井尻氏
IIJとは旧ネットワーク構築時から付き合いがあり、ニーズに合った的確なアドバイスをもらえる安心感がありました。相談すると、将来的な拡張性も考慮してネットワーク機能をクラウドで提供する「IIJ Omnibusサービス」の提案を受けました。現在運用中のオンプレミス環境のクラウド移行を見据えた拡張性、迷惑メール対策が強化された「IIJセキュアMXサービス」、PC端末のアンチウイルスソフトとEDRを供する「IIJセキュアエンドポイントサービス」などのサポートもワンストップで受けられることも、運用上の負荷を低減できるという点で魅力でした。
江川氏
2018年12月に新ネットワーク構想をIIJに打診しました。2020年6月に移行第1段階として、IIJ Omnibusサービスの基盤構築を開始すると共に、Webゲートウェイの移行。2021年3月には移行第2段階として旧WANからのIIJ Omnibusサービスへの移行を実施しました。移行作業はIIJの支援を受けながらフェーズごとに実施でき、トラブルなく完了しました。
緒方氏
各施設でのルータの入れ替え作業が発生しましたが、その作業は本部から人員を派遣するのではなく、ネットワークの専門家ではない施設のシステム担当者に依頼しました。誰が見ても分かりやすい手順書をIIJが作成してくれたことで、遠隔の作業とルータの本部への返送までスムーズに進みました。
江川氏
メールの切り替え時にメール転送設定でトラブルがありましたが、IIJのサポートがありすぐに解決できました。
江川氏
管理職や一般職など複数の社員に対して、パソコンの動画配信を通したeラーニング研修を実施していますが、ネットワーク的な問題は起きていません。Web会議システムも複数同時開催していますが、こちらも動作遅延などは起きず、安定した運用ができています。IIJセキュアMXサービスによる迷惑メール対策で職員の削除の手間が省け、「IIJセキュアWebゲートウェイサービス」によるWebフィルタリングでブラックリストのアップデートの負担がなくなりました。私たちシステム担当の職員への問い合わせも、ほとんどなくなっています。
緒方氏
今回のネットワーク環境の大きなメリットはインフラへの安心感が得られたことです。業務を標準化するには横展開が必要ですが、従来のネットワークでは「この施設は回線が遅いから」といった制約がありました。そうした制約が解消され、組織として標準化した業務とシステムの提供ができるようになりました。
江川氏
遠隔地にある全国7施設のシステム担当者と連携しながら運用を行っています。施設のシステム担当者からの協力に感謝すると同時に、現場に負担をかけずにネットワーク運用ができるようになったこともネットワーク更新の効果だと感じています。
井尻氏
これまで、必要に迫られてDXを検討してきました。今後は本格的に全組織としてDXを考える必要があると考え、2024年4月に組織を改正しました。ネットワーク更新については、総務や経理といった事務、介護、食堂、診療所を1つの体系として構築しDXを推進させ、スムーズに動く現場を作りたいと考えています。
AI搭載の介護予防システム開発・導入もその1つです。入居者への日常生活に関する調査をデータベース化し、AIで解析することで「1年後」の要介護状態を予測するものです。このままでは健康でない将来が予測されるというAIの指摘があった際に、生活や食事、運動などの改善につなげていきます。これもネットワークインフラが整備されていてはじめて全拠点で利用できるようになったものです。
緒方氏
IIJのソリューションは、単なる囲い込みではなく、統一して利用することで利便性が高まるように設計されています。多くのベンダーのソリューションは、「これは良いけれど、こちらは他社がいい」という点があるものですが、IIJはどの分野でも候補に入るソリューションを提供しています。ワンストップで利用できることで、相談窓口から請求まで一本化できるメリットが大きいのです。今後もIIJのソリューションを活用しながら高い性能のインフラを少ない付帯業務で運用していきたいと思います。
※ 本記事は2024年11月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
オンプレミス機器の老朽化により既存のITインフラに課題が発生
IT面での取り組み状況について教えてください。
日本老人福祉財団 井尻氏
介護福祉業界では全体的に、システム面でもDX面でもあまり進んでいない企業が多いです。そうした中で日本老人福祉財団では、古くからIT化やシステム化に取り組んできました。現在は介護DXの取り組みを進めています。DXというと、一般には職員が使うものという印象があるでしょうが、私たちは、職員だけではなく入居者の皆さまにもお力をお借りしながら、全国7拠点で運営する有料老人ホーム「ゆうゆうの里」のDXを進め、高齢者コミュニティをより暮らしやすいものにできるように心がけています。顔認証システムやタブレット端末を活用して食事予約などを管理することで、職員は業務負担が減ります。一方で入居者はお元気な方が多いですから、タブレットを扱うことでデジタル機器に興味を持ちスマートフォンを使い始めるきっかけとなるといった効果も表れています。入居者と職員がWin-Winで、皆が幸せに暮らせることを第一に進めています。
本部 経営企画部 企画課
井尻 隆夫氏
システムインフラとしてのネットワークの状況を教えてください。
日本老人福祉財団 江川氏
2010年ごろに旧ネットワークからの更新をIIJに依頼しました。それまでは回線速度が遅く、拠点間でデータをバックアップするのに一晩で終わらないということもありました。ネットワークの一元管理を実現する「IIJ SMF sxサービス」を導入することで、大きく改善しましたが、それから10年近く運用を続けていくと、新たな課題も出てきました。
1つは、IIJ SMF sxサービスとは別に調達していたファイアウォールやWebフィルタリング機器の運用負担でした。すべての拠点からインターネットへ抜けるためにデータセンターに用意したオンプレミス機器の運用に手間がかかっていました。また、メールサービスやドメインサービスなど、個別に契約したサービスが増えて、管理の負荷も増えていました。
日本老人福祉財団 緒方氏
Webフィルタリングでは、アクセスを禁止するサイトのブラックリストを私たち管理者がメンテナンスしていましたが、負担が大きく、漏れもあったと思います。また現場でも課題が生じていました。利用していたメールサービスでは迷惑メールの自動対応機能がなく、職員が自分で削除する必要がありました。特に入居者を募る募集課では迷惑メールが多く、無用な作業が業務時間を圧迫していました。平均1日1人5分の作業としても、メールを利用している約700人の職員の総合計では年間数万時間の負荷になります。これを削減することは急務でした。さらにネットワークトラフィックも徐々に大きくなってきて将来的な速度面での対応も必要になったため、ITインフラのクラウド化に着手しました。