海外勤務経験者座談会
第3回:現地であるある苦労話
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2017/02/13
海外での勤務経験がある7人の社員が、その実情を率直に語る座談会第3回。今回はローカル社員のマネジメントや、残業に対する考え方の違いについて語ってもらいました。
今回は「現地であるある苦労話」。
参加者プロフィール
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- 中田(仮名、男性):
- グローバル事業部門の営業担当。前職で中国に3年駐在。
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- 米倉(仮名、女性):
- 海外クラウドサービス全般の企画を担当。前職を退職後、米国へ留学、IIJの米国子会社に2年半勤務。
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- 星野(仮名、女性):
- グローバル事業部門の営業担当。前職を退職後、シンガポールで日系の通信会社に勤務。
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- 亜川(仮名、男性):
- グローバル事業部門のマーケティングマネージャ。前職で米国・欧州・ASEANなど複数国に駐在。
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- 独楽田(仮名、男性):
- 中国のクラウドサービスの企画・運営を担当。前職を退社後、ドイツで現地企業に勤務。
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- 英田(仮名、男性):
- 大手製造・流通業向けの営業担当、社内の海外トレーニー制度を活用して、IIJの欧州子会社1年8ヶ月勤務。
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- 英森(仮名、男性):
- 国内・海外案件のプロジェクトマネジメントを担当、社内の海外トレーニー制度を活用し、IIJの欧州子会社1年8ヶ月勤務。
第3回:現地であるある苦労話
今日は営業の方、エンジニアの方、あとはマネージャーとして赴任されていた方もいますが、それぞれの立場でこういう苦労話を聞かせていただけますか?
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- 亜川
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日本では目標設定とか、評価面接がありますよね。大体30分、長くても1時間くらいですが、海外だと面接に一人当たり5、6時間かかるんですよ。
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- 一同
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え!!(驚)
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- 英森
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テニスのフルセットみたいですね。。「なんで私がこの評価なんですか」って言われるんですか?
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- 米倉
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アピール、すごいですよね。
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- 亜川
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赴任して初年度は目標設定を甘くしてしまって、大変だったんですよ。5、6時間でも帰らないとか、「納得できない」とか。本来日本もそうあるべきだろうけど、厳密な目標設定と評価するプロセス考えておかないと大変なことになりますね。営業でも売れる人、売れない人が当然いるわけですが、売れる人に大きな数字持たせると、インセンティブもらえないと言って辞めてしまう。だから逆に、一番売れる営業にはそんなに大きい数字を持たせないんです。タレントマネジメントみたいですよね。日本だと「前年頑張ってこれだけボーナスもらったんだから、来年はこれでやれ」「はい、わかりました」っていうのが多いですが、評価と同じでこのマネジメントがすごく大変だった。あとやっぱりジョブホッピング。辞めちゃう人が多くて、それもうどうしようもないけど、ちゃんと評価するとか、目標を正しくセットする、トレーニング期間も与えれば、基本は日本人とはそんなに変わらないのかもしれない。
でも日本人のマネージャーで慣れない人だと、こうことで調子崩してノイローゼなっちゃうのはよく見てた。その後、強制的に日本に帰任されて、製造業だとだいたい地方工場に戻されるんだよね。
亜川さん、女性の部下がたくさんいらっしゃった時期があったっていうことだったんですけど、アジア人の女性のマネジメントという点では、何か貴重な経験ありましたか?
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- 亜川
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そのときはセールスマネージャーだったので、ご主人が外資の銀行員、奥さんがセールスインセンティブで働いてるっていうケースがよくありました。だから「ボーナスどれだけ稼ぐか」っていうのが基本スタンスで、達成できるくらいに目標を低めにするとか、目標いったらボーナスこれだけにするとか、どれだけ頑張ったら収入になるかっていうのを、徹底的に議論してましたね。すごいのは、「明日プレゼンだから気合入った服を着てきて」って、日本だったらセクハラですけど、現地では全然そんなことなくて、「亜川さんの言うこと聞いてオーダー取れるなら何でも着てきます!」っていう気合の入り方なんですよ。
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- 星野
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もともとシンガポールって服装も日本に比べていろんな、体のラインが出るものを普通に着るので、その辺はあんまり抵抗ないかもしれないですね。
ただ、できない人はすぐにクビされるから、日本と比べてかなりシビアですよね。
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- 亜川
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クビを言い渡されたら、1時間以内にダンボールに私物をつめて出て行くんですよね。僕も1・2回ぐらいあったけど、警備員がそこまで来て、警備員の目の前で全部段ボールに荷物を入れて。
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- 星野
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契約書文化なので、契約内容によってはできますよね、そういうのが。あとシンガポールは、日本みたいに労働組合のようなものがないので、労働者が弱いですよね。
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- 亜川
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クビ切ってもいくらでも後任が探せますしね。
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- 中田
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そういう意味では、ドイツとかロンドンって大変ですよね、多分、そんな簡単に人切れないでしょ。
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- 英田
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ロンドンでは試雇用期間をきっちり設定してて、確か半年だったかな。
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- 英森
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フランスはすごい人を切るのが大変だって聞いています。
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- 独楽田
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ドイツも同じです、すごく労働者が守られてるので。
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- 英森
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フランスはもう労働者が守られ過ぎていて、会社つくるのに躊躇するくらいと聞きました。
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- 亜川
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フランスいたときに、日本と電話会議するのにホテルの回線が遅いから、会社に行ったんですよ。現地時間で朝の5時半ごろだったかな。だけど6時前に会社に入ると、会社が無理に従業員を働かせてるっていうことになるから、絶対入っちゃいけなくて、労働組合みたいな人たちが巡回してるんですよ。
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- 英森
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映画とかドラマみたいですね。
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- 亜川
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見つかって「お前何してるんだ!」って取調室みたいなところにつれて行かれて、警察とか普段会ったことないジェネラルマネージャーも呼ばれちゃって、大変でしたね。
ちょっと苦労の話に戻しますと。中田さんはエンジニアとしては苦労された話をたくさんしていただいたと思うんですけれども、何か他にありますか。
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- 中田
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僕はマネージャーではないんですけど、リーダー的には動いてました。良く聞くと思いますけど、中国ってメンツを重んじるので、お客さん先で怒るとか、メンバーの前で怒ると、ほんとにいじけちゃうんですよ。で、逆恨みをする。それはどれだけITスキルがあって、日中すごく真面目な人でも、それをやると癇に障るらしくて、そこはすごい気を付けてましたね。直接言われたこともありました。「中田さん、怒らないでください。特に女性の前で怒られたら私の立場がなくなります」って。
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- 英森
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「お前が悪いんだろう」っていうこともありますよね?
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- 中田
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そういう時は、「ごめんなさい。次から気を付ける」って押し殺してましたね。
怒りたくなったときは、どういうふうに言うようにしてたんでしょう?
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- 中田
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会社が守らなければいけない品質があるので、その期待値からあまりにもずれるとやっぱり、お客様にもあやまらないといけないし、たとえお客様の前であってもスタッフを教育しないといけない。そういう時には、怒りましたね。あとは納期を守らない時に変な言い訳をしているとか、そういう時は指導しないといけないですよね。
理論的に伝えて怒らなければ、大体聞いてくれるんですか。
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- 中田
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そうですね。
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- 亜川
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やっぱり怒らなきゃいけないときって結構あるけど、必ず会議室を予約して、「まず、今起こったことのファクトを確認しよう」と言って起きたことを淡々と言うと、急に態度変わったりして。3分の1ぐらいはそれで改善しますけど、もう1回起きたらまた同じことを繰り返す。文化的な違いもあるから、見方が違ったりすることもあるので、ファクトだけを確認すると、「そこまで上司に見られてるならしょうがないな、頑張ろう」ってなってくれてましたね。
星野さんはシンガポールと日本で営業を経験されていらっしゃると思うんですけど、営業のスタイルの違いとか、それに起因する苦労話とかありますか?
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- 星野
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会社によるのかもしれないですけど、日本だと段階を経ていろいろ承認を得ていかなきゃいけないですけど、シンガポールにいたときは200人規模の会社だったので、いきなりダイレクターと話せる、エスカレーションができるっていうのが楽でしたし、承認をとるのも早かったなっていうのがよかったですね。割と話もよく聞いてくれたりとかするんですよ。
ただ、やっちゃいけないこともあって、プロジェクトを納期どおりに進めるためには、誰かチームでミスがあればエスカレーションしないと駄目だったのですけど、それを密告するとやる気が下がるから駄目ですね。だから、ミスしたスタッフと一緒にエスカレーションしにいったりとか。さっき言われましたけど、文化的な違いとか、仕事に対する考え方の違いが結構あるので、その辺を気を使うようにしていましたね。じゃないと、次からアサインしてもちゃんとやってくれない。結構感情的に動くんだなっていうのが、最初慣れなくてびっくりしたところではありますね。あとはシンガポールの場合は、スタッフが結構休むんですね。頭痛で休みますとか、お腹痛いんで休みますとか。日本だと頑張って来ちゃうところを、みんなそんな感じで休んでいくなんて、「え、その日までにやってくれる予定だったのになあ」とか「あれ、休むんだ。。」みたいなことが結構、ありました。
その辺の調整は大変でしたね。
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- 亜川
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朝9時から部門のミーティングがあって、たまたま前日に何人かでカラオケ行っちゃったら、みんなほとんど来なかったなあ(笑)。
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- 星野
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あ、来ないです。絶対来ないですよ。
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- 亜川
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ミーティングがあるの、知ってるのにだよ。
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- 星野
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そうそうそう。
それぞれ皆さん違う理由を言って、休むんですか?
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- 亜川
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まあ、時間守ろうとか、そういう発想は薄いかもしれない。タイに赴任してたとき、奥さんがタイ語を習ってたんだけど、授業の前の日にタイ人の先生入れてカラオケ行って、ヨーロッパの人とアメリカの人と生徒は10人ぐらいいて、次の日頑張って授業に行ったら、先生だけがお休みだったらしい。アジアってそういうもんなんだよね。
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- 一同
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(笑)
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- 星野
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始業開始時間とか絶対来ないんですよね。前職は朝8時半スタートなんですけど、みんな、9時前後にゆるーく来て、そういう時間間隔でしたね。
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- 亜川
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知らぬ間にいて、知らぬ間にいなくなるとかね。
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- 星野
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定時になると、ちょっと前からそわそわし始めてぴったり帰るとか。ランチタイムは1時間半とってたり、その辺は、逆に彼らの文化に合わせてましたけど。日本に戻って大変だったのは、その時間感覚を戻すのが大変でしたね。9時に来なきゃいけないとか。
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- 英森
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ヨーロッパはどうだったですかね、時間はきっちり守れる印象でしたが。
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- 英田
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朝は割とちゃんとしてましたね。
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- 英森
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朝は8時半開始で、割ときっちり来てる人が多くて、朝6時ぐらいにきてた人もいましたね。
その代わり早く帰るんですけど、家が遠いのもあるので。日系企業との付き合いがあると、だいたいそういう感じできっちりしてますね。一方でパブに行くと、2時ぐらいからビール飲んでいる人らが出現し始める。
みんなビジネスマンなんですけど、聞くと金融系でニューヨーク時間で働いている人とかいましたね。だから、極端に朝型・夜型っていう人がいるのかもしれないけど、ただ飲んでるだけの人もいるかもしれない。
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- 亜川
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そういえば、ロンドンで金融系企業で働いていたインターンが、過労死で亡くなったっていうニュースを少し前に見た気がする。やっぱりインターンで入ると、「チャンスだ」って思って死ぬほど働いちゃうんだって。大手新聞でもニュース出てたよ。
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- 英森
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アメリカもそうかもしれないですけど、そういうやっぱりインターンて頑張りますよね。それやらないと、仕事がとれないし夢中で働きますよね。IIJ Europeでインターンで来てて、現地採用になった女性は、「インターンでも給料が出る」って友達に言ったら、「お金がもらえるなんてすごいね」って言われたらしいですけど。
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- 中田
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海外にいたとき携帯持ってたと思うんですけど、仕事用の携帯と、プライベートと両方持ってたんですか?それとも1台?
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- 英田/英森
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仕事用だけですね。
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- 中田
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そうですよね。私も。
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- 米倉
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私は両方持ってました。
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- 星野
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私も自分用と、会社用2台でした。
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- 中田
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中国では、携帯1台で、プライベートも仕事もそれを使ってたんです。で、仲のいいお客さんとかから夜も電話がかかってくるんですよ。じゃ、これは、仕事の電話なのか、飲みの誘いなのかわからない。週末も含めて。悩みましたね、出るかどうか。
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- 英森
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そういう境界があんまりなくなりますよね。
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- 星野
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確かに。SMSとか余裕で来ますからね。
米倉さん、他に何か苦労したことありますか?
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- 米倉
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対お客さんで苦労するっていうよりは、いろいろあっておもしろかったですよ。例えば、すごくおもしろかったのは、ある日本の都市銀行で、年に1回セキュリティのセミナーをやらなきゃいけなくて、「ちょっと何か講義してくれませんか」ってお客さんから頼まれて、社員相手に1時間でセミナーをやるとか。要はその会社に対して何でも屋さんになるんですよね、それはおもしろいです。困ったのは、対お客さんというよりは社内。多分これは現地法人特有の事情なんだろうけど、エンジニアが少ないから、この仕事がやりたい、お客さんはやりたいって言ってるから提案したいのに、リソースがないからできないといって社内からストップがかかることがあって、困りましたね。
あと、社員が「自分はここまでしかやりません」っていう線引きをしっかり引いてて、そこを超える話をすると「お給料上げてくれないならやりません」みたいに結構はっきり言うんですよ。日本人ですけど、現地採用でアメリカ在住歴が長くなると、やっぱり自分のテリトリーは守って、「私はこのお給料でこの範囲までやる、それ以上のことはできません」って。
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- 星野
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そんな人いましたね。
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- 英森
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現地に住んで長い人とか、あとはその人のパートナーが現地人だったりすると、考え方が現地風になっているとか、ありますね。
さっき残業の話が出てたと思うんですけど、残業って現地で普通なのか、さーっと帰っちゃって、定時後に働いているのは日本人たちだけなのか、どういう感じだったんですか。
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- 英森
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ヨーロッパだと日本人だけかな。みんな、定時でぴったり帰ります。
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- 独楽田
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そうですよね。
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- 英森
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ちょっと早めにこう出て、扉から出る瞬間に定時って。定時3分ぐらい前から荷造りし始めて。
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- 亜川
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昔の日本のOLみたい。20分前から化粧し始める人、昔いたなあ。
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- 星野
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そわそわして、案件もうこれ以上振らないでくださいみたいな感の、オーラを出すんですよ。特に金曜日。
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- 英森
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基本、残るのは日本人ですけど、プロジェクトでメインの担当になってると、責任を感じて残ってる人とかいますけど、絶対残らないっていう人もまあ多いですね。
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- 亜川
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でもまあ家で仕事してるんじゃないの。家に早く帰って家族とご飯食べて、夜にメールがバンバン来てたよ。
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- 英森
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やってる雰囲気はなかったです。
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- 英田
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ないよね。
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- 一同
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(笑)
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- 英森
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「これ、明日締切ってわかってる?」って言ったら「わかってる」って。「これ明日できるの」っていったら、「I hope so」とか、「hope」じゃないだろ。
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- 一同
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(笑)
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- 英森
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「家に帰ってやるんだ」みたいなこと言って、夜10時ぐらいに1回だけメールが来たと思ったら音沙汰なくなって、寝てたみたいな事もあって。
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- 星野
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あと、わからないと思ったら、放置する人いますよね。納期過ぎてもノーレスで回答来なくて、よくよく話していくと、「それどういう意味?」って聞かれて、「じゃあ早く聞いてよ」って事がよくありました。
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- 亜川
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それ、よくあったね。
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- 英森
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中国はみんな残って働いたりするんですか。
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- 中田
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あんまり残業しないですね。家族が大切なので、中国も、結構さくっと帰りますね。ただ、家から結構サポートしてくれたことはあります。前職が米国の会社だったので、家から仕事をする、米国中心のテレビ会議や電話会議に出るとかっていう文化に慣れていたので。
だからかもしれないです。残業はあまりしないですね。あと、一緒に帰り軽く一杯行こうみたいなのもなかったですね。基本的に。
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- 英田
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家族でご飯を食べるからですか?
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- 中田
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家族のほうが大切なので、プライベートまで削ってまで、会社の人と飲みに行かないスタンスですね。
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- 星野
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シンガポールも一緒ですね、似てます。
ドイツ人はどうでしょうか?
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- 独楽田
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ドイツは、残業はまずなかったですね。ほんとに大きいトラブルがあれば残りますけど、5時ぐらいになると、作業もう明日でいいから帰ってっていう感じでお客さんから言われて、逆に作業ができないとか。
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- 米倉
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ニューヨークは、お客さんが大体駐在員なので、だいたい遅くまで仕事してましたね。
でもおもしろかったのは、最初、ニューヨークに赴任していた人が、途中でLAに行っちゃったんですよね。西海岸に行った時に会ったら、ちょっと緩い雰囲気になって人が変わってたんですよ。
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- 亜川
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トラブルがあって西海岸の本社行かなきゃいけないときに、最初は気が立ってるけど、だんだん騒がしいところからシリコンバレーまで行っちゃうと、「もうなんか怒ってらんないから、ジョギングしようかな」っていう雰囲気に変わっちゃうんですよね。
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- 一同
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(笑)
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- 米倉
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ほんとに人が変わってしまって、一緒の人なのかなってちょっと疑いましたけど。
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- 亜川
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寒いほうがね パリっとなんかするような気がしますね。
(次回に続く)