川向氏
実は働き方改革の一環として、セキュアなリモートアクセス環境の実現を目指し、iPhone導入以前からIIJフレックスモビリティサービス/ZTNAの検証を進めていました。
その後、iPhoneを全社導入することが決まり、デバイス管理のためにMicrosoft Intuneを導入することにしました。IIJフレックスモビリティサービス/ZTNAとMicrosoft Intuneを組み合わせることで「強制VPN」が可能になり、高いセキュリティを兼ね備えたテレワーク環境を構築できるからです。iPhoneからの通信はすべて当社管理下のVPN経由になるため、不正アクセスを強固に防止できます。接続のためのユーザ操作も不要なので、ユーザはストレスなく利用できます。
坂根氏
導入台数は全部で1,200台。一台一台にリモートアクセスやIntuneの設定が必要です。この負担は大きいので、IIJにキッティングもお願いすることにしました。
導入は段階的に進めましたが、納期に遅れることはなく、スムーズに導入展開できました。端末が届いたらすぐに使い始められるので、ユーザにも好評でした。
桧垣氏
従来のメール環境はオンプレミスで、iPhoneでは利用できませんでした。ユーザからは、メールもiPhoneで利用できるようにしてほしいという要望が上がっていました。きっかけはメールの利用でしたが、DXを推進するためには業務基盤やコミュニケーション基盤のデジタル化も必要です。そこで2023年度の下期からMicrosoft 365を導入しました。
川向氏
IIJにはiPhoneやIIJフレックスモビリティサービス/ZTNAの導入をお願いしており、当社が目指しているデジタル化にも理解いただいています。Microsoft 365の導入実績も豊富で、ネットワークをはじめとする製品・サービスのポートフォリオも幅広い。IIJに依頼するのは自然な流れでした。
実際、Microsoft 365の接続用に「IIJ Smart HUB」も導入しました。これにより、当社とMicrosoft 365のクラウド環境をダイレクト接続でつなぎ、会社のポリシーに沿ったセキュアな運用を実現できました。
荒巻氏
当社は電力設備という極めて重要な社会インフラの建設やメンテナンスを担っています。システムや情報の保全には厳格なポリシーを策定し、その順守も徹底しています。IIJは当社の事業を深く理解し、特にネットワークに関してセキュリティを最重視した提案をしてくれました。
坂根氏
大きく変わったのは、電力設備の建設やメンテナンスを担うフィールドワークです。以前はガラケーで管理部門と電話で確認しながら現場作業を進めていました。現場をデジカメで撮影し、オフィスに戻ってから写真や作業内容などを管理システムに入力する流れです。今はそれらの作業のほとんどを現場で行えます。
中電プラント 石井俊充氏
現場の図面はiPhoneで表示できるので、それを見ながら作業を進めていきます。管理システムもテレワークに対応できるようにしたので、作業の進捗や報告もその場でiPhoneから入力できます。施工確認の写真もiPhoneのカメラで撮影し、その場でアップロードできます。
コミュニケーションの取り方も大きく変わりました。現場から管理部門に作業内容を確認する際、以前は電話によるやりとりでしたが、今は写真を共有しながらMicrosoft Teamsでやりとりしています。話がスムーズに進み、間違える心配もなく好評です。
作業によっては、以前の半分の時間で完了できるものもあり、生産性は大幅に向上しています。作業結果をシステムに入力するためにオフィスに戻る必要がなくなり、移動の手間と時間も削減されています。
川向氏
管理面のメリットも大きいですね。現場で使用するデジカメは台数が多く、SDカードも含めて管理が大変でしたが、今はiPhoneがあれば撮影が可能です。デジカメとSDカードは使わずに済む上、償却期間が来れば、資産管理の必要もなくなるので、棚卸しの手間も省けます。
荒巻氏
DX推進にはAIやクラウドといった新しい技術やサービスを積極的に取り入れていくことが重要です。一方でセキュリティも疎かにはできません。2つを両立するのが、私たちの目指すDXです。
今回構築した仕組みをベースに働き方改革をさらに推し進め、同時にデジタル技術の活用領域も拡大し、より大きな変革につなげていきたいです。IIJには今後もその実現に向けた提案とサポートを期待しています。
※ 本記事は2024年5月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
テレワーク環境と高いセキュリティの両立を模索
まず御社の事業概要を教えてください。
中電プラント 荒巻忠伸氏
当社は中国電力グループの一員として、水力・火力・原子力発電設備や受変電設備の建設・メンテナンス事業を展開しています。系統電力設備以外にも、民間企業の自家発電設備や受変電設備のメンテナンス、定検工事、緊急トラブルなどに対応するビジネスを展開し、幅広く電力設備の健全性の維持・向上に寄与しています。
長年にわたりエネルギー分野で培ってきた技術力と施工管理能力を活かし、近年は環境分野や産業プラント分野にも進出し、事業領域の拡大に取り組んでいます。
2024年2月1日に「DX推進宣言」を発表されました。どのような背景や狙いがあったのでしょうか。
中電プラント 桧垣充紀氏
スマートデバイスをはじめとするデジタル技術の活用による業務改革は、以前から進めていました。しかし、変化し続ける時代の中で、次世代でも存在感を示せる「百年企業」を目指すためには部門を超えた協力体制を構築し、全社を挙げて迅速かつ強力にDXを推進する必要があります。DX推進宣言は、その本気度を社内外に示すために打ち出したものです。DXを推進する専任組織として、社長直轄の「DX推進プロジェクト」も設置しました。
全社DXは中長期的な取り組みです。まずは既存ITの活用をさらに促進するとともに、デジタル技術も積極的に活用し、業務のデジタル化や働き方改革を推進していきます。
DX推進宣言以前からスマートデバイスの業務利用を進めてきたとのことですが、従来の利用環境はどのような状況だったのですか。
中電プラント 坂根一史氏
会社支給のタブレットからリモートアクセスで接続するなどテレワークが可能な仕組みを整えていました。
その後、コロナ禍の際に在宅勤務できるようにパソコンにUSBドングルを接続し、閉域接続によるリモートアクセス環境を整えましたが、これも50アカウント程度で、利用できるのは各部3名ほどまででした。誰が、いつ在宅勤務するか、予定を組んでやりくりする状況でした。
その後、iPhoneを全社導入されました。
坂根氏
以前の会社支給の携帯電話はフィーチャーフォン、いわゆるガラケーでした。これをスマートデバイスに替えれば、音声通話だけでなく、リモートアクセスで様々なアプリも利用できます。これによって業務を効率化し、働き方改革を推進したいと考えました。iPhoneは段階的に導入を進め、2022年度中に全部で1,200台導入しました。
中電プラント 川向博之氏
一方でセキュリティの確保が重要な課題でした。当社は重要な社会インフラである電力設備の建設・メンテナンスを担う会社です。お客様情報や設備関連など、極めて重要な情報も数多く扱っています。そのため厳格なセキュリティポリシーと対策を実現し、ガバナンスも徹底しています。
しかしiPhoneを全社導入するとなると、リモートアクセスするユーザ数も一気に増えます。会社のポリシーに沿った、セキュアで高品質なリモートアクセス環境が必要でした。