齋藤氏
実は2016年以前は、IIJのサービスを軸に全体のネットワークを構成していたのです。ネットワークインフラを一から構築することなくサービスとして利用できるため、帯域の増減にもフレキシブルに対応できる。EOL(製品のライフサイクル終了)も意識せずに済み、サービスは常に進化していく。セキュリティもしっかりしていて、平時はもちろん、災害発生時の復旧スピードも含めて安定性・信頼性が高い。このことは以前から分かっていました。
宮地氏
ネットワークをグループ共通のものにする方向性の中でも、国際航業として導入していたIIJサービスの一部は何とか残してきました。結果論ですが、IIJとの関係をつないできて本当に良かったと思っています。
長いお付き合いの中で、IIJは当社の事業特性や求められるネットワーク要件も十分理解しています。パートナーとしての安心感も大きな決め手になりました。
齋藤氏
コアネットワークには「IIJ Omnibusサービス」を導入し、各都道府県に展開する全国約50拠点は広域イーサネット網またはフレッツ網を介してIIJ Omnibusにつながっています。また各拠点のオフィス環境にはWi-Fiを整備しました。オフィス内はどこでも無線で通信が可能です。
インターネットの接続には「IIJプライベートバックボーンサービス」を利用し、「IIJクラウドプロキシサービス」も導入しました。業務アプリはGoogle Workspaceを利用しているので、通信の振り分けと負荷分散を行うためです。更に一般的なWeb通信の経路には「IIJセキュアWebゲートウェイサービス」を導入し、http/https以外のWeb通信は専用インターネット接続と「IIJマネージドファイアウォールサービス」を導入してセキュリティレベルを高めました。
エンドポイントのセキュリティを強化するため、各拠点には「IIJセキュアエンドポイントサービス」を導入しています。「IIJフレックスモビリティサービス」も導入し、リモートアクセス環境も増強しました。
2021年1月より導入を開始し、同12月にコアネットワークおよび約50拠点の展開を完了して本格稼働を開始しています。その後、Windows Updateを効率化するためにActive DirectoryとWSUS(Windows Server Update Services)機能がある「IIJディレクトリサービス for Microsoft」も追加導入しました。
高田氏
既存ネットワークからIIJ Omnibusへの切り替え検証の際、不具合の発生でうまくいかないことがありました。そのことを伝えると、夜遅い時間にも関わらず、IIJのプロジェクトメンバー全員が30分足らずで集結し、問題対処にあたってくれたのです。顧客のことを本当に親身になって考えてくれる、頼れるパートナーであることを改めて実感しました。
宮地氏
以前のリモートアクセス環境は出張中の社員の使用を想定したもので、最大同時接続数は、全ユーザの一割にあたる200ユーザで運用していました。当初はこれを継承する予定でしたが、プロジェクト中にコロナ禍が深刻化し、当社としてもテレワーク環境の整備が喫緊の課題になりました。
全社員約2,000名がテレワークできる環境を整えたいという急な計画変更にも関わらず、IIJはすぐに対応し、IIJフレックスモビリティサービスとそのコスト試算を提案してくれました。おかげでネットワークインフラ刷新のタイミングで、全社的なテレワークシフトに対応できるリモートアクセス環境を整えられました。機敏な対応力には大変感謝しています。
宮地氏
全体としてネットワーク運用がシンプルになり、通信のパフォーマンスと安定性も向上しました。各拠点に整備したWi-Fiは一度接続すれば、オフィス内のどこに移動しても通信を継続します。以前はフロアを移動すると再接続しなければなりませんでしたが、手間が不要になったと社員に好評です。WANやバックボーンも当社の事業特性を反映した帯域を確保しており、大容量のデータもスムーズに送受信できます。
齋藤氏
インターネット接続はクラウドプロキシで振り分けを行っているため、通信が安定し、Google Workspaceの処理遅延などのトラブルもなくなりました。
宮地氏
IIJフレックスモビリティサービスも社員には非常に好評です。移動中の電車がトンネルに入っても通信が切れず、再接続の必要がない。接続できるポートやサーバ、アプリケーションもユーザやデバイス単位で制御できるため、ポリシーに沿った柔軟な運用が可能です。これにより、コロナ禍のテレワークシフトにも機敏に対応できました。ポストコロナでもこのメリットを活かし、働き方改革を推進していきます。
ネットワーク刷新にはそれなりにコストはかかりましたが、業務の生産性が上がり、運用もシンプルになりました。トータルで考えるとネットワークコストはむしろ削減できていると思います。
高田氏
冒頭でお話ししたように防災・減災分野、環境・エネルギー分野を中心に、社会インフラ構築と国土強靭化のニーズが高まっています。長年培った技術力をベースに、常に未来を見つめ、より価値あるサービスの提供を通じ、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
今回のプロジェクトにより、事業特性を踏まえた最適なネットワークインフラを実現できました。これを軸に、今後はデータの利活用とビジネスのデジタル化を推進していきたい。この取り組みでも、引き続きIIJの提案とサポートに期待しています。
※ 本記事は2022年5月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
グループ共通のネットワークでは事業特性に対応できない
御社の事業概要について教えてください。
国際航業 高田一穂氏
当社は航空写真測量をベースにした地理空間情報を提供する会社です。地理空間情報とは、地球に存在する自然または人工のものを表現する情報のことで、例えば、高精度空撮画像に地理的特性や上下水道網などの社会インフラを情報として付加した地図データ群もその一つです。これらの情報を活用した道路網整備などの建設コンサルティング事業、地質・海洋調査や防災・減災、環境・エネルギーなどの取り組みを支援する空間情報コンサルティング事業を展開しています。お客様の多くは官公庁様ですが、エネルギーや不動産関連の民間企業様にも利用いただいています。
近年は毎年のように何らかの自然災害が発生し、その被害も激甚化しています。ハザードマップの作成には地理空間情報の活用が不可欠です。また再生可能エネルギーの注目が高まる中、太陽光発電や風力発電の設置場所確保が重要な社会課題になっていますが、立地検討には地理空間情報が基礎データとして利用されます。こうした理由から、防災・減災、環境・エネルギー分野の事業ニーズが高まっており、当社としてもこれを重要な成長分野と位置付けています。
今回、ネットワークインフラを全面的に見直されました。その背景を教えてください。
高田氏
当社の情報システム部門が、2017年4月に旧親会社の傘下に入りました。これを機に、ネットワークを含むIT環境は旧親会社が全体を統括管理することになりました。グループ全体でインフラを統合管理し、効率化するためです。
しかし2020年4月に方針転換があり、IT環境は「個社独立」することになりました。そこで国際航業内に社内システム部門として情報統括部を創設し、当社独自のネットワークインフラを構築することにしたのです。なお、2021年9月に株式譲渡が行われ、新たな大株主の下で現在の体制がスタートしています。
見直しにあたって、どのようなネットワークインフラを実現したいと考えたのですか。
国際航業 宮地里子氏
以前はグループ統合管理による最大公約数的な要件でIT環境を整備していたため、当社の求めるネットワーク要件を満たすものとは言えない状況でした。例えば、外部につながるネットワークはインターネットVPNで、帯域は十分とは言えない状況でした。これを補うため、帯域が逼迫するときはローカルブレイクアウトで負荷分散していました。
地理空間情報のデータは非常に大容量です。データの編集や送受信に時間がかかり、作業が進まない――。現場からはそんな悲鳴が上がっていました。支障なく業務を遂行できる広帯域のネットワークを求めていました。
国際航業 齋藤裕昭氏
地理空間情報は国土の地形や社会インフラの整備状況なども保持している、公共性の高い重要情報です。厳格な管理が求められるため、強靭なセキュリティ、そして堅牢かつ信頼性が高いことも重要な要件でした。