コインパーキングを中心とした駐車場マーケットの発掘・深耕、太陽光発電事業などを展開するパラカ。主力の駐車場事業は全国で運営・管理している。「差別化の難しい駐車場事業は、競争力のある料金設定や利用しやすさを高めることが重要です。駐車場に設置した精算機の情報をもとに、常に稼働率などの把握・分析に努めています」と同社の中村英之氏は語る。
こうした事業展開を図る上でITシステムの活用は欠かせない。当然、事業継続を確保する高い信頼性が求められる。「そこで以前から遠隔地のデータセンターを活用したディザスタリカバリ(DR)環境を実現し、災害や障害発生時に備えていました」と同社の斉藤巧氏は説明する。
しかし、DRの信頼を揺るがす事態が発生した。「本番環境で障害が発生した時のことです。フェイルオーバーは正常に起動したのですが、本番環境に復旧するフェイルバックがうまくいかず、一時的に業務を停止せざるを得なかったのです」と中村氏は当時を振り返る。結局、人が現地に赴き、サーバの入れ替えを行うことで解決したが、その手間と心労は大きな負担だったという。「従来のシステムはオンプレミス。障害時ばかりでなく、平時も含めて運用管理が限界に達しつつありました」と斉藤氏は課題を述べる。
課題解決に向け、同社が導き出した答えが、オンプレミスのクラウド化である。しかし、オンプレミスはSAPシステム、営業支援ツール、グループウェア、Webサーバなど業務系システムのほとんどがVMware環境上で構築・運用されている。特にSAPシステムは基幹業務を支える重要システムだ。「このSAPシステムをいかにクラウドに移行するかが重要なポイントでした」と中村氏は語る。
様々なクラウドサービスから同社が選択したのが、IIJ GIO VWシリーズである。「当初検討したパブリッククラウドは提供OSが限られており、SAP自体のバージョンアップが必要でした。その作業はSAPのインテグレーションを一からやり直すのと同じです。手間とコストが膨大になる上、移行リスクも懸念されます」と話す斉藤氏。
その点、IIJ GIO VWシリーズはVMware上で動作する多くのOS、アプリケーションをそのまま利用できる。「SAPシステムを含むオンプレミスの移行リスクを限りなくゼロに近づけられます。既存環境に手を加える必要がないので、SAPシステムの再構築が必要なパブリッククラウドと比較して、移行費用もおよそ1/10で済みます」と中村氏は選定の理由を述べる。
しかも、IIJ GIO VWシリーズ の基盤となるデータセンターは国内にあり、東日本と西日本に分散配備されている。国内2極体制でDR環境を実現できるのだ。IIJのバックボーン上にお客様専用の高品質ネットワークを提供する「IIJプライベートバックボーンサービス」も利用でき、DR環境に欠かせないネットワークもワンストップで提供する。「技術スタッフが国内にいるので、障害対応のサポートも安心して任せられます」(中村氏)。
実際の移行支援は、同社のシステムパートナーであるクニエが担当した。「クラウドへの移行にあたっては、データセンター内に移行ツール(PlateSpin)の持ち込みが必要でしたが、こうした要求にもIIJは柔軟に対応してくれました。移行作業もスムーズに進み、わずか2ヵ月で移行作業を完了できました。もしPlateSpinを持ち込めなかったと考えると、これだけの短期間では移行できなかったと思います」とクニエの塚越大輔氏は評価する。
さらに、「他社のクラウドサービスの場合、新たなノウハウをキャッチアップする必要がありました。ですが、IIJ GIO VWシリーズだと、VMwareの既存技術やノウハウがそのまま使え、エンジニアの教育も不要です。その結果、スピーディな環境構築ができました」と塚越氏は話す。
オンプレミスのクラウド化により、同社は様々なメリットを実感している。まずは、インフラの"お守り"から解放されたことだ。システムの稼働状況はコンソール上で一元管理でき、障害の発生もリアルタイムに通知され、原因解析や対策もIIJが対応する。「既存の業務システムの品質を維持しつつ、運用管理の負荷は大幅に低減されています」と斉藤氏は満足感を示す。
インフラの柔軟性・拡張性も高まった。IIJ GIO VWシリーズはCPUやメモリ、ディスクを即座に増設可能。事業の成長に伴い、リソースの増強が必要になった場合もすぐに最適な業務環境を提供できる。「スペック設計を気にせずに済む上、スモールスタートにより投資も最適化できます」と中村氏は語る。
懸念していた事業継続性も向上した。本番環境に異常が発生した場合は、DR環境への自動フェイルオーバー/フェイルバックで事業継続を確保する。災害やシステム障害が発生しても、人手を介さず、業務に必要なシステムの運用を継続できるのだ。
今後は本番環境とDR環境を結ぶネットワークの増強を計画。2015年4月中には、本番環境とDR環境間で専用の閉域ネットワークを無償で利用できるIIJプライベートバックボーンサービスを導入し、DR対策のコスト削減と信頼性をより高める。「IIJ GIO VWシリーズの有効活用に向け、今後もIIJの最適な提案とサポートに期待しています」と話す中村氏。SAP基幹システムを支えるIIJ GIO VWシリーズは、同社の成長戦略の中で重要な役割を担っている。
※ 本記事は2015年3月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。