北杜市 白倉氏
今回のシステム導入の課題の1つは、カメラなどを設置する現場の条件がかなり厳しいということでした。たとえば、大橋とその周囲は民家や街灯が少ないので、とても暗いです。そうした暗い場所でも、車や野生動物と区別して人だけを高精度に認識できるAIカメラが必要でした。
また、リモート監視や自動通報などの機能、氷点下を下回る冬の環境でも使用できること。更には、橋の中央までは電源を引いてこられないので、ソーラーパネルを用いた自立給電システムをつくる必要もありました。そこで複数のメーカーなどに問い合わせた結果、これらの条件の多くを満たせる企業は、IIJだけだったのです。
北杜市 白倉氏
今回のカメラなどの一連のシステムは現在、橋の中央と、橋の片方の入口の合計2ヵ所に設置しています。橋の中央に関しては、電源を引いてこられないので、ソーラーパネルの設置も必要でした。そうした作業も柔軟に、安全を考慮しながら対応していただけたと思っています。
北杜市 佐野氏
今回のシステム導入に先んじて、別の現場でデモを行いました。2月のとても寒い時期でしたが、野外で何度も動作確認をしていただきました。IIJは“職人さん”というか、技術者のこだわりをすごく感じましたし、とても細かい部分まで入念にチェックしていただいたと思っています。
北杜市 佐野氏
運用を開始して約半年ですが、すでに数件の事故を防げており、効果は出ています。また、自動通報のシステムがあることが周知されることで、夜間に橋に近付く人が減るという効果も期待しています。
北杜市 白倉氏
たとえば、今は夕方から早朝の時間帯で自動通報する仕組みにしていますが、日が長くなるとその時間帯でもかなり多くの人が来ます。そうすると、通報件数が増えすぎて、状況の把握ができなくなってしまいます。そのため、できれば「人の動きなどから事故が起こる兆候」を予測できるような技術があると、ありがたいですね。データが集まることで、統計上「橋の上で事故につながるような行動の傾向」などが分析できるようになれば、それも貴重な知見になると思います。
北杜市 佐野氏
カメラで検出された人の映像データは、担当者が静止画で確認しています。そのため、人がたくさん映っている場合、同一人物を追うことがかなり難しいという問題があります。そのため、カメラの画像だけでなく、映っている人の人数もカウントできる仕組みも今後は取り入れていきたいと思っています。
北杜市 白倉氏
現時点でカメラなどを設置したのは大橋の中央と片方の入口(駐車場がある側)だけです。できればもう片方の入口にも設置したいのですが、電源を簡単に引いてこられないので、何かいい方法を検討できればと思います。また、大橋のほかにも設置したい危険な場所がもう1ヵ所あるので、そちらも進めていきます。
北杜市 白倉氏
たとえば、不法投棄の防止などにつなげられるかもしれません。今回の取り組みは他の課とも共有していますので、今後横展開できる可能性は十分にあると思います。
北杜市 佐野氏
すでに横展開した例が1つあります。橋の中央部には人感センサー付きの音声スピーカーを取り付けています。観光客が来る日中には、観光PRのための言葉を発するようにしています。大橋は両サイドに富士山と八ヶ岳がきれいに見えるので、観光PRの場所として適しています。これは観光課の担当者に「いいアイデアはない?」とたずねることで、実現した例になります。まだまだ小さな一歩ですが、今回のシステムを色々な形で北杜市の住人や観光客のために役立てていきたいと思います。
夜間の人通りの少ない場所での事故を防ぐため、カメラの設置が急務となった
2023年11月から北杜市の山間地にAIカメラとセンサーを設置し、危険な場所への立入事故を未然に防ぐためのシステムを導入されました。導入の背景について教えてください。
北杜市役所 白倉充久氏
北杜市は山梨県の北西部に位置する、人口約45,000人の街です。山梨県で最も面積の大きい市(約600平方キロメートル)で、その4分の3が森林地帯です。豊かな自然に囲まれた地域ですが、夜間の人通りの少ない時間帯には、事故が起きることも少なくありません。
事故の多い場所の1つが観光名所としても有名な大橋です。大橋は、日中には八ヶ岳と南アルプス、富士山を見渡せる絶景スポットです。しかし、高さ100メートル、全長490メートルの巨大な橋であり、人通りの少ない夜間は事故が起きやすいのです。そのため2022年度から、危険な場所への立入事故を防ぐ取り組みとして、カメラなどの設置を検討することになりました。
導入したシステムについてお聞かせください。
北杜市役所 佐野友美氏
AIを搭載したネットワークカメラ、人感センサー付きのLEDライトや音声スピーカーなど、一連の機能が連動したシステムを導入しました。AIカメラは、観光客がいなくなる夕暮れ時から早朝の時間帯で人を検知し、その情報は無線ネットワークを介して専用のタブレットに送られます。タブレットは市役所と警察署でそれぞれ保有しており、人を検知した場合には警察も出動できるようになっています。また、人が近付くとライトが点灯したり、音声スピーカーで注意喚起したりすることができます。