2015年4月にダイワサービスとの合併により新たなスタートを切った大和ライフネクスト。マンション、ビル・商業施設などの管理運営事業などを展開する。
なかでも全国約4,000棟の建物を管理するマンション管理事業は主力事業の1つだ。「お客様のマンションにフロントマネージャー(管理員)を配置し、受付業務、清掃、設備の保全・管理などのサービスを提供しています。フロントマネージャーには勤怠管理や日報の作成・提出の徹底を図り、日々の業務内容を記録しています」と同社の安阪明和氏は説明する。
しかし、管轄する全国約40ヵ所の拠点事務所との情報のやり取りは電話やFAXが主体。現場の業務が煩雑になる上、情報を集約する拠点事務所側の負担も大きい。「業務を効率化し高品質なサービスを提供するには、現場業務のIT化が必須の課題だったのです」と同社の植野正博氏は話す。
既に同社は本社・拠点事務所において仮想アプリケーション(SBC※)環境を実現し、効率的で安全な業務環境を整えている。「各マンションもこのSBCを利用することで、情報の集約や共有が容易になります。ナレッジの蓄積と活用も加速し、管理組合や入居者向けに付加価値の高いサービス提供が可能になります」と安阪氏は期待を込める。
そのためには各マンションのネットワーク整備が欠かせない。「しかし、機器の設定や回線の手配だけでも大変な手間。運用管理の負担も考えなければならない。それを全マンションに対して行うのは至難の業です」と植野氏は話す。
解決策として同社が選択したのが「IIJ Omnibusサービス」である。これはルータやファイアウォール、セキュリティなどネットワーク環境に求められる様々な機器の機能をクラウド上でソフトウェアとして提供するサービス。「コンフィグ情報もIIJ Omnibus側から自動で展開されるため、各種の設定は不要。専用サービスアダプタ(SA)を設置するだけで、多数のマンションをつなぐWANを容易に構築できます」と植野氏は選定の理由を述べる。
利用する場所ごとに機器を所有する必要がない上、24時間365日体制でネットワークを監視し、トラブルがあれば即座に対応する。SAの保守やアップデートもIIJが一括してサポートを行う。「ITに精通した人材のいない現場でも安心して利用できます」(植野氏)。
各マンションではマンションに関係する情報などを管理しており、情報保護は最重要事項である。「その点、IIJ Omnibusなら閉域ネットワークで自社データセンターのSBC環境にアクセスできるため、セキュリティリスクも大幅に低減できます」と安阪氏は続ける。
モバイル通信の安定性の高さも評価した。SBCは大量のデータをやり取りするケースは少ない一方、業務を支える基盤であるため、高い安定性が求められる。しかし、月間高速データ通信量に制限があると、一定の通信量以上の利用が制限されたり、追加コストが必要になる。「IIJ Omnibusは最大5Mbpsの回線をデータ通信量の制限なしに利用できます。安定性を重視する当社のニーズにマッチしたサービス品質も大きな決め手になりました」と安阪氏は述べる。
その一方、懸念されたのが、自社データセンターへのトラフィックの集中だ。各マンションのPCはWindowsアップデート、エンドポイントセキュリティの更新などが必要になる。この通信が既存サーバに集中すると、処理負荷の増大を招きかねない。「この懸念に対し、IIJはIIJ Omnibusから直接インターネットにつながるルートを整備し、各種のアップデート処理はIIJ Omnibus経由で行う仕組みを提案してくれました。これにより、トラフィックの分散制御が可能になり、自社サーバの安定運用を確保できます」(植野氏)。
同社はIIJ Omnibusの導入を段階的に進めている。第1弾として、2016年3月に500ヵ所のマンションに対する導入を実施。各マンションのアクセス回線にはIIJの法人向けモバイルサービス「IIJモバイルサービス」を活用した。回線工事などが不要で、導入作業や管理の手間を軽減できると考えたからだ。
「驚いたのはその展開スピードの速さです。IIJ Omnibus側の設定と各マンションへの専用SAの手配はわずか4日で完了し、500ヵ所をつなぐWANの稼働を1ヵ月未満で実現できました。通常であれば、事前調査、回線の手配、工事、導通試験などを含め最低でも半年近くはかかるはずです」と植野氏は話す。
コストメリットも大きい。「IIJ OmnibusとIIJモバイルを活用したことで、各マンションを有線ブロードバンド回線でつなぐ他社サービスに比べ、コストは半分に抑えられました。運用管理の手間もかからないので、トータルコストは安価に収まっています」と安阪氏は満足感を示す。
今後は残るマンションを対象に、順次IIJ Omnibusサービスを導入していく。同サービスは足回り回線に依存しないので、一部の電波状態が悪いマンションには有線ブロードバンドを適用し、全マンションをつなぐWANの整備を進めていく予定だ。
各マンションがネットワークにつながれば、業務のIT化が加速し、様々な可能性が広がる。「将来的にはIoTを活用した設備管理などにも取り組みたい。新しいサービスの実現に向けて、IIJには有意義な提案を期待しています」と話す安阪氏。大和ライフネクストは全国約4,000ヵ所のお客様との接点でのネットワーク化を推し進めるとともに、業務の効率化と付加価値の向上を図り、お客様の「より豊かな生活」の実現を強力にサポートしていく。
※ 本記事は2016年6月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
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