若林氏
PCは、これまでブリヂストングループのPC-LCMを使って利用していましたが、約450台のすべてを入れ替える必要がありました。2023年の年末までにはPC利用者全員が使える状態になる必要があるので、配布やユーザへの説明などを考えると11月までには納品が終わらないといけません。一方でPC-LCMの検討が本格化したのは6月ごろで、残り時間は数ヵ月しかありませんでした。
若林氏
プロスパイラマニュファクチャリングではこれまで、マスターイメージの基となるPCを用意し、DVDなどでクローンを作成してクローニングするマスタークローン方式を採用していました。けれども今回はプロスパイラの意向もあり、Microsoftのデバイス自動設定ツールである「Windows Autopilot」を採用することになりました。デバイス情報とユーザのプロファイル情報をクラウド上に登録しておくと、ユーザが新しいPCをネットワークに接続するだけで必要な設定やアプリケーションがインストールされる仕組みです。
困ったのが、工場など現場で使うアプリケーションの中には、Autopilotに対応していないものが少なくないことです。Autopilotを実施しつつ、対応できない部分は個別にインストールや設定作業をしなければなりません。この双方を問題なく実施してもらえるベンダーを探す必要がありました。
若林氏
プロスパイラマニュファクチャリングは、拠点が1ヵ所ではありません。その上、約450台が一度に納品されても、保管しておく場所も用意できません。そこで分割して納品してもらうことも要件になりました。
若林氏
複数のベンダーに提案を依頼したところ、各社ともにPC自体は11月までに約450台の納品が可能ということでした。一方で、分割配送が難しいといったケースや、Autopilotに対応していないアプリケーションの個別インストール作業ができないというベンダー、または運用保守が別契約になったり、5年一括での支払いを求められたりするケースもありました。
そうした状況で、すべての要件を満たしてくれたのはIIJだけでした。Autopilotに対応していないアプリケーションの個別インストール作業も事前キッティングという形で対応してくれる柔軟性は、選択の理由として大きなものでした。加えて、Autopilotはネットワーク経由のキッティング方式のため、ネットワークが輻輳することもあるのですが、このネットワークの輻輳を回避するためのキャッシュサーバ(MCCサーバ※)構築の提案もありました。また、分割配送の要望にも応えてくれ、運用保守についてもワンストップでお願いできました。450台、半年、複数拠点、Autopilot+個別キッティングという難しい要件をクリアできる事業者はIIJのみだったのです。正式な発注は8月になってからと、ギリギリのタイミングでした。
※ Microsoft Connected Cache
プロスパイラマニュファクチャリング 鈴木 未央氏
具体的な作業に取り掛かれたのは2023年9月になってからでした。Autopilotで何のアプリケーションを自動配布するか、事前キッティングでどのアプリを入れるかの見極めが必要でした。社内の全PCを入れ替えるので、ユーザに対してノート型やデスクトップ型といった種類の希望のアンケートを取り、リストを作成して、納品までのスケジュールを組んでいきました。デモ機による動作確認やAutopilotの設定などまでを短期間で終わらせなければなりませんでした。
若林氏
Autopilotを実行するには、Microsoft Intuneの設定をセットで使わなければなりませんが、初めてのことで右も左も分かりません。我流で設定をしてみましたが、分からないことが多く、作業は滞りがちでした。そうしたとき、IIJに相談することで適切なアドバイスをもらえました。気軽に相談できて助けてもらえたことで、無事にスケジュールに遅れずに作業が進められたと感じています。
鈴木氏
4回に分けての分割納品は、スケジュール通りでした。年末年始の休みでネットワークが切り替わるので、その前にPCを配布して、ユーザには初期ログインやMicrosoft Outlookの設定とメール受信までを年内に済ませてもらうように周知しました。年始になってネットワークが切り替わっても大きなトラブルはなく、社員に新しいPCの利用を始めてもらえたと評価しています。
鈴木氏
台数が多く、短期間でキッティングしなければならなかったので、Autopilotを使って良かったと思います。マスタークローン方式では期日に間に合わなかったでしょう。IIJには、分割配送や、PCのグループごとの設定のカスタマイズやチューニングなど、細かいところまで対応してもらえてとても助かりました。
若林氏
Autopilotにすることで、基本的な設定やアプリケーションはゼロタッチデプロイで自動的にインストールされます。これまでならDVDから一生懸命インストールしなければならなかったのですが、Autopilotは圧倒的に楽でした。その上で、自分たちだけでは理解できなかったり対応できなかったりする部分は、IIJがサポートしてくれました。Autopilotは自分達だけでどうにかなるものではありません。IIJのようなパートナーが居たからAutopilotでのキッティングが実現できたと確信しています。
IIJにはPC故障時の運用保守も依頼していますが、スムーズに交換まで対応してもらえていて満足しています。
鈴木氏
IIJには、PCの導入時に設定の対応などでお世話になりました。今後も何かあったときには相談させてもらいたいと思います。
若林氏
IIJというと、ネットワークやインターネットの会社というイメージが強かったのですが、今回パートナーとして一緒にプロジェクトを推進していただき、デバイス・エンドポイント領域にも造詣が深いことが分かりました。今後も前向きに相談させていただきたいと思います。
資本関係の変化に伴いPCの全数入替が不可欠に
IT環境の変更が必要になった背景を教えてください。
プロスパイラマニュファクチャリング 若林 勇樹氏
当社は元々ブリヂストンの100%子会社のブリヂストンエラステックという会社で、防振ゴムの製造を行っていました。ところが2022年に資本関係が変わって、ブリヂストンが防振ゴム事業を譲渡して設立されたプロスパイラ(本社:神奈川県川崎市)と、製造を担当するプロスパイラマニュファクチャリング(本社:静岡県掛川市)として再出発しました。ブリヂストンの子会社時代は、業務システムからネットワーク、セキュリティ、PCまでブリヂストンから提供されていたのですが、すべてを自前の環境に切り離す必要がでてきました。
ネットワーク機器を取り替え、セキュリティ、ID管理、Microsoft 365、メールシステムまですべて刷新し、契約もネットワーク設定も切り替えるため、時間的余裕はまったくありませんでした。刷新の方針は2023年2月に決まり、ブリヂストンのネットワークからの切り替えを2023年末までに終える必要がありました。計画を作って、予算を確保して、ベンダーと話をして、すべてを終えるまでに実質10ヵ月あるかないかという厳しい状況でした。
方向性が2月に決まってからはどのように進められたのでしょうか。
若林氏
様々なものを入れ替えなければならない中で、ネットワークベンダーとしてIIJに着目しました。ネットワークの中心になるSD-WANのIIJ Omnibusサービス、ディレクトリサービス、ID管理などです。これまでIIJとは取引がなかったので、3月ごろにWebサイトの問い合わせページから連絡しました。
その後、ネットワークの更新についてIIJの担当者と打ち合わせをしているときに、PCも全部入れ替えないといけないという話になりました。すると、IIJから「IIJ PC展開支援ソリューション」というPCの調達、キッティングから運用までをワンストップで提供するソリューションがあると紹介されました。IIJがPCのライフサイクルマネジメント(PC-LCM)を提供していることは知らなかったのですが、短期間で大量のPCを入れ替えなければならない切羽詰まった状況であり、渡りに船として検討させてもらうことにしました。