瀧口氏
IIJは、IoTに必要な要素技術をパッケージで提供できる数少ない企業だったことです。例えば、当初は複数のデバイスのデータを集約するネットワークとしてLoRaWAN®の導入を検討していました。しかし、クラウドやIoTプラットフォームの他にLoRaWAN®に対応したセンサなどもパッケージで提供できる企業はほとんどありませんでした。
もう1つの理由は、IIJの技術担当者と直接、具体的なやりとりができたことです。弊社で分からないことや要望があったとき、IIJの技術に詳しい担当者に直接質問したり、議論ができました。
小林氏
弊社の要望に対してきちんとフィードバックを返してくれるのは、パートナーとしてとても頼りになります。近年では新しい技術がどんどん出てきますから、一度サービスを導入して終わりということではなく、常に改善し、成長していくことが必要です。その点でも、技術担当者が直接すぐに回答してくれることで、開発のスピードが全然違うなという印象がありますね。
牧石氏
構成を簡単に説明すると、まずは設備に電流センサや振動センサ、漏水センサ、温湿度センサなどの様々なセンサを取り付けます。それらのデータを閉域モバイル通信でIoTプラットフォーム(IIJサービス)に集約し、アドバンテック社のWISE-PaaS(IIJがパッケージ提供)を使って設備状態の可視化などを行います。
当初はIIJが提供するLoRaWAN®対応のセンサを使う予定でしたが、お客様が求めるデータを取得するには、村田製作所製のセンサを活用する必要がありました。このようにメーカーやベンダーを問わずに製品やサービスをインテグレーションしてくれるところも、IIJの良いところだと思います。また、WISE-PaaSを通じて比較的自由に可視化の画面をカスタマイズしたり、必要なアプリケーションを作成したりできるのもありがたいですね。
牧石氏
1つは、設備に異常があった場合に通知する機能です。例えば建物内にある各種ポンプには振動センサや電流センサが取り付けられており、その値が閾値を超えるとメールなどで異常を通知します。従来であれば担当者が直接現地に行って状況を確認しなければならなかったところを、この機能を使えば遠方の現場でも迅速に一時対応を行えます。この機能はお客様からも高評価をいただいており、私自身も良いシステムだなと実感しています。
牧石氏
PoCを完了したお客様では現在、オンプレミスからクラウドへの本格的な移行を進めているところです。またそれ以外のお客様でも、検証利用(PoC)という形での提供を進めています。人手不足などを背景に多くのお客様が属人化の脱却やDX化を進めていることから、弊社への引き合いも増えています。正直にいえば弊社も手一杯の状況ではあるのですが、新規のお客様にはIoTの活用やDX化をご提案することで、一緒に課題を解決していきたいと考えています。
TMES 南平修二氏
IoTの活用やDX化において弊社もまだまだ発展途上です。例えば今回開発したサービスが直接当社の収益に大きく貢献しているかというと、現時点ではそこまでには至っていません。しかし、今後更にシステムを改良・拡張していくことで、今後当社の収益の柱となりうるサービスへと成長させていきたいと考えていますし、その手ごたえはすでに十分に感じています。
TMES 星野竜一氏
設備の可視化画面はWISE-PaaSを利用しています。WISE-PaaSの良いところは、ある程度エンドユーザが自由にカスタマイズできることです。とはいえ、カスタマイズするにはそれなりの知識やスキルが必要ですから、お客様が必要とする画面を作成するには弊社の技術担当者が設計しなければなりません。必要な画面は現場やお客様によって多様なので、それらにすべて対応するとなるとかなり大変です。ですから、今よりも更に簡単に必要な画面や機能が設定できるような機能が生まれると嬉しいですね。
瀧口氏
弊社の方でも「こういう可視化の画面が欲しい」というイメージはあるので、それをIIJに作ってもらえれば理想です。一部は対応してもらっていますが、もう少し本格的にそれを実施できるような体制があるとありがたいです。あとは、PoCの段階ではIIJのプラットフォーム上で画面作成などを行ってきましたが、今後は弊社のシステム上(個別環境)でもそれが実行できるようにしていきたいとも考えています。
小林氏
最近お客様と対話していて感じるのは、デジタル技術の活用はもうだいぶ浸透してきたということです。そしてお客様が次に求めているのは、可視化などのツールそのものではなく、「何もしなくても結果だけが得られる」という状態です。例えばIoTやAIを活用した予防保全がその一例です。設備に異常が起きないようにすること、そして万が一異常があった場合には、何が原因で、どのような対策が必要かだけを的確に知らせてくれるような機能が理想であり、これは弊社が今まさに目指していることです。
更に長期的に言えば、人とセンサやロボットが共存しながら社会課題を解決できるような環境を作っていきます。例えば今後は、建物の中をロボットが移動することは当たり前になっていくでしょう。それを可能にするには、人とロボットが共存できるような環境を設計し、システムを構築していく必要があります。今回開発したIoTシステムを足がかりとして、そうした未来を実現したいと考えています。
労働人口の減少を背景に、IoTやクラウドの活用が急務になった
施設設備のリモート管理サービスを開発し、2021年から顧客に提供しています。開発に至った背景を教えてください。
TMES 牧石裕磨氏
弊社はビルや病院、研究所など様々な施設設備の保守メンテナンス事業を行う企業です。近年は労働人口の減少によって人材の確保や技術の伝承が課題となっています。弊社ではこうした課題を解決するため、2019年からIoTの活用やDX化を推進してきました。今回のリモート管理サービスの開発はその一環となる取り組みです。
TMES 小林正一氏
リモート管理サービスの開発は、あるお客様の事例をきっかけに2020年末ごろから始まりました。弊社は以前からそのお客様が保有する研究施設向けに、オンプレミスでの設備管理システムを提供していました。しかしお客様の方から、オンプレミスからクラウドに移行したいという要望があったのです。いくつか理由がありましたが、その1つは、クラウドならお客様の各拠点の施設設備を一元的に管理できるということです。そこでまずは、クラウドを活用した設備のリモート管理のPoCを実施することになりました。
TMES 瀧口信男氏(※)
具体的には、今回開発したのは各種センサから設備のデータをクラウドで集約・蓄積し、状態監視や予防保全を行うシステムです。これを開発するには、クラウドだけではなくさまざまな要素技術が必要でした。弊社だけではその知見が足りないため、支援してくれるパートナー企業を何社か検討し、その中からIIJを選ぶことになりました。
※ 瀧口氏(TMES株式会社 理事 技術本部 DX開発部長)はリモートでの参加