化粧品の製造販売を中心に事業を展開するノエビアホールディングス。対面販売にて提供する高級品から、ドラッグストアなどで販売する低価格品まで、豊富な品ぞろえによって堅調な業績を維持している。
同社は2011年、サーバの保守切れを控え、システム更新を検討開始した。同社本体及びグループ関連企業の各種システムは従来、オンプレミスで構築しており、サーバの大半を自社で保有し、本社ビルのマシンルームに設置していた。
「基幹系から業務系、情報系に至るまで、160台以上のサーバを抱える結果となり、ITコストが膨れ上がっていました。コストを抑えつつ、システム更新を行うことで、ROE(株主資本利益率)・ROA(総資本利益率)を改善させる手段を模索していました」と同社の濱口氏は課題を述べる。
加えて、運用負担の増大にも悩んでいた。「数多くのサーバの運用保守やハードウェアのリプレースだけでも、相当な時間と労力を費やしていました」と同社の滝川氏は振り返る。
更には、BCP(事業継続計画)の観点でも課題を抱えていた。「やはり自社ビルのマシンルームでは、大規模な自然災害や計画停電への対策など、ファシリティの面でどうしても不安が残ります。そのため、データセンターを利用した方が事業継続性の面で得策と考えていました」と濱口氏は語る。
ノエビアホールディングスはシステム更新にあたり、従来の課題を解決するために考えたのが、クラウド利用をまず第一に検討する"クラウドファースト"だった。情報系はもちろん、業務系や基幹系のシステムもすべて基盤をプライベートクラウドに移行する決断をした。
「IT資産を自社で保有する必要がなく、運用保守も任せられるクラウドは、私たちが求めるシステム更新のための最適解でした。実は最初に検討した際、クラウドもそれなりにコストがかかることが判明し、移行するか迷ったのですが、BCPの観点からクラウド化は必須と判断しました。それに財務面でも、IT資産圧縮によって"持たざる経営"を実現すれば、ROE・ROAを向上でき、企業価値をより高められます」(濱口氏)
2011年末、同社はクラウド移行を前提にRFPを作成し、複数ベンダーから提案を募った。比較検討の末に採用したのが、「IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ」をはじめとするIIJのソリューションである。
「IIJはクラウド移行の技術とノウハウを確立していたのがポイントでした。そして、他社の提案はプライベートクラウドとはいえ、ハードウェアは当社の資産となり、保守切れの際は更新が必要など、結局ハウジングと大差ありませんでした。ハードウェアを含め事業者がすべて基盤を提供するという、私たちが本当に求めていたプライベートクラウドを提案してくれたのはIIJだけだったのです」(滝川氏)
その上、ECサイト『ノエビアスタイル』をオンプレミスで構築しており、その実績も採用の後押しとなった。また、第三者機関の監査レポートによって証明されるセキュリティの高さといった品質面なども総合的に評価した。
実際のクラウド移行は2012年末から取りかかり、最初は公開サイトやECサイト、次に一部の業務系と基幹系、最後に残りの業務系と基幹系といった3フェーズに分けて実施した。
「データ量が多く、移行が心配でしたが、IIJはデータを物理メディアにコピーして、データセンターに持ち込むという柔軟な対応をしてくれました。そのおかげで、短時間で確実にデータを移行できました」と同社の滝川氏は語る。
併せて、バックアップシステムはクラウドと同一データセンターにてハウジングで構築し、クラウド上のシステムと直接連携させている。クラウド型の統合メールセキュリティサービス「IIJセキュアMXサービス」も導入し、誤送信防止の実現やメール運用をアウトソースしたりするなど、IIJの各種ソリューションを活用してシステムを更新した。
同社はIIJの支援によるクラウド化によって、コストを抑えつつシステムを更新することに成功。「IT資産であるサーバを160台以上削減でき、ROE・ROA向上に貢献できたと自負しています。移行後はどのシステムも、オンプレミスに比べて遜色のないパフォーマンス・安定性・使い勝手を実現し、実務現場のユーザはクラウド化されたことに気づかないほどです」と濱口氏は強調する。
同時にサーバ運用保守もクラウド化によって最適化できた。「今まではサーバ台数が多く、購入時期もばらばらだったため、リプレースの時期が途切れることなく訪れていました。リプレースに伴うOSやミドルウェアのバージョンアップ検証なども合わせると、常にサーバに振り回されている状況でした。それがクラウド移行によって解消され、更には監視や障害対応の負荷激減なども達成。今まで運用保守業務に奪われていた時間と労力を、より戦略的な業務に費やせるようになりました」と滝川氏は笑みを浮かべる。
BCPについても、レベルアップを果たしている。「今のシステムのクラウド基盤はIIJの堅牢なデータセンターにあるので、自然災害や計画停電への対策をはじめ、事業継続性を向上できました」と滝川氏は話す。
今後は海外現地法人システムのクラウド化も視野に入れるという。そして、同社のIT戦略全般として、「今回のクラウド化によって生まれた"一歩先の余裕"を活かし、今まで以上にITを有効活用して、企業価値を向上していきます」と濱口氏は展望を語った。
※ 本記事は2014年5月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。
※ 記事内のユーザプロフィールについては2014年11月末現在の情報です。