早川氏
きっかけはIIJのメールマガジンでサービスの存在を知ったことでした。クラウド型のVPNサービスは他社でも提供していますが、「これだ!」と思えるものがありませんでした。その点、IIJフレックスモビリティサービスは従来のVPNの課題である「遅さ」「切れやすさ」を解消したサービスとのことで、ユーザが切断オペレーションをしない限り“つながり続ける”点に大きな魅力を感じました。すぐにIIJに相談し、東京の本社に出向いてデモ環境も使わせてもらいました。
QTnet 寺坂誉志氏
クラウドサービスのため、ライセンス数や回線帯域などをフレキシブルに増減できるのも魅力でした。コロナ禍の対応策として全社的にテレワークを実施した際は、このメリットを実感しました。
早川氏
もう1つ、重要なポイントがあります。それは、サポート対応がしっかりしていることです。クラウドサービスは事業者にインフラの管理を任せるため、サポート品質が非常に重要になります。当社はQTモバイル事業をはじめとして、IIJとは長年にわたり協業関係にあります。高品質なサポートを提供できることは、よく分かっていたので、安心して導入できると判断しました。
早川氏
営業部門に協力してもらい、出張の際、九州新幹線や東海道新幹線で実際にサービスを利用してもらいました。結果は大好評。トンネルを通過するときでもセッションが切れることはなく、再接続の手間がかからないことを確認しました。
早川氏
2019年5月に正式契約し、同6月から検証のための一部利用を開始しました。その後、社内ネットワークとの接続設定などを行い、同10月末に調整が完了。同11月から700ライセンスで本格稼働を開始しました。
当初は正社員向けの利用を想定していたため、700ライセンスにしたのですが、2020年3月以降、契約社員や委託社員もテレワークできるようにライセンス数を順次追加。同4月下旬までに1,500ライセンスに拡大し、回線帯域も500Mbpsから1Gbpsに倍増しました。
早川氏
その通りです。緊急事態宣言発令前の2020年4月3日に、当社はテレワークを基本とした業務体制に移行することを対外的に発表しました。法人事業、セキュリティ部門、保守運用サービス、コールセンターなど、ほぼすべての業務を対象とする「全社一斉テレワーク」です。ライセンス数を拡大し帯域も増強していたため、ゴールデンウィーク前には、ほとんどの社員がテレワークにシフトできました。
早川氏
ライセンス数を一気に増やす要望を出してから、帯域の増強も含めて、IIJは短納期で対応してくれました。コロナ禍の中、想定より短い期間で対応してくれたことに大変感謝しています。短期間で全社一斉テレワークに移行できたのは、IIJの迅速な対応のおかげです。
早川氏
全社一斉テレワークは6月で一旦緩和していく方向としたため、その後は通常出勤する社員も徐々に増えてきました。1,500ライセンスでは過剰なため、現在は契約ライセンスを1,300に減らしています。増やすだけでなく、状況に応じて減らすこともできる。ここでもクラウドサービスのメリットを実感しました。
早川氏
働き方改革はICT機器やツールなどのモノだけでなく、モノと人の両輪で推進していくことが大切です。どんなにモノを整備しても、人がそれを使いこなせなければ意味がないからです。
こうした考えの下、当社ではMicrosoft 365の導入後から現在まで、毎月、操作説明会を開いています。機能説明だけでなく、実践的な使い方も紹介しています。常に情報を発信しているため、利用のすそ野が広がり、業務にも好影響を及ぼしています。
これに加えて、今回VPN環境が整ったことで、誰もが安心してテレワークで仕事ができるようになりました。全社一斉テレワーク期間中の4月から6月まで、情報戦略システム部のメンバーは一切出社せず、ほとんどの業務をリモートで行いました。毎月の操作説明会や採用活動もリモートで実施しました。
QTnet 西本晃氏
私の場合、通勤に1時間ほどかかるのですが、テレワークならその時間を有効に使えます。仕事はもちろん、家事や育児を手伝うこともできるので、公私ともに充実しました。
寺坂氏
IIJフレックスモビリティサービス導入後、情報戦略システム部のメンバーは接続サポートや使い方などの問い合わせ対応にあたりました。もちろん、この作業もVPNを使ったテレワークです。問い合わせ対応中も回線が切れることはないので、ユーザにストレスをかけず、スムーズに対応できました。
重信氏
業務の生産性も維持できました。正社員約700名を対象に、5月末にアンケート調査を実施したのですが、テレワークでも生産性が落ちなかったという回答が7割以上を占めていたのです。ストレスを感じない“切れない”VPNの成果だと思います。
早川氏
新しい働き方として、今後もテレワークを積極的に活用し「お客さま原点」の活動を強化していきます。同時に、自社の経験で培った知見やノウハウを活かし、ネットワークサービスの新しい提案をIIJとともに考えていきたいですね。
※ 本記事は2020年7月の内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
テレワーク環境拡充のため、高品質で切れないVPNが必要
QTnet様の事業概要を教えてください。
QTnet 早川隆宏氏
「お客さま原点」の考えの下、九州地方を中心にお客さまの生活・ビジネスに密着した通信およびICTサービス事業を展開しています。
コンシューマ向けにはインターネット接続サービス「BBIQ(ビビック)」やスマホサービス「QTモバイル」、電力サービス「BBIQ電力」などを提供。自治体・企業向けにはVLANなどの回線サービスのほか、セキュリティを含むサーバやルータの保守運用サービス、法人向けサービス「QT PRO(キューティープロ)」などを提供しています。
「お客さま原点」の活動を推進するため、以前から働き方改革に取り組んできたそうですね。
早川氏
多様な働き方に対応できるよう、2016年2月からテレワークが可能な環境を整えています。ただし、VPNを利用できるのは営業や保守など一部の業務に限られていました。
転機は2年前。会社として働き方改革に本腰を入れ始めたことから「いつでも・どこでも・誰とでも」というキャッチフレーズを掲げ、全社員がテレワークできる環境の実現を目指しました。
テレワークが一部の業務に限られていたのはなぜですか。
QTnet 重信武士氏
テレワーク用の回線機器は、もともとファイアウォールとして導入した機器に機能をアドオンして使っていたため、提供できる回線数にも限りがあったのです。この機器のリプレース時期が近付いていたため、新たにVPNの導入を検討しました。
導入を考えたVPNには、どのような要件を求めましたか。
重信氏
九州の鉄道網はトンネルが多いので、電車で移動中に使っていてトンネルに入ると回線が切れてしまいます。これでは安定して仕事ができないと、ユーザには不評でした。切れる度に再度つなぎ直すのは手間もかかります。高品質で安定性の高いVPNを求めていました。
早川氏
クラウドサービスであることも重要な要件でした。というのも、当社は働き方改革の一環として、2018年2月にMicrosoft 365を導入していたからです。クラウドサービスのメリットを既に実感している上、管理の手間もほとんどかからない。会社としてもクラウドシフトを進めているため、VPNもオンプレミスではなく、クラウドサービスを利用したいと考えました。