南氏
IIJは10年以上前からクラウドサービスを提供しており、サーバやネットワークの移行設計から構築・運用までカバーするインテグレーションサービスも手掛けています。クラウドの価値を高める知見の提供も期待できると考えました。
富松氏
セキュリティを含めたサービスポートフォリオが幅広く、オンプレミスのクラウド化をアセットレスの「サービス」で実現できる点は非常に魅力的でした。IT基盤をIIJに一本化することで、問い合わせやトラブル対応のスピードアップも可能になる。当社のニーズを踏まえた将来構想を短期間で提示してくれた提案力も評価しました。
富松氏
IT基盤のクラウド化は4つのフェーズに分けて進めています。第1フェーズは「IIJ GIOリモートアクセスサービス」「IIJマネージドファイアウォールサービス」などを導入してリモートアクセス回線をリプレースするとともに、Microsoft 365利用時のインターネットブレイクアウトを実現します。
第2フェーズではオンプレミスのActive Directoryサーバ、DHCPサーバ、そしてファイルサーバを撤廃し、これらをIIJのクラウドサービスに移行します。
第3フェーズではオンプレミスの業務サーバのクラウド化や、サービスによる運用窓口の一本化を検討しています。
そして第4フェーズではSD-WANサービスによるインターネットゲートウェイと拠点間WANの最適化を検討しています。
若林氏
東京2020オリンピック・パラリンピック開催に伴う交通機関の混雑に備えて、テレワーク環境を準備しておくためです。以前からリモートアクセス環境は整えていたのですが、利用できるのは外出の多い営業担当者など一部の社員に限られ、使い勝手にも課題がありました。そこで以前の環境をリプレースすることにしたのです。「IIJ GIOリモートアクセスサービス」は2019年12月から導入を開始しました。
南氏
まず500ライセンス導入し、その後は段階的に増やしていき、3年後までにトータル1500ライセンス導入する予定です。新型コロナウイルスの感染拡大により東京オリンピックは延期になりましたが、結果的に緊急事態宣言下のテレワーク導入に対して機敏に対応でき、エネルギーという重要な社会インフラを提供する会社として事業を継続できました。緊急事態宣言解除後もテレワークは新しい働き方として、当社に定着しつつあります。
若林氏
業務基盤にはMicrosoft 365を利用しているため、「IIJ GIOリモートアクセスサービス」を使って接続すれば、在宅でも会社と同じように仕事ができます。オンライン会議サービスを使うことで、距離を感じることなく、ミーティングも行えました。
富松氏
以前のリモートアクセス環境は1回線あたりの月間トラフィックに上限があり、これを超えると通信が極端に遅くなってしまう。「IIJ GIOリモートアクセスサービス」は回線単位ではなく、全体の総容量トラフィックでの契約です。上限を気にせず利用できると好評です。通信が遅くなるといったクレームも一切ありません。
若林氏
リモートアクセスの利用はSIMのオン/オフの切り替えで制御が可能です。利用したい場合はIT戦略部に申請すれば、すぐにSIMをオンにして利用を開始できます。リモートアクセスの利用を管理者側で一元的にコントロールできるのも大きなメリットです。
富松氏
IT基盤をクラウド化すれば、業務部門のニーズに対応し、インフラや追加リソース、アプリケーションを迅速に提供可能になります。クラウドは新しいデジタル技術を取り入れて常に進化しています。AIやIoT、ビッグデータを活用したり他のクラウドと連携したりすることで、新しいアプリケーションやサービスも開発しやすくなるでしょう。
若林氏
グループ会社は30社以上ありますが、それぞれに事業は異なり、これを1つのオンプレミスの基盤で統合することは難しいです。グループとしてクラウドの活用を進めていけばデータの連携が容易になり、グループ一体となって情報価値を最大化できると期待しています。
南氏
新たなIT基盤の実現に伴い、今後はクラウドの利用を更に加速していく考えです。セキュリティの強化と利便性向上を図るため、資産管理サービスやSSO(シングルサインオン)の導入も検討しています。次世代のIT基盤を実現し、その価値を最大限に引き出す。IIJはそのために欠かせないパートナーです。進行中のプロジェクトの推進に加え、検討中の新たな仕組みについても有意義な提案を期待しています。
※ 本記事は2020年10月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
デジタル時代に対応した新しいIT基盤のニーズが高まる
御社の事業概要と近年力を入れている事業分野を教えてください。
シナネンHD 南博氏
全国の家庭や店舗、企業のお客様にLPガス、灯油、石油、電気などのエネルギーを供給しています。これを軸に脱炭素社会の実現を推進すべく、エネルギーコストやCO2排出量の削減を支援するソリューション事業も展開しています。再生可能エネルギーをはじめとする日本の省エネ・創エネ技術の海外展開、日系企業へのソリューション提案など海外事業にも力を入れています。
また新規事業にも積極的に取り組み、住宅リフォームやハウスクリーニング、シェアサイクルなど暮らしを支えるサービスの提供もしています。エネルギーを柱としながら、人々の生活に根差し、より良い社会づくりに貢献することを目指しています。
そうした事業を支えるITシステムは、どのような方針で構築・運用しているのですか。
南氏
エネルギーは重要な社会インフラであり、当社はその安定供給を図るという重大な責務を担っています。事業を支えるITシステムには、高い安定性・信頼性が求められます。安全・安心なIT利用を支えるセキュリティの確保も欠かせません。そのため、ITシステムは物理機器で構成されたオンプレミスで運用してきました。
一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)に象徴されるように、近年はクラウドやデジタル技術を活用したビジネス変革の機運が高まっています。当社も業務基盤にMicrosoft 365の導入を進めているほか、社外でもテレワークができるようにリモートアクセス環境も整備してきましたが、これだけではDXは推進できません。今後もテレワークが増えていく前提でより強固なネットワーク基盤を確保しつつ、柔軟で高度なIT環境を実現することが重要なテーマになっていました。
デジタル時代を見据えた、新しいIT基盤の必要性が高まっていたわけですね。
シナネンHD 富松隆氏
顧客ニーズやビジネス環境の変化スピードはどんどん速くなっています。オンプレミスでは、この変化に追随することが難しい。
シナネンHD 若林葉子氏
オンプレミスのインフラ基盤は複数のベンダーが構築を担当したため、対応窓口が分散し、管理も煩雑化していました。クラウドは自分たちでインフラを保守する必要がないため、管理の負荷も大幅に軽減できます。
南氏
そこでオンプレミスを脱却し、クラウドをベースにした次世代IT基盤の実現を目指しました。その実現を支援するパートナーとして選定したのがIIJです。