FXサービスを柱に事業展開するヒロセ通商。同社の主力FXサービスである「LION FX」は、米ドル/円での業界最狭水準のスプレッド、1,000通貨単位取引の追加コストゼロなどによって、2014年度オリコン顧客満足度ランキングのFX部門で総合第1位を獲得するなど、ユーザから高い評価を得ている。
従来、同サービスのシステムは既存ベンダーで運用していた。だが、口座数・取引数が年々増加するに従い、拡張性の問題が顕在化していたのだ。
「取引集中時でも短時間での約定を担保するなど、システムの性能の高さは顧客満足度、及び当社への信用に直結する大きなテーマです。しかし、既存システムは性能面で既に限界を迎えつつあり、増え続ける口座数・取引数への対応が困難でした。性能をアップするには、サーバやデータベースの入れ替えなど、多くのコストが必要でした」と同社の衣川貴裕氏は振り返る。
なかでも性能面でこだわっているのが約定スピードである。「現状でも約定スピードは十分なレベルにありましたが、サービス品質と顧客満足度の更なる向上のために、同業他社の追随を許さないレベルまで速めたいと考えていました」と衣川氏は語る。
一方、同社は海外展開の一環として、英国に100%子会社のヒロセフィナンシャルUKを設立し、バイナリーオプションサービス「LION BO」などを英国で提供している。そのシステム構築時には、インフラが課題となった。
「英国の金融規制によって、現地にシステムを置く必要があったのです。そういう背景もあり、我々が考えるサービス品質を英国現地で実現できるインフラを求めていました」(衣川氏)
これらの課題を解決するために同社が選んだのがIIJのソリューションである。LION FXのシステムには、ASP型FXプラットフォーム「IIJ Raptorサービス」を採用。オーダーメイド型クラウドサービス「IIJ GIOコンポーネントサービス」「IIJ広域ネットワークサービス」と組み合わせ、インフラごとリプレースした。
「IIJ Raptorサービスの性能・機能と共に、インフラをIIJ自身が保有・運用している点も魅力でした。リソース追加がよりタイムリーに行えるなど、高い拡張性を望めます。運用も自社で行っているのもポイントでした」と衣川氏は語る。
併せて、10社以上のFXサービスで24時間365日の安定運用を続けてきたIIJ Raptorサービスの実績の高さも、衣川氏は採用理由に挙げる。また、クラウドサービスだけでなくFXサービスとしてのISMS対応や、SSAE16 Type2報告書受領など、金融向けシステムとしてのトータルのソリューション品質も採用を後押しした。
英国向けサービスのインフラには、日本と同様の高品質なサーバ環境を欧州市場で提供するクラウドサービス「IIJ GIO EUサービス」を採用。「英国のデータセンター内のサーバを、日本のスタッフによって日本から運用できるところが安心できますね」と衣川氏は話す。
そして、インフラからアプリケーション、国内外を含め、ワンストップで提供されることも衣川氏は高く評価する。「特に障害発生時に違いが現れます。今までは、障害の切り分けや対応などに、どうしても時間を要していました。IIJなら一元的に素早く対応してくれるので、非常に助かります」(衣川氏)。
LION FXのサービスは2013年12月にリリースされた。そのなかでIIJのサービスは、以前の各種課題の解決に貢献している。
システムの拡張性については、「ASP型のFXプラットフォームとクラウド型のインフラなので、口座数や取引数に応じて、柔軟にリソースを追加できるようになりました。それに、必要なときに必要な分だけリソースを追加すればよいので、コストも最小限で済みます」と衣川氏は強調する。
性能に関しては、Oracle Coherenceを採用したIIJ Raptorサービスの最新アーキテクチャによって、約定スピードの大幅な向上を実現した。
「約定スピードは従来の35msecから、平均で4msecになり約1/9に短縮できました。これは業界最高水準の約定スピードであり、顧客満足度の更なる向上に貢献できました」(衣川氏)
英国向けサービスにおいては、IIJ GIO EUサービスによって、自社の求めるインフラを整備。「インフラの"日本品質"での運用保守が英国現地でも実現できるようになりました。これは我々のサービスを海外で展開する上で、大きな強みとなるでしょう」と衣川氏は語る。
ヒロセ通商は今後、FXシステムの更なる最適化に取り組む。「更なる約定スピードの向上を目指し、サービス品質、顧客満足度を今まで以上に向上したいと考えています」と構想の一部を述べる同社の石原愛氏。ほかにも、英国向けシステムをIIJ Raptorサービスで再構築したり、コンサルティングも含めたIIJの支援を受けつつ、ディーリング収益向上にも着手したりするなど、さまざまな角度からビジネス強化を図っていく。
※ 本記事は2014年4月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。