株式会社フジテレビジョン 様
インターネットゲートウェイを「IIJ Omnibus」でクラウド化
通信の安定化と運用負荷軽減を実現
フジテレビジョン(以下、フジテレビ)は、ネットワークインフラの刷新を2018年から検討してきた。ネットワークインフラを自社所有からクラウドサービスの利用へと方向転換し、なおかつインターネットアクセスを一元化するためだ。性能やセキュリティを確保しつつ、運用をアウトソーシングして社内リソースを有効活用するため、複数社の提案の中から「IIJ
Omnibusサービス」の導入に踏み切った。
導入前の課題
クラウド利用の広がりにネットワークもクラウド対応が急務に
フジテレビの最近の取り組みについて教えてください。
フジテレビジョン 和泉正憲氏
フジテレビは関東広域で地上波放送を担う民間放送事業者です。CS放送や、グループ会社のBSフジもあり、多くの番組を提供しています。最近では、インターネット動画配信サービスのFOD、フジテレビ系列28局のデジタルニュースメディア「FNNプライムオンライン」などでインターネット配信にも力を入れています。
イベント事業にも力を入れていて、従来型のリアルなイベントだけでなく、リアル+配信、リアル+バーチャルなど、テレビ局ならではのコンテンツ力を生かしたイベントを実施しています。
放送局でも、インターネットとの融合が深まっているのですね。そうした中で、ネットワークインフラに関しての課題があったと聞きました。
フジミック 清水秀人氏
従来のフジテレビのネットワークは、古くからのレガシーシステムで運用されていました。社内にネットワーク機器を設置し、ファイアウォールを介してプロバイダーにつながる構成です。しかし、サーバやサービスのクラウド化が進み、ネットワークもクラウド化を進める方向に舵を切ることになりました。
和泉氏
ネットワークのリソースの運用を自社でどこまで担っていくのか、考えなければならないときが来ていました。古くはすべてのネットワーク機器を自社で購入し運用していましたが、5年ほど前からIIJにサービスという形で専用機材の調達と運用を任せていました。しかしそれでも機材の減価償却の関係で3~4年の最低利用期間が発生しますし、更新も必要です。
そうした中で、インターネットゲートウェイやセキュリティゲートウェイなどがクラウドサービスで提供される時代が来て、ネットワークのクラウド化を真剣に考えることになったのです。ネットワークやセキュリティに詳しい人材を確保し続ける手間とコストをかけるより、アウトソーシングして専門家に任せるメリットを選びました。
セキュリティの観点からも、クラウド化への期待があったのでしょうか。
清水氏
ネットワークをクラウド化して、インターネットゲートウェイを介した通信に集約することで、セキュリティ面での効果も期待しました。最近ではローカルブレイクアウトによりクラウドサービスとの通信をインターネットにオフロードする方向性が解として示されることが多いのですが、システム部門が把握していないままに外部サービスを利用するシャドーITなどを防ぐためにもインターネットとの通信を一元化する方向で検討しました。
選定の決め手
コストメリットや運用/セキュリティポリシーの一元化に期待
今回のインターネットゲートウェイの更新の以前から、IIJとはお付き合いがあったのですね。
和泉氏
IIJにはインターネット系のネットワークを長期にわたり提供してもらっています。10年、20年といった単位です。ネットワーク機器のホスティングもお願いしていますし、Webセキュリティサービスの「IIJセキュアWebゲートウェイサービス」も利用していました。ですので、IIJの技術力やサポート力については十分に知っていました。
インターネットゲートウェイの更新に当たって、どのようなステップで検討を進めましたか。
和泉氏
2018年の夏頃から検討を始めました。そのときはIIJを含めて数社のインターネットベンダーに話を聞きました。IIJは「IIJ Omnibusサービス」によってインターネットゲートウェイを一本化するソリューションの提案で、コストメリットや運用/セキュリティポリシーの一元化が期待できました。他のベンダーもセキュアなインターネットゲートウェイの提供はできると説明してくれましたが、IIJ以外はすべて同じ海外製のソリューションを提示してきました。自分たちで何かを作っていこう、変えていこうという姿勢はIIJにしか見られないものでした。その上でIIJは疑問点などについても親身になって回答してくれました。IIJに正式に発注したのは2020年4月のことです。
本番稼働を2020年12月に迎えました。それまでの構築の苦労はありましたか。
フジミック 佐藤正樹氏
本番稼働に近くなってスピードが出ないということがあったのですが、IIJがとても協力してくれたことでスムーズに原因解明ができ、助かりました。それ以外には大きなトラブルはなかったです。コロナ禍ということでIIJの担当者と直接会ったのは1回だけだったのですが、オンラインで毎週のように連絡を取り合って、問題なくプロジェクトを進められました。
導入後の効果
通信が安定化し、運用負荷も軽減
移行後のネットワーク構成を教えてください。
和泉氏
フジテレビ本社からはIIJ Omnibusに接続し、「IIJクラウドプロキシサービス」を使って通信を振り分けます。振り分け先としては、WebセキュリティのIIJ セキュアWebゲートウェイを介したインターネット接続(1Gbps)と、「IIJクラウドエクスチェンジサービス for MicrosoftAzure Peering Service」を使ったMicrosoft 365とのダイレクト接続(400Mbps)です。外部への通信はIIJ Omnibusに一本化できました。
効果として実感していることはありますか。
佐藤氏
移行後もトラブルなく安定して運用できていることが一番の効果だと感じています。IIJクラウドエクスチェンジサービスによるMicrosoft 365とのダイレクト接続の効果で、かなり通信がオフロードされてインターネット接続側の負荷が軽減したことも挙げられます。Microsoft365の通信が以前よりさらにスムーズになったという声も上がっています。
和泉氏
セキュリティ面では、IIJ Omnibus移行後も、従来と同等のセキュリティレベルの維持が要件でした。移行前からIIJセキュアWebゲートウェイを使っていて、IIJ Omnibus移行後も同じ構成で運用できていることで要件をクリアしています。
佐藤氏
以前はコンピュータルームにプロキシサーバなどのネットワーク機器がいくつも置いてありましたが、リプレース後はルータだけになり、その先はIIJのサービスで運用してもらっています。ルータだけ監視していればすべてが判断できる状況になり、運用の手間が非常に省けました。
コスト面での評価はいかがでしょうか。
和泉氏
これまでもインターネット接続回線にはIIJの回線を利用していたのですが、今回はIIJ Omnibusの利用、IIJクラウドエクスチェンジサービスの導入といった付加価値を付けても従来同等のコストで済んでいます。実は、外出先から社内システムにアクセスする従業員に向けて、リモートアクセスサービスの「IIJフレックスモビリティサービス」も導入して試験運用を始めているのですが、それも含んで同等のコストなので、コスト面では非常にメリットを感じているところです。
リモートアクセスについても更新を検討なさっているのですね。
和泉氏
社外からのパソコン利用者のセキュリティについては大きな課題でした。セキュリティソフトはクライアントパソコンに導入すればいいのですが、通信そのものはパソコンから出ていってしまったら制御できません。営業放送システムという放送用のデータベースがあり、ロケ先やイベント会場などからのアクセスが少なくありません。現状はVPN経由での利用しか許可していませんが、今後はIIJフレックスモビリティサービスを本格利用して、IIJ Omnibus経由でリモートアクセスユーザの通信を収容していく方向で検討を進めています。
ネットワークインフラの運用や構築の今後についてお聞かせください。
清水氏
IIJ Omnibusの環境がようやく整ったところですが、今後はさらにクラウドサービスなどとの接続が求められるでしょう。そうしたときにIIJから有効な使い方やサービスなどを教えてもらいたいと思います。
佐藤氏
そうですね。IIJ Omnibusの活用の幅を広げて、社内のネットワーク利用を便利にしていきたいです。
和泉氏
コロナ禍によって、どこでも仕事をしなければならない事態に直面し、ゼロトラストが宿命になりました。まずは、自社のシステムを守りながら利便性の高いネットワークを提供することから進め、将来構想であるグループ会社の一元的なセキュリティ担保に向けて歩みを進めていきたいと思います。
将来的には、IIJがリモートアクセスも含めたゼロトラストゲートウェイのようなものを提供して一元化できることに期待しています。
導入したサービス・ソリューション
お客様プロフィール
株式会社フジテレビジョン
本社:東京都港区台場二丁目4番8号
放送開始:1959年3月1日
資本金:88億円
売上高:2,555億2,300万円(2020年3月期)
従業員数:1,314名
株式会社フジテレビジョン
※ 本記事は2021年4月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。