戸田建設は130年以上の長い歴史を持つ建設会社だ。同社はITへの投資にも積極的で、特にサーバの仮想化については他社に先駆けて推進してきた。これについて同社 価値創造推進室ICT戦略ユニット 情報企画チーム 主管の盛茂実氏は「当社は早くからVMwareを導入し、各ITシステムのリプレースに合わせて、徐々に仮想環境への移行を進めてきました。今ではほぼすべてのITシステムを仮想環境で運用しています」と語る。
ただし、同社のITシステムにも課題はあった。というのも、同社の組織は大きく3つに分かれており、それぞれが個別にシステムを構築していたため、IT統制という点で問題を抱えていたのである。
「そこで2013年、社長直下の組織として『ICT戦略ユニット』を設け、社内のすべてのITシステムを再構築・統合していくことになりました」(盛氏)
その際に提案されたのがクラウドの活用だ。既存システムを使い続けながら、リプレースのタイミングで順次、新しいシステムに移行していくとなると、大量のリソースが必要になる。であれば、迅速・柔軟にリソースを調達できるクラウドの方がベターと考えたのだ。
また、ITシステムの運用・管理にかかる負荷を軽減したいという思いもあった。同社 価値創造推進室 ICT戦略ユニット 情報企画チーム 主管の徳田芳雄氏は「それまでITシステムの運用・管理においては担当者に少なからず負荷がかかっており、さらにはディスクの障害によりデータを喪失してしまうトラブルも数回経験。自社で運用していくことに限界を感じていました」と語る。
戸田建設では、オンプレミスで稼働している全てのITシステムをクラウドへ移行することを念頭に、最適なクラウドプラットフォームの選定を開始したが、最終的に選ばれたのがIIJ GIO VWシリーズであった。「我々がやりたいことの多くを実現できたのがIIJ GIOでした。中でも最も大きかったのがVMwareへの対応です。既存のITシステムがVMwareで構築されていたため、運用・管理ツールであるvCenterまで含めてそのまま移行したかったのですが、それが可能なのは事実上、IIJ GIO VWシリーズだけだったのです」(盛氏)
また、既存システムとIIJ GIOの間をIPレベルで接続する「L2延伸接続」が可能なことも重要なポイントだった。これから既存システムを数年間かけて徐々にクラウドへ移行していくことを考えると、その途中段階ではオンプレミスとクラウドが共存するハイブリッドクラウドというかたちで運用することになる。その際に「L2延伸接続」を利用することで、既存のIPアドレスをそのまま持ち込むことが可能となり、既存環境への影響を最小限に抑えつつ、スムーズなクラウド移行が実現できるからである。
更に、IIJ GIOには「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure ExpressRoute」という大きなアドバンテージがあった。というのも、同社はバックアップなどを目的にMicrosoft Azureを利用していたのだが、この機能を使えば、IIJ GIOとMicrosoft Azureを専用線で結び、閉域接続が可能になる。徳田氏も「2つのクラウドをセキュアかつ安定的に利用できるというのは大きかったですね」と強調する。
こうして2015年6月、IIJ GIOの導入が正式に決定。その後、約2ヵ月をかけてシステム統合基盤を構築した。これにより、今後数年間かけて行われる、全ITシステムの移行プロジェクトの準備が整ったのである。
戸田建設では、今後、基幹システムを含むすべてのITシステムをクラウドへと移行する計画だが、まずはクラウドへの移行準備が整ったことで、システム開発における従来の課題は一掃された。これについて同社 価値創造推進室ICT戦略ユニット 業務運用チーム 主管の長沼秀明氏は「オンプレミス環境では、新たにシステムを開発する際には、さまざまな作業が必要でした。しかし今回、クラウド環境になったことで、以後はこうした手間から解放されます」と語る。
なお、社内用のファイルサーバおよびシステムの一部は、すでに移行が始まっている。特にファイルサーバについては、以前は共通の環境がなく、各部門でNASを使っており、管理体制もバラバラでアクセス権の設定も不十分だった。そこで、IIJ GIO VWシリーズ上に共通のファイルサーバを構築し、順次、各拠点に展開。併せてガバナンスを強化する計画が立てられている。
戸田建設では、しばらくはオンプレミスとクラウドのハイブリッドクラウドで運用していく計画だ。またクラウドについても、IIJ GIOとMicrosoft Azureのマルチクラウドとして使い分けていきたいとのことで、現在さまざまな構想が練られている。
同社のIIJへの評価は非常に高い。最後に盛氏は「フルクラウド化は複数年にわたるプロジェクトであり、これからが本番ですので、質の高いサポートとともに、有用な提案をお願いします」と、今後に期待を込めた。
今後も戸田建設は、IIJの支援を受けながら、理想のIT環境を築いていくことだろう。
※ 本記事は2015年11月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。