パネルディスカッション:中国ビジネスでの成功の秘訣
最終回:中国で成功を掴むために
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2017/03/27
巨大市場である中国において、ビジネスを成功に導く秘訣とは何でしょうか。
2016年6月8日 弊社主催「中国クラウドソリューションセミナー」において中国で活躍する4名を迎えてパネルディスカッションを行い、中国ビジネスでの成功の秘訣を赤裸々に語っていただきました。最終回では中国で成功するためのアドバイスを紹介します。
中国で成功するためには:中国で活躍する4名が指南
IIJ:
中国でビジネスを成功させるためのアドバイスを皆様から一言ずつお願いいたします。
中国語のスマホに定番アプリ
山谷:
規制、土地バブル、債権回収、労働法と、中国では何もかもが数限りなくリスクだと言えます。その中でもIT関連に限定すると、一番大きなリスクは通信の制限です。中国では今、Facebook・Google・LINE (中国国外にVPN接続をすることで使えるようになるという例外を除くと)は中国国内では全く見ることができません。それでも中国の方々が困らないのは、それぞれの代替サービスがあるからです。Facebookと同様の機能をもつサービスは微博(ウェイボー)、Googleと同様なのは百度(バイドゥ)、LINEに代わるのはWeChat/微信(ウェイシン)です。中国ではみなこれらを使っています。中国政府はなぜネットサービスを制限するのか、いろいろ理由はありますが、中国当局としては複数の人が集まる場を「監視しないといけない」ということであり、それがネット上でも起きているのです。たとえばWeChatで10人以上がメンバーになっているチャットグループは「監視」されます。米国企業や日本企業が中国政府からの「監視」を受け入れられなければ、それまでにどれだけユーザーがいたとしてもサービスは遮断されます。いったん政府の方針が変わり法令が制定されると、それを変えることは容易ではありません。こういった点が最も大きなリスクだと思います。
人と物の「つなぎの部分」を担う
藤田:
アドバイスになるかわかりませんが、中国に赴任して一番びっくりしたことをお話しします。私はIT関連の記者でしたので、日本のITは進んでいると思って中国に行ったのですが、中国の方からすると「率直に言って、日本にITってあるんですか?」というくらいの感覚で日本とITが結びついていません。中国の感覚ではITはアメリカであって、日本ではない。特にスマホのアプリや一般的なITは、中国は進んでいると中国の方は思っています。実際に上海に1年住んでみて、ソフトウエアやソフトウエアのバックヤードに関しては日本よりも進んでいる部分がかなりあることがわかりました。銀行のシステム、配車システム、デリバリシステム、どれをとっても、もう全部アプリで完結します。電子マネーに至ってはものすごい発達です。昨年、北京から日本に観光に来た中国人の方へ、新幹線代20万円ほどを立て替えたのですが、なんとWeChatの電子マネーで戻ってきました。電子マネーでやりとりする金額として20万円は大きいと思いますが、中国では当たり前のように流通しています。
逆に中国が日本に劣る部分は、人や物の「つなぎの部分」だと思います。例えば、タクシーの配車サービスは進んでいますが、タクシー自体やタクシーに搭載されているプリンタはボロボロです。銀行システムはすごいですが、ATMはボロボロです。日本の強さは、人と人との接点やサービスだと思います。今後、IT関連ビジネスでもトータルでの日本らしさを出せるものができれば、中国市場で十分通用すると思います。
パートナーを見極める
彭:
日本企業が中国でITサービス、ITプロバイダ、あるいはパートナーを探すときには、主に4つの点を見極めるべきです。
1つ目は、ITプロバイダ、あるいはパートナーの総合能力の見極めです。2つ目は、パートナーのサービス保障能力の見極めです。最初のサービスレベルがその後どのくらい継続的に提供し続けられるのかが大切です。3つ目はコスト意識です。中国に進出する際には、財務負荷やリスクを考えて、レンタルやアウトソーシングサービス、クラウドサービスの活用を視野に入れて検討することが肝要です。最後に、そのパートナーが御社の業界に対する専門知識をどれぐらい持っているかが大事です。中国は業界により商習慣が大きく異なるため、専門知識を有していることは有利になります。
本業のさらなる発展を牽引するITを
李:
私の担当している企業のCTOが「ITは本業をサポートするものではなく、これからの時代、本業のさらなる発展を牽引する求心力だ」とおっしゃっていました。2000年前後では、ERPやCRMといったITシステムの導入があり、IT改善=経営改善であったのに、その後10年間にはパラダイムシフトは起こらず、ITがコストと思われているきらいがあります。私達のような日系企業が中国に進出し、IoTやインダストリー4.0をきっかけに、企業の根幹に関わるITの新たな活用方法を模索し、作り上げていければいいなと思います。
本パネルディスカッションで語られた、リアルな中国ビジネスの実情や成功のためのアドバイスが、少しでも皆様の今後の中国ビジネスのヒントになれば幸いです。(IIJ)
- 第1回:中国で成功している企業とその理由
- 第2回:中国のビジネスリスクと回避策
- 第3回:中国で成功を掴むために