佃氏
インターネットで検索していく中で、GDPR対応のアウトソーシングサービスを紹介するページに「DPO」の文字を見つけました。それがIIJのページでした。まずは問い合わせをしてみることにしました。2020年12月のことです。ネットでDPOの情報が見つかったのがIIJだけだったので、IIJがダメだったらまた考えよう、まずは聞いてみようという思いで問い合わせしたことを覚えています。
佃氏
まずメールで問い合わせをしたところ、受付の方からお電話をいただき、その後すぐにIIJの担当者の方からお電話をいただきました。第1回目のコンサルタントによるヒアリングには、臨床試験の現場の状況を知っている夛田も同席して、何に困っているのかを聞いてもらいました。お話をしてみると、IIJのコンサルタントは製薬会社でのGDPR対応ソリューションの導入経験があるということでしたし、DPO設置の依頼についても必要性をすぐに理解してもらえました。迅速にフォローしてもらえているスピード感がありました。
夛田氏
臨床試験を始めるまでには多くの手順があり、DPO設置で止まっているわけにはいきません。イズカーゴをお待ちいただいている患者さんにできるだけ早くお届けするためにも、迅速な対応をしていただけるというのは安心につながった部分でした。
佃氏
社内でDPOを設置する方法を選んでいたら、数ヵ月単位の時間が必要だったのではないかと思います。ところが、IIJに「DPO設置を急いでいる」ことを説明したところ、契約から1ヵ月もかからない短期間でDPOを設置できるとの回答をもらえました。
佃氏
DPO設置の件でIIJに連絡をしたわけですが、「EUに拠点がない企業は、EU代理人を置く必要があります。また、臨床試験を実施するにあたり作成が必要な書類についてもサポートできます」と、臨床試験におけるGDPR対応としてDPO以外にも具体的なご提案をいただきました。DPOやEU代理人の設置のみならず、法定書面作成についても製薬会社のGDPR対応の経験があるIIJにすべてお任せしたほうがいいのではないかという結論に至りました。
佃氏
最初にお話をした2020年12月から具体的な検討を始めて、2021年2月にはDPOとEU/UK代理人について正式発注しました。3月にはGDPR対応に必要な法定書面の作成についてのコンサルティングを発注しました。社内手続きや臨床試験の準備のスケジュールも考慮してくださり、柔軟に対応いただけました。
佃氏
DPOの速やかな設置については、2月に発注して、その月のうちにDPOの連絡先の情報を知らせていただきました。非常に短期間での対応には感動すら覚えた程です。EU代理人、UK代理人についても3月の初頭には委託できたという連絡をもらっています。
夛田氏
導入時期も含め、現在までもIIJにはいろいろ質問させてもらっています。でもその中で、「よく分からない」「知らない」という回答は一度もありませんでした。聞けば教えてくれる、何か答えをくれるということは、とても安心できる対応だと感じています。
GDPRそのものの対応ではなかったのですが、海外の病院との間で臨床試験の契約を結ぶために、データの取り扱いについての文言が必要でした。しかし私たちには欧米での臨床試験の契約の経験がなく、どのように記載したらよいか悩むことも多くありました。そうしたときも、IIJから的確な回答をもらえて、とても助かっています。
私たちだけで全世界のデータの取り扱いについてのガイドラインを理解することは不可能です。そうした中でフィードバックをもらえるのはありがたいです。適切な回答をいただけることのみならず、導入前から現在に至るまで、こちらから問い合わせた件については、迅速なお返事をいただけることも、とてもありがたく思っています。
夛田氏
今回の経験を基に、イズカーゴ以外の臨床試験も考えていくことになるでしょう。患者さんから情報を入手することがあれば、GDPRなどデータの取り扱いに対する対応が必要になります。これからもIIJに相談させてもらう予定です。
佃氏
欧州以外でのデータの取り扱いの対応についても、IIJに引き続き相談させてもらえるとありがたいと思います。GDPR対応やDPOの設置について、社内の関連部署やIIJと連携して結果的には安心して進めることができました。臨床試験のGDPR対応に対して、現在もこちらからの問い合わせについて迅速・丁寧に相談に乗ってくださり、適切なご提案をいただいています。自社だけでは対応できなかったところをIIJにサポートしてもらえて、本当に感謝しています。
※ 本記事は2021年9月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
開発品の臨床試験にあたりGDPR対応が早急に必要
JCRファーマの最近のトピックをお話しください。
北村氏
JCRファーマは1975年に設立された会社です。遺伝子組み換え技術を用いるバイオ医薬品や、ヒトの細胞を用いた再生医療等製品の開発などを行っています。薬局では販売されていない薬を作っているため、一般には馴染みが薄いかもしれませんが、研究開発型企業として患者さんに貢献するための薬・技術を作っている会社です。
そうした研究開発の成果として、2021年5月に国内で販売を開始したハンター症候群治療剤「イズカーゴ」があります。ハンター症候群は、体内の老廃物が処理できず、全身や脳に蓄積していくことが原因で、喋れなくなったり表情がなくなったりして、亡くなることもあります。イズカーゴの開発及び提供により、早期に治療すれば重症化の回避を期待できることから、患者さんやそのご家族に明るい光を提供できるものと考えています。
イズカーゴの開発とGDPR対応に関係があるのですね。
北村氏
イズカーゴは国内では2021年3月に承認され、5月に販売が始まりましたが、イズカーゴの開発は海外でも大きな反響がありました。一方で、JCRファーマではこれまで海外への製品提供は、実績がありませんでした。そうした中で、イズカーゴのニュースを見たブラジルの医師が来日して、ブラジルでの臨床試験の実施と販売を切望されました。イズカーゴを世界の患者さんに届けるべきだと考え、海外での臨床試験を進めることにしたのです。
夛田氏
そうした経緯から、イズカーゴの海外での臨床試験はブラジルで最初に始めました。ブラジルに次いで臨床試験を実施する地域として、欧米を検討し、欧州での臨床試験の準備を始めました。それまで、欧州で臨床試験を実施する上でのGDPR対応についての情報が不足していました。
GDPR対応に気付いたのはどういったことからですか。
夛田氏
臨床試験に参加してもらう患者さんには、臨床試験のメリット、デメリットを説明し、参加の意思を自筆で署名してもらう「同意説明文書」の記入が求められます。欧州向けに同意説明文書の作成をしているときに、臨床試験業務の受託機関である医薬品開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)から「ここにDPOの名前とメールアドレスを記載してください」と言われたのです。迅速に治験の準備を進めるためにも、早期のDPO設置が必要となりました。
DPOの設置についてどのような形で検討を進めましたか。
佃氏
できる限り早くDPOを設置する方法について、社内関連部署とも協議を行い、外部委託について検討を進めました。そこで、インターネットのサイトで「GDPR対応」などのキーワードで法律事務所などを検索しました。