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株式会社インターネットイニシアティブ 代表取締役会長 鈴木幸一
20年も経てば、どんな人間でも変わるに決まっている。もうすぐ配属が始まる新入社員だって20年後は40代になり、今は優しそうで、なんだか頼りなげな若者も、会社を背負っていく人間になるのだから。
このところ、20年前に戻ったように海外出張が重なっている。20年前と言えば、会社が一応軌道に乗り始め、次の段階に進めるようになった頃である。アジアでインターネットのバックボーンをつくって、とりあえず、米国、欧州、アジアの3つのエリアを対等な三極構造にしようと、毎週のようにアジアを駆け巡り、宣教師のような心境でアジアの電話会社を説得して歩く一方、米国や欧州の電話会社とネットワークの連携話を進めながら、シリコンバレーの新しい企業を訪ね、東海岸の金融機関と将来のリスティングなどの話を聞いていた。日本にいるのは1年の3分の1で、ほぼフライト上がベッドといった生活をしていた。よく働いたというか、欧米に後れをとっていた日本のインターネットの世界で、早くキャッチアップをしないといけないとばかり、なにかに取りつかれたように動き回っていた。
4月になってから、欧州、東欧、中央アジア、アジア各国と毎週末、成田か羽田を発って、週の後半、東京に戻るという生活が続いて、ふと昔のことを思い出したりしたのである。当時は40代も半ば過ぎだったわけで、ホテルで目覚めると、まず確認するのは、今、どこにいるのかということだった。昔に比べると、自分ではずいぶん分別のある行動になった気がするのだが、同世代の友人からは、「まだそんな生活をしているの?いつまでも若くはないのだから」と揶揄されたり、「いい加減にしたら」と親切な忠告を受ける。しかし、生来の貧乏根性と、もの好きというか好奇心は収まることがないようだ。
なにより、若い頃から付き合ってきたインターネットという大きな技術革新を考えるたびに、その進展はまだまだ序章であり、オペラで言えば、序曲が終わって第一幕が上がったばかりという気がする。インターネットがあらゆる仕組みを変えてしまうという意味では、ようやくその仕組みの方向が垣間見えてきた段階に過ぎないのである。
6月は、新入社員が配属された部署で徐々に仕事を始める時期である。社会人になって1年も経つと、表情がまったく変わってくる。将来の成長を考えて、IIJではここ数年、新卒社員の採用を増やし、100人を優に超すようになった。インターネットという技術革新のなかで、Eコマースの事業だけが拡大・発展する助走の時期から、本格的な展開が始まり、あらゆる仕組みを変えていく時期になったという認識からすると、技術開発、サービス開発、営業、サービスと全ての部門で多くの若い才能が必要になる。そうした若い才能が、過去20年以上にわたって日本におけるインターネットのイニシアティブをとり続けてきたIIJの将来を担っていくことは言うまでもない。
20年を経て、なお同じような行動を続けていられるのも、インターネットという技術革新がそれだけ巨大であり、若い人の才能の開花を見る楽しみがあるからだろうと思っている。
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