サンプラザは高知県内でスーパーマーケットを展開。食の安心・安全はおいしさの1つであるとして、従業員が農業研修を行い、自然環境への意識を高める取り組みを続けている。そして、「ゴミを宝物に!」を合言葉にグループ全店から出る生ゴミを資源として活用。生ゴミから作る安全な堆肥を契約農家で利用し、収穫した野菜を店舗で販売している。更に、「堆肥で野菜を育てる新たな農業法人を立ち上げる準備を進めており、資源循環で地域に貢献しています」とサンプラザの管理部 部長 細川和夫氏はエコ活動への取り組みを述べる。
サンプラザでは生ゴミの資源化の取り組みと共に、「古紙ポイントカード」のサービスを提供している。エコグリーンが企画・提案、えむぼまがシステム開発・運用を担う古紙回収ポイントシステムを4年ほど前に提案したのがサービス開始のきっかけだ。利用者は店舗駐車場の一角に設置された専用端末を操作して古紙ポイントカードを発行。そして、持参した新聞や雑誌などの古紙を回収BOXに投入すると、ポイントが付与され、商品券に交換できるサービスだ。ポイントがたまるお得感とエコ意識が相まって、「古紙ポイントカードの会員数は3万人を超えており、来店者数の増加にも大いに役立っています」と細川氏は相乗効果を語る。
ただ、課題もあった。地域住民のエコに貢献することが主な狙いだったが、回収BOXへの古紙投入のために駐車場を訪れる利用者を店内に呼び込み、買い物客を増やすことが、次の検討事項としてあがっていたのだ。更に、各店舗でどれだけの古紙が投入されているのか把握できていなかったため、効率的に回収できていないことも問題だった。そんなとき、エコグリーンからある提案があった。
エコグリーンが管理している古紙ポイントカードは1店平均で2,000枚以上に上る。そのうちリピーターは約7割。従来、駐車場の専用端末で発行していた古紙ポイントカードを店内のサービスカウンターでの発行に切り替えることで、利用者の買い物が期待できる。そして、古紙ポイントカードにたまったポイントは商品券との交換に加え、サンプラザカードへの移行もできるようになる。更に古紙の重量を毎日定時に測定し、古紙業者と連携することで運送の無駄もなくなるのだ。「来店するお客様の約9割はサンプラザカードを所有しています。少しのポイントでもサンプラザカードに移行できれば、買い物をするお客様の利便性も高まります。また、古紙の重量をリアルタイムで測定することで、適切なタイミングで回収できます」と細川氏は語る。
サンプラザカードへのポイント移行サービス開始に先立ち、えむぼまでは古紙回収ポイントシステムの一部を自社データセンターからIIJ GIOへ移設している。その理由について、えむぼまの代表取締役 森正彦氏は次のように述べる。「これまで、利用者のポイントを一元的に管理する仕組みを自社データセンターで構築・運用してきました。今回のサンプラザカードとのポイントの連携に加え、今後のマーケティング活動へのシステム利用を視野に入れると、外部との接続性や信頼性に優れたインフラが必要です。そこで、IIJのサービスを採用したのです」。
えむぼまでは、IIJ GIOコンポーネントサービス 仮想化プラットフォーム VWシリーズ(以下、VWシリーズ)とIIJモバイルを活用して古紙ポイントカード利用者のポイントを管理する仕組みを構築。現在は、サンプラザが先行してポイント移行などのサービスを行っているが、古紙回収ポイントシステムは九州・四国地区の他のスーパーでも導入している。今後、各社のマーケティング活動に応じて個別にサーバを割り当てたり、複数企業が集まってビジネスを展開したりするなど、様々な構想があるという。その基盤としてVWシリーズは自由度の高いクラウド環境を提供。サンプラザ向けのサーバをはじめ、今後のビジネスニーズに応じて迅速かつ柔軟にリソースを追加できるのだ。
ビジネス基盤としてIIJのサービスの利点について、「IIJはインターネット分野の老舗として高い技術力を持ち、安定したインターネット接続サービスを低コストで、迅速・確実に、安心して利用できることです。そのため、私たちはセキュリティなどの心配をせずに自由にビジネスを組み立てられます。そして、流通業界は競争が激しく、マーケティングなどのビジネス戦略をすべて自社でまかなうのは困難です。顧客の情報管理などを含め、お客様が安心してアウトソーシングできる基盤が必要です。それがIIJ GIOなのです」と森氏は語る。
えむぼまでは、古紙回収ポイントシステムのサービス開始以来、専用端末とデータセンターのサーバ間のM2M接続にIIJモバイル/タイプDを活用。屋外駐車場に設置された専用端末に接続するだけで開通が可能だ。また、全国をカバーする3G網の利用により、郊外の店舗でも通信に支障をきたすことはないという。
一般にM2Mを構成する場合、他社のサービスではモバイルなどのネットワークとクラウドを個別に調達する必要がある。その点、IIJはモバイルからクラウドまでワンストップで安全性・信頼性の高いサービスを低コストで利用できるメリットがある。万一モバイル通信に障害が発生した場合にも、その原因切り分けをIIJに任せられるので、企業ユーザは的確な対応が可能になる。森氏は「IIJの営業担当者は私たちソリューションベンダーの要望をきちんと聞き、サービスに必要な調整を行ってくれます。そのため、当社はお客様へのソリューション提供に専念できています」と、ビジネスパートナーとしてのIIJのサービスとサポート体制を評価する。
エコグリーンが主体となって、収集したデータ(いつ、どの店舗で、どのくらいの古紙を投入したかなど)を分析してスーパー側に提供してきた。「サンプラザではお客様の利便性を高める様々な施策を打ち出しています。今後、データを活用し、集客に効果的なタイムセールを実施するなど来店者数と売り上げの増加につながる提案をお願いします」と、細川氏はM2Mを活用した流通ソリューションに注力するエコグリーンとえむぼまに期待する。そして、サンプラザやエコグリーンだけでなく、古紙業者の効率的な回収を実現するなど、IIJのサービスは波及効果を生んでいる。
えむぼまでは、スーパー向けソリューションの拡大に加え、将来はネットスーパーなどに取り組む意向もある。スーパーや物流など様々なプレーヤーが集い、ビジネスマッチングの場としてIIJの役割が大いに期待されている。
※ 本記事は2014年2月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。