「REGAL」ブランドの靴で知られるリーガルコーポレーションは、「REGAL SHOES」をはじめ、メンズ、レディースのブランドショップを直営とフランチャイズ合わせて全国で200店舗以上展開している。
そこでの課題となっていたのがネットワーク環境である。リーガルコーポレーションの吉江英司氏は「各店舗に有線ネットワークを配備し、POS端末やPCをインターネットVPN(IPv4)経由でデータセンターとつないで本社とデータをやりとりしていたのですが、トラフィックが輻輳して遅延が発生していました」と語る。
そもそも有線接続でしかネットワークを使えないことも、業務上の大きな制約となっていた。「既に多くの小売業で導入されているタブレット型POSレジやタブレット端末を活用した商品説明などが行えず、接客品質を今以上に向上させるのは困難でした」と語るのは、リーガルコーポレーションの平川隆悟氏である。少子高齢化による需要の縮小やネット通販の台頭などでリアル店舗は厳しい状況を迎える中、いかに顧客満足度を高めることができるかが勝負の分かれ目となっている。
こうした課題が山積する中で迫ってきたのが、既存のVPN機器の保守期間の終了だった。リーガルコーポレーションの後藤光俊氏は、「これを機と捉え、本社・店舗間ネットワークの刷新に向けた検討を開始しました」と振り返る。
リーガルコーポレーションの本社・店舗間ネットワークの刷新に向けた検討が大きく前進し、具体化したのは2016年11月のことだ。IIJの担当者から受けた提案に、同社は大きなメリットを感じ取ったのである。
その提案内容とは、IIJ Omnibusサービスを利用したWANで全国200以上の店舗とデータセンターを結ぶというもの。各店舗のアクセスはフレッツ回線でIPv6接続方式を利用するとともに、データセンターについてはフレッツ回線とIIJ 広域ネットワークサービスを二重化した構成で可用性を高める。店舗のサービスアダプタにはWi-Fi活用を見すえ、無線AP機能一体型の「SA-W2」が提案された。
「私が最も魅力を感じたのは、各店舗やデータセンターに設置する機器を、IIJ Omnibusに包括されたサービスアダプタとしてレンタルで利用できることです。自社資産として管理する必要がないため保守切れの心配もなくなります。また、今後も新しい通信規格が次々に登場してくると予想されますが、その際にも私たちは技術の陳腐化を意識する必要はなく、機器交換や設定変更など運用の手間をかけずに常に最新ネットワークの優れた機能を利用できます」と吉江氏は採用理由を語る。
そしてもう一つ同社が着目したのが、オンラインで様々な管理情報が参照できる「IIJ Omnibusポータル」である。
「従来の本社・店舗間ネットワークは運用監視を外部のベンダーに委託しており、毎月多額のコストがかかっていました。IIJ Omnibusポータルの画面を見せてもらったところ、遠隔拠点の接続状況が一目瞭然のリストで可視化されており、しかも異常を検知した場合はそれがいつから起こっていたのか、過去の履歴をさかのぼって確認することができます」と後藤氏は語る。IIJ Omnibusポータルを活用すれば外部ベンダーに委託せずに自分たちでその場で確認ができ、なおかつ障害対応のスピードアップも図れる。
こうして同社は同年12月、IIJ Omnibusサービスの導入を正式決定した。
新しいネットワークの展開は翌2017年3月より順次スタートし、7月に200を超えるすべての店舗で展開を完了した。
「従来のような輻輳による遅延は起こっておらず、各店舗のネットワークの利用環境はとても快適になり、Wi-Fiを利用したタブレット型POSレジなどの導入も積極的に進めていける環境が整いました」と後藤氏は語る。更にリーガルコーポレーションの秋葉光徳氏も、次のように導入効果を説明する。「ネットワークのサービスレベルが劇的に向上しました。特にネットワーク停止を伴うような障害の発生件数は従来に比べて80%以上削減しており、各店舗のユーザからクレームを寄せられることはほとんどなくなりました」
そしてリーガルコーポレーションが、今回のプロジェクトにおける最大の成果として強調するのが、コスト削減である。「ルータなど、一部構成上レンタル機器を導入したにもかかわらず、新たな監視体制やツールの導入を提案いただき、トータル運用コストを従来に比べ17%以上削減できました」と平川氏は話す。
こうした成果を捉えつつ、リーガルコーポレーションは更なる改善に向けた検討を開始している。「現状では各店舗からのインターネットへのアクセスはデータセンターを経由しています。これを例えばIIJ Omnibusの機能を利用する仕組みに変更してトラフィックを分散すれば、その分データセンター内の帯域に余裕が出るとともに、ファイアウォールをはじめとするセキュリティ運用の負荷を軽減できます」と吉江氏は語る。
クラウド型のサービスを利用することで、最新の技術を身軽に享受できる。人的資源の最適化も課題となる中、リーガルコーポレーションでは全社ビジネスをトータルに支えるシンプルな共通基盤を構築し、更なる成長を担っていく次の世代に引き継いでいく考えだ。
※ 本記事は2018年2月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。