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西尾市 様 西尾市 様

情報連携ツールで離島の医療・介護体制を改革
患者の健康管理に大きく貢献

導入前の背景

離島の患者の健康維持には医療と介護の情報連携が不可欠

西尾市には離島の佐久島があります。佐久島の医療や介護の状況はいかがでしょうか。

西尾市佐久島診療所 酒井貴央先生

佐久島には、約200人の住民がいて、その半数以上が65歳以上の高齢者です。医療体制としては佐久島診療所があり、私が院長として診療しています。一方で介護保険事業所は島内になく、医療従事者と介護従事者との情報の共有や連携が難しいことが課題としてありました。

酒井 貴央 氏
西尾市佐久島診療所 院長
酒井 貴央 氏

医療従事者と介護従事者の連携の必要性について聞かせてください。

酒井先生

患者さんの医療機関への行きやすさによって、病気をどう治すかの方向性が変わってしまう可能性があるからです。例えば私の前任地の豊田市には大規模な病院があり、大学病院と同等の治療を市内全域から車で数十分も移動すれば受けられました。一方で佐久島は毎日7往復の定期船が運行されていますが、本土の港から病院への移動にも時間がかかり、日帰りで通院するのは難しい状況です。高齢者にとって、気軽に病院に行って治療を受けることが難しいのです。佐久島で病気が重くなってしまうと、島では暮らせなくなってしまう可能性が高まるため、病気に最初に気付いたときにしっかり治すことが重要です。そのためにも、医療従事者と介護従事者が連携して、早い段階でいろいろな情報共有ができる仕組みが必要なのです。

これまで情報共有はどのようにしていたのでしょうか。

西尾市 健康福祉部 服部敦士氏

西尾市では介護事業者はすべて本土側にあります。ホームヘルパーの介護やリハビリなど、介護サービスを受ける場合には、介護事業者が本土から島に渡る必要があります。本土からの往復となり、佐久島の酒井先生との間の情報連携を密にするのは難しい環境です。西尾市でも在宅医療介護連携ツールとして「いげたネット」を構築していましたが、既存のツールはセキュリティが高い半面、利便性が低くてほとんど使われていないのが実態でした。

服部 敦士 氏
西尾市 健康福祉部 長寿課 在宅医療介護連携支援センター 主事
服部 敦士 氏

システムの更新について、どのような考えをお持ちでしたか。

服部氏

愛知県ではIIJの多職種連携プラットフォーム「IIJ電子@連絡帳サービス」を利用して、医療介護連携の仕組みを整えている自治体が多くあります。他自治体の成功事例に学ぶという考えや、他の自治体と共通のシステムを使うことにより県内で広域連携ができる可能性が高まることなどから、IIJ電子@連絡帳サービスの導入を検討していきました。

導入までの経緯と導入時の課題

ツールの利便性を高めて医療・介護の情報連携を推進

IIJ電子@連絡帳サービスの導入に向けて、どのような機能や性能を求めましたか。

服部氏

従来のツールは、VPN(仮想閉域網)接続が前提で、市が支給したタブレットでしか接続できないことから利便性に不満が出ていました。IIJ電子@連絡帳サービスは、利用者の手持ちのスマートフォンやタブレット、パソコンなどで利用できるので、不満の解消と利用率向上を目指しました。一方でIIJ電子@連絡帳サービスでは、電子証明書をデバイスにインストールした上でID・パスワード認証する接続の仕組みや、医療情報取り扱いのために各省庁の法令・医療情報関連などのガイドラインに適応したセキュリティを確保できる運用など、セキュリティ面の機能・性能も担保されていると判断しました。

IIJ電子@連絡帳サービスの運用開始の時期と、当初の利用状況を教えてください。

服部氏

2021年4月に導入し、運用を開始しました。西尾市内の医療・介護・保健・福祉等の在宅医療に関わる事業所などが多職種間で連携を図る目的で構築したものです。医師やホームヘルパーなど、現在の利用者は800人ほどです。とはいえ、当初は利用がなかなか進みませんでした。在宅医療介護連携ツールの「いげたネット」という愛称は、以前のシステムから引き継ぎました。そのため、「いげたネットは使いにくい」というマイナスイメージが強すぎて、システムを変えたことから説明しないといけませんでした。

どのように利用促進を図りましたか。

服部氏

医師会、薬剤師会、歯科医師会の三師会には、定期的に話をしていきました。医師でも、在宅医療との関連の深さによって関心の高さは違いますが、徐々に利用が広がっていきました。一方で、在宅医療に関係が深い介護保険事業所は、IIJ電子@連絡帳サービスにリプレース後のいげたネットの利用がかなり進んでいます。利用率は9割程度まで来ているのではないでしょうか。西尾市からの研修案内、情報発信などをIIJ電子@連絡帳サービス経由で提供するような取り組みを進め、利用促進を図った結果でもあります。IIJ電子@連絡帳サービスを実際に利用し始めてもらうと、特に介護保険事業所では情報連携が容易になることのメリットを感じてくれているようです。

利用イメージ

導入後の効果

情報連携を手軽に実現、要介護患者の健康管理に貢献

佐久島診療所の立場から、いげたネットがIIJ電子@連絡帳サービスにリプレースされたことをどう感じていますか。

酒井先生

従来のツールは、事実上は運用されていませんでしたから、電話とFAXに頼る状況でした。これでは情報は整理されておらず、優先順位も分かりません。紛失の恐れもあります。IIJ電子@連絡帳サービスでは、いくつかのスレッドを気付いたときに読み返せば、患者さんに対する介護従事者からの情報が目に入りますし、診療所での様子や治療の状況も共有できます。本土側の介護従事者とIIJ電子@連絡帳サービスだけで連絡が取れるので助かっています。

利用する患者数や、関わる関係者数の現状を教えてください。

酒井先生

佐久島の住民で、IIJ電子@連絡帳サービスで本土側の介護従事者と情報共有しているのは、10人ほどの患者さんです。ケアマネジャー、ホームヘルパー、作業療法士と、医師の私といった4人ほどが、1人の患者さんについて情報を書き込んでいます。佐久島診療所での投薬情報などがあれば、本土の病院の通院にホームヘルパーが付き添ったときに医師や薬剤師と情報を共有できます。患者さんの状態が変化して、適した介護方法が変わったようなときも、医師から情報を伝えられます。

医療と介護の情報連携にIIJ電子@連絡帳サービスはどのように役立っていますか。

酒井先生

例えば、往診はケアプランの見直しのタイミングとして重要なイベントです。「昨日、往診しました」といった情報が介護従事者側に伝わることで、ケアマネジャーが適切なケアプランの立案に役立てられるのです。医療的なイベントが起きたということは、ケアプランの上でどのような暮らしをしたいかの目標を変えるタイミングになるからです。みんなで容易に情報を確認し合えるIIJ電子@連絡帳サービスの評判が良いのは、こうしたケアプランの立案の仕方を知った上で使い勝手の良いサービスを提供しているからだと思います。

医療介護連携以外にもIIJ電子@連絡帳サービスを活用していますか。

服部氏

メインは患者さんの情報共有で、専門職同士の横のつながりを提供しています。一方で、患者さん以外の意見交換や情報共有でも使われています。ケアマネジャーの集まりなど職能団体ごとに掲示板を作ることで、自由に意見交換や情報交換ができるようになっています。また、物品のリユースを推進するプロジェクト「にしティー」にも活用しています。例えば、ケアマネジャーが利用者宅で洗濯機を必要としていることを登録したところ、不要になった洗濯機が提供されたというように、不要になったところから必要なところへ物品を届けるような情報の流通に使っています。患者の情報共有にいげたネットを使っていない専門職の方にも、にしティーによって利用を促進できています。

デジタル田園都市国家構想交付金により、IIJ電子@連絡帳サービスの「地域資源連携オプション」を導入されたと聞きました。

服部氏

通いの場などの地域資源の情報は、これまで別のツールを使ってネット上で公開していました。しかし、専門職の方などからすると、別のIDとパスワードで別々に利用するため使いづらい状況でした。一元化できれば利便性が高まり、コストも下がるとの判断です。

地域資源の情報はどのように活用していますか。

服部氏

通いの場などの社会資源が約300、高齢者にやさしい店舗が約900、登録されています。通いの場でのシニア向け体操などのイベントの情報や、高齢者送迎や商品配送無料などの施策をしている店舗の情報が掲載されています。専門職が見て、患者さんなどに自宅近くのイベントを勧めたり、お米や灯油など重い商品の配送についてアドバイスしたりすることで、より良い生活と健康維持に役立てられるようになってきました。

IIJ電子@連絡帳サービスへの今後の期待を教えてください。

酒井先生

IIJ電子@連絡帳サービスによって、患者さんの様々な状況がテキストベースで記録されるようになりました。将来的には、これらの文字情報を解析することで、新たな知見が得られればと考えています。例えば介護保険が適用になるサービスについて、IIJ電子@連絡帳サービスでのやりとりから現場のニーズを把握し、仮説を立てて検証していくというような用途です。地域のニーズを把握する質的研究のベースとして、佐久島や西尾市だけでなく、全国の地域医療の進展に貢献できる可能性を感じています。

導入したサービス・ソリューション

お客様プロフィール

西尾市
市役所所在地:愛知県西尾市寄住町下田22番地
市制施行:1953年12月15日
人口:17万338人(2023年8月1日現在)
職員数:1,700人(2023年4月1日現在)
2023年12月に市制70周年を迎える西尾市は、愛知県の中央を流れる矢作川流域の南端に位置し、南には三河湾を臨む。西三河南部地域の中核的な都市として自動車関連産業の発展とともに成長を続ける一方で、日本有数の生産量を誇る抹茶(てん茶)やカーネーション、養殖ウナギ、アサリなど農水産物の生産拠点としても発展している。三河湾に浮かぶ佐久島は人口約200人の離島で、「癒やしとアートの島」として知られている。

西尾市

※ 本記事は2023年7月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。

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