「乳の優れた力を背景に新しい食文化を創出し、人々の健康と豊かな社会づくりに貢献する」という経営理念のもと、牛乳、ヨーグルト、チーズ、アイスクリームなど乳製品を中心とした食品の製造、販売を展開している森永乳業。また、クラフト、リプトンといった海外ブランドに加え、マウントレーニア、クリープなど、マルチブランドによる商品展開を行い、お客様に優れた価値を提供し続けている。牛乳、ヨーグルトなどの開発・製造・販売を支えるネットワークは重要な基盤インフラである。そのため、同社はグループ各社をつなぐ全国240ヵ所の拠点間WANを整備した。「しかし、限られた人員で全国の拠点をサポートするため、運用管理の負荷に加え、ネットワークコストも増大していました」と同社の知久康成氏は課題を述べる。
拠点間WANはグループ内の広域内線網としての役割も担っている。WAN自体は冗長構成だが、広域内線網に関してはシングルのネットワーク構成で運用していた。「回線のメンテナンスにより、業務に欠かせない内線が使えなくなってしまったことがあります。業務を止めない可用性の確保も重要な課題でした」と同社の猪原朋巳氏は話す。
セキュリティの課題も切実だった。近年は機密情報などの窃取を目的とした標的型攻撃のリスクが高まっている。同社は以前からアンチウイルスなどのセキュリティ対策を施しているが、リスクの高まりに伴い、セキュリティの運用管理が煩雑化。標的型攻撃に対応するには、専門家の知識と運用アウトソースをフル活用し、より一層の対策強化が必要とされていた。
これらの課題を確実に解決、運用するためのパートナーに選択したのが、IIJである。IIJは多様なネットワークやセキュリティサービスをトータルに提供し、導入後の運用までワンストップでのサポートが可能だ。「実績のあるネットワークの専門家に任せれば、安心して運用をアウトソースできます。ネットワークとセキュリティに関する対応を一元化できるので、管理の効率化も期待できます」と知久氏は選定の理由を述べる。
同社はIIJのサービスを軸に従来のネットワークを刷新した。具体的には新たな拠点間WANとして「IIJ広域ネットワークサービス」を導入し、同社のデータセンターを経由していたインターネットアクセスは「インターネット接続サービス」にリプレースした。同時に多様なセキュリティ機能を提供する「IIJセキュアWebゲートウェイサービス」とファイアウォールの運用管理を代行する「IIJマネージドファイアウォールサービス」やセキュリティベンダーの提供するIPSサービスも活用し、入り口・出口対策を強化した。
プロジェクトではIIJがアクセス回線の手配、工事日程の調整まで担当。専用ヘルプデスクも設置し、各拠点からの問い合わせに直接対応した。「アクセス回線数は全部でおよそ240拠点、約370回線ありましたが、煩雑な作業にきめ細かく対応してくれた上、移行に伴うトラブルはゼロ。スケジュール通りに半年で移行を完了できました」と猪原氏は評価する。
導入効果としてまず挙げられるのは、運用管理の負荷とコストの低減が可能になったことだ。「自社内で煩雑な保守、設定変更などの作業を行う必要がなくなり、ネットワークコストだけで4割以上削減できました」と知久氏はメリットを語る。
セキュリティに関しても、運用をアウトソースできた上、最新の対策によりセキュリティレベルが向上。「リスクの低減に加え、取引先にも安全・安心をアピールでき、ビジネスにプラス効果をもたらしています」と知久氏は続ける。
ネットワークの可用性と品質も向上した。「IIJ広域ネットワークサービスをNTT系と電力系の2つのアクセス回線を採用し、2面での冗長構成と可用性の確保を実現しました。また、IIJがWANの冗長化設計も行い、Active/Activeの冗長構成にすることで、メンテナンスや万が一の障害時にも通信や広域内線が止まることはなく、業務への影響を回避できるようになりました」(猪原氏)。更に同社の吉野誠彦氏はこう述べる。「以前はCADのデータなど重いファイルをやり取りすると帯域が不足し、通信が滞ることもありましたが、今ではスムーズなやり取りが可能です」。
高い運用力も評価している。LAN内のパケットがループしてしまう問題が発生した際、その原因がサーバ側の設定不備にあることをIIJが提言し、問題の早期解決に役立ったという。今回、LAN内の問題はIIJの担当ではない。「オペレーションまで含めて環境を詳細に監視してくれているので、担当外の問題も早期発見できたのでしょう。モノを売るだけでなく、総合的な視点からサービスを提供してくれる点がIIJの魅力だと実感しました」と吉野氏は満足感を示す。
今後は刷新した拠点間WANの有効活用を図り、全社的なワークスタイル変革に取り組む。ビデオ会議システムの活用のほか、海外での利用も視野に入れたモバイルワーク環境の強化を計画している。「その実現に向けて、IIJの提案力と運用力が大きな力になります」と語る知久氏。IIJの提供する価値が、同社の今後の成長を支える原動力の1つとなっている。
※ 本記事は2014年6月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。