が遅く、ハンドオーバ機能がないことなどから移動通信には向いていないと判断。最終的に、LTE-Mを選択することにしました。

選定の決め手

安価な料金でパケットをシェアでき超過分は従量課金のプランを選択

IIJモバイルタイプIに注目された理由についてお聞かせください。

大野氏

LTE-Mで行くと決めたものの、どのような通信事業者を選び、どんなプランのSIMを採用するのが最適なのか、全くの手探り状態でした。そうした中、GPSモジュール会社から紹介されたのがIIJだったのです。そこからプロジェクトが一気に加速していきました。当初、採用を検討したのは定額料金プランでしたが、試作機でテストしところ、想定していたよりも通信に使うデータ量が少ないことが判明。お客様の利用料金をできるだけ抑えたいという目標があったため、再度IIJに適切なプランを査定してもらい、その結果導き出されたのが、安価な料金でパケットをシェアでき、超過分は従量課金になるIIJモバイルタイプIでした。SIMカードは、標準的なマルチ・フォーム・ファクターのnanoSIMを採用しています。それにより、全体的なコストが抑制でき、結果的にデバイス本体価格が6,200円(税込6,820円)、月額利用料金が420円(税込462円)にまで抑えることができました。これらの料金設定は、類似の見守りサービスの中では最安値レベルになっています。

開発過程で課題を解決したエピソードがあったら教えてください。

大野氏

2019年夏頃から、アプリの管理システムの開発に着手しました。ところがテストを実施してみると、デバイスからアプリにうまくつながらないという問題に直面してしまいました。当時はAWS上にIoTサーバー(コア)を立て、ゲートウェイサーバー経由でデバイスとの通信を確立する構成でしたが、ゲートウェイサーバーが原因で通信が安定しないことが判ったのです。そこで、IIJの協力を得て信号プロトコルをHTTPからMQTT(MQ Telemetry Transport)に変更。ゲートウェイを撤去し、デバイスから直接AWS上のIoTコアにアクセスするように修正しました。そうした工夫もあり、2020年の年初には通信を正常な状態に回復することができました。
その後の予定では、11月に量産を開始し、2021年1月から正式販売をスタートする計画でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大と世界的な半導体不足が影響し、デバイスに使用する通信モジュールの入荷が遅れたため、4月に正式リリースできるよう準備を進めています。

利用イメージ

導入後の効果

フルMVNOのIIJブランドにより通信品質の担保やイメージの向上を実現

IIJモバイルタイプI活用のメリットはどのような点にあるとお考えでしょうか。

大野氏

初回量産に向けて準備する際に、IIJモバイルタイプIを選択したメリットを強く認識しました。そのひとつが、「SIMライフサイクル管理機能」です。このサービスは、SIMごとに回線ステータスをトリガでコントロールすることができ、出荷前の課金や休止時のコスト削減が可能になります。例えば、お客様の料金お支払いは「みまるく」をご購入された時点ではなく、デバイスが電波を発したタイミングで開始されるため、利用しない期間の月額料金を抑制することが可能になります。
さらに、「みまるく」の初期ロットでは出荷前に国内で最終的な動作確認をする必要がありましたが、一時的に開通させることで低コストに出荷前検査を実施できました。SIMライフサイクル管理機能はこうしたIoT製品ならではの対応が可能なので、お客様本位のサービスに仕上げることができ非常に助かっています。

国内では子どもの見守りサービス市場が活況しつつあります。

大野氏

おっしゃる通りです。現在、競合メーカーが次々と参入し、既存メーカーも3Gから4GのLTE-Mへアップグレードした新モデルを投入している状況です。後発の「みまるく」も初回は3,000台の生産でしたが、今年度は7,500台程度の販売を予定し、需要に応じて追加生産することも視野に入れています。また2022年度は、約2万台を目指しています。

川上氏

最近では、小学校へ入学するお子様をお持ちの保護者が、1年以上も前からランドセルの新商品情報を精力的に収集し始めるため、業界各社もランドセル商戦が活発化します。いわゆる“ラン活”ですね。幼稚園年長さんのご家庭では、ネットやフリーペーパーなどからランドセルの情報を収集されることから、当社でも保護者に「みまるく」のモニターを募り、Webチラシや公式ブログに体験談を掲載しています。評価結果も良好で、非常に高い手応えを感じています。
また、当社は付属品ビジネスで培った取引先が数多く存在し、そうしたB2Bのネットワークやコネクションは「みまるく」の拡販に非常に役立つと考えています。昨今は防犯ブザーをお子様のランドセルに備えるケースが増えていますが、犯人が犯行時に捨てたり壊してしまったりする可能性があり、音を鳴らすだけでは防犯の効果も疑問視されています。今後は、位置情報を把握できる見守りデバイスをランドセルの中やネックストラップで身につけるのが一般化するかもしれません。

モリトジャパン株式会社
ビジネスサプライ営業部 第1課
川上 彩 氏

子ども向けの見守りサービス以外に「みまるく」を活用する計画はございますか。

川上氏

介護用品メーカーとのコラボレーションも具体的に進んでいます。介護向けの見守りサービスも既に存在しますが、一般には介護保険が適用されないため非常に高額なサービスが多いのが現状です。その点、「みまるく」は低コストに導入できるので、価格破壊的な強みを持っているといえます。また、高齢者にご利用いただく場合、端末をどうやって身につけていただくかが大きな課題となります。当社は文具や教材関係、カメラ関係などで身につけるアクセサリーを数多く開発しているので、靴の中敷きやサポーターに忍ばせて楽に身につけられる方法や、持ちたくなるようなデザインのケースなどを開発するノウハウはあります。ハードとソフトとの両面で高齢化社会の課題改善に貢献していきたいと考えています。

「みまるく」開発プロジェクトを振り返り、IIJを選んだメリットとはなんでしょうか。

大野氏

当社としてはIoT製品を開発したのは初めての経験でしたが、IIJのおかげで製品化を早期に実現させることができました。特に、通信に関してはIIJのバックボーンはしっかりしているため安心感も高く、非常に手厚いサポートをいただけたので、IIJモバイルタイプIの採用は正しい選択だったと確信しています。

川上氏

IIJは問題が起きたらいつもすぐに対応してくれるので、今もそのサポート体制に助けられることが少なくありません。また、「みまるく」の広報物にSIMベンダーとしてIIJの名前が入っていると信頼性がさらにアップし、お客様も安心されるようです。フルMVNOのSIMの中でもIIJブランドは別格で、通信品質の担保やイメージの向上を期待できるのは非常に助かっています。

最後に、今後IIJに期待することについてお聞かせください。

大野氏

今後は、あらゆるものに通信機能を持たせたIoTのビジネスは拡大していくと考えています。“デジタルにつながる”という部分ではIIJが、“モノをつなげる”という部分では当社が得意分野になるため、両社のコラボレーションがどのような形で広がるかが非常に楽しみです。これからもパートナーとしてさまざまな通信技術に関する提案をいただけるよう期待しています。

導入したサービス・ソリューション

お客様プロフィール

モリト株式会社
本社:大阪府大阪市中央区南本町4丁目2番4号
設立:2018年12月3日 ※モリト株式会社の会社分割に伴い設立
資本金:3億1,000万円
1908年創業。110年以上も服飾の付属品や、カメラの資材、自動車内装部品、靴用品などを企画・開発。近年は、鉄道・航空機などの輸送機器や、映像機器分野にも製品を幅広く提供。2019年6月には持株会社体制へと移行し、純粋持株会社のモリト株式会社と、事業会社のモリトジャパン株式会社に分割した。現在は、世界12ヶ国・20社のグループ会社と連携してグローバルに事業を拡大。パーツの総合商社だがメーカーとしての機能も持ち、保有する特許・意匠数は250件以上、取り扱いアイテム数は10万点を超える。特に、ハトメ・ホック、マジックテープ®(面ファスナー)、靴の中敷き、自動車マットエンブレム、カメラ用アクセサリーの5分野では、国内市場No.1の占有率を持つ(同社調べ)。

モリト株式会社

※ 本記事は2020年12月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
ただし、2023年の社名変更に伴い、社名とお客様プロフィールのみ変更しております。

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