高品質かつ低廉な「ローコスト住宅」の提供に先鞭をつける革新的なビジネスにより、右肩上がりの成長を続けるタマホーム。木造住宅全国トップクラスのシェアを獲得し、業界屈指の住宅メーカーに成長した。ローコスト住宅を可能にした要因の一つが、大幅な工期の短縮。一戸建ての場合、着工から引き渡しまでに半年程度かかるのが一般的だが、同社は設計から施工までを一元管理することで、約75日前後での引き渡しが可能だ。
このビジネスモデルを推進する上で、ITシステムは重要な役割を担っている。「データセンターにオンプレミスでSAPシステムを構築し、本社サーバルームの業務系システムと連携した運用により、設計から施工までの効率的な一元管理を実現しています」と同社の賀来義明氏は説明する。
その一方、急速な事業成長に伴い、システムが肥大化し、保守・管理作業が煩雑化していた。「情報システム部がやるべきことは、業務のための最適なITを提供すること。システムの"お守り"に割かれる工数はできるだけ軽減したいと考えていました」と賀来氏は話す。
コストの増大も大きな課題だった。「オンプレミスのため、リソースの増強にはサーバの追加が必要です。設備投資に加え、環境構築・設定などの作業もコストとして跳ね返ってきます」(賀来氏)。また、サーバの追加にその都度対応していると、全体的に余剰リソースを抱えることになり、投資に見合う効果が得られないことも問題だった。
そこでタマホームが課題解決のソリューションとして注目したのがクラウドである。クラウドなら自社でインフラを持つことなく、運用をアウトソースできる。リソースの増強にも柔軟に対応でき、事業の拡大に応じたインフラを最適なコストで調達可能だ。
しかし、移行対象はFI/CO、SD/MM、PS、BWなど多様なモジュールで構成された大規模SAPシステムを中心とするミッションクリティカルな基幹系。安定したパフォーマンスに加え、高い信頼性・可用性が求められる。その答えとして選択したのが、VWシリーズである。
VWシリーズを含めたIIJのクラウドサービスは、SAP本社の認定を取得している。サービスのセキュリティレベル、運用に関するマネジメントレベル、基盤設備の堅牢性、サポート体制などSAPが設定した品質基準をクリアしているのだ。
また、決め手になったのは、ワンストップの対応力。「IIJはネットワークの専門家であり、国内有数のクラウドベンダー。クラウドを基盤としたSIも数多く手がけており、多様なニーズにワンストップで対応できます」と賀来氏は理由を述べる。
「IIJをパートナーに選定することで、煩雑なシステムの"お守り"から解放され、戦略的な事業展開や業務改革に貢献するという本来の情報システム部の"あるべき姿"を追求できます」と賀来氏は語る。
オンプレミスからの移行作業では、IIJの技術力と柔軟な対応力が大きな力を発揮した。「ネットワーク事業者としてのIIJの強みを活かし、当初の想定よりも大幅に設定変更を減らしてデータセンターへ移行してくれました。また、膨大なデータをクラウドへ移行する際も、クラウド設備のあるデータセンターに個別ラックを用意して、データを持ち込んで移行作業ができる環境を用意してくれました。他の事業者では対応が難しい作業も引き受けていただけたので、停止時間を最小限にし、短期間での移行を実現できました」(賀来氏)。
パフォーマンスの確保も重要な課題だった。というのも、SAPシステムの安定稼働には一定のSAPS値(システムサイズを測定するための単位)が必要になるからだ。
「それに対しIIJは、専有ストレージを用意するなど柔軟な対応で高い品質の維持に貢献してくれました。その結果、1仮想ホストあたり数万SAPSを実現。大きなトラブルもなく構築・移行作業を完了できた上、旧環境と比較するとI/Oに起因する処理は最大約330%向上、CPUに起因する処理も最大約150%向上し、オンプレミスと遜色ない"持たざるプライベートクラウド"を実現できました」と賀来氏は満足感を示す。
コスト削減効果も大きい。「クラウド化により全体最適化が進み、サーバの過剰導入を防ぐことができます。しかもハードウェアの更新管理やソフトウェアのライセンス管理、煩雑な障害対応などから解放されました。インフラ関係の窓口をIIJに一本化できたため、運用ルールの統一化も進み、従来と比べて運用コストはおよそ40%削減されています」(賀来氏)。
今後は業務システムの再構築に取り組み、すべてのシステムのクラウド化を推進する。「情報システムの"あるべき姿"を追求する上で、今後もIIJのサポートには大いに期待しています」と話す賀来氏。"持たざるプライベートクラウド"を戦略的に活用し、同社は更なる成長を目指す構えだ。
※ 本記事は2014年3月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。