昭和音楽大学は、1940年に創立者下八川圭祐が創設した東京声専音楽学校をルーツとし、現在短期大学部、大学院修士課程・博士後期課程を擁した音楽・舞台芸術系高等教育機関として日本の音楽文化発展に貢献している。
同大学は2011年から「IIJ広域ネットワークサービス」を導入し、神奈川県川崎市にある南校舎及び北校舎のほか、首都圏を中心に8校展開する附属音楽・バレエ教室など合計12拠点間で広域イーサネット網を構築している。
そうした中、本部がある南校舎のLAN環境において、ネットワーク機器のサポート終了に伴いLANリプレースが検討された。総務部総務課 課長 進藤正義氏は次のように説明する。「2007年に竣工した南校舎は、レッスン室などの設置を優先したためネットワーク化が後手に回り、LAN環境を強化する上でいくつかの課題があったのです」
その1つが、異種混在のネットワーク構成。南校舎のLANは増築を加えてきたことでフロアによっては機器の種類が異なり、統一した管理が難しくなっていた。
2つ目は、ネットワークの可用性。コアスイッチがシングル構成だったため、万一故障が発生した場合は南校舎のネットワーク全体に影響を与える可能性が高かった。
「幸い過去に大きなトラブルはなかったものの、PC教室はシンクライアント化されているため、コアスイッチに障害が発生すれば授業への影響は避けられませんでした」そう語るのは、総務部総務課 情報基盤係 総務部企画・IR推進室 渡辺智克氏だ。また1Gbpsの帯域が不足してきていたため、増強する必要性が出ていたという。
3つ目が、機器の増築による保守費用の増大。そしてそれに伴う機器の保守期限を管理するための運用負担増加が課題とされた。
昭和音楽大学では、2012年5月頃から南校舎のLANリプレースに向け本格的に検討を開始。2013年2月にRFPを提出し、複数の事業者からの提案を検討した結果、IIJを事業者として決定した。
IIJが選ばれたポイントは大きく3つある。第1に技術力と提案力。IIJは提案時から最先端な技術を取り入れようとする姿勢が違っていたと渡辺氏はいう。「ネットワークを俯瞰的に分析し、将来的なWANや無線LANを取り入れたネットワーク全体の中の一部として、拡張性を見据えたLANを設計してくれました」
さらに渡辺氏は続ける。「仮に提案がRFPどおりなら私たちが必要としているレベル止まりで技術的な進歩はありませんが、IIJは大学側が考えていることよりもさらに優れた提案をしてくれたので、新たな気づきが生まれ満足度も高い評価となりました」
第2は大学での構築実績。ベンダー選びにおいて他の大学での導入実績も重要な要素だったと話すのは、総務部総務課 情報基盤係 原智史氏だ。「IIJは既にIIJ広域ネットワークサービスで実績があり信頼できる事業者であることは理解していましたが、他大学での導入経験も豊富で、常に新しい技術に取り組む姿勢にも注目しました」
第3がコスト削減効果。IIJの提案したネットワーク機器は、保有する限り故障時の無償交換サービスを行うライフタイム保証に対応していたので、年間の保守費を従来よりも3割以上削減できる上、導入後5年間の保守費総額も競合の提示額より約半分にまで圧縮することが見込めたという。
2013年4月から9月までの約半年間で南校舎LANの再構築が行われ、10Gbps対応のコアスイッチを冗長構成にしたほか、新たにネットワーク監視サーバも導入し、安定性と信頼性を強化させるとともに、万一の場合の迅速な復旧対応も可能にした。
「LANの10Gbps化によって通信量の増大に対応できるようになり、拡張性を見据えたシステム運用計画の推進が可能になりました」との見方を示す渡辺氏は、ネットワークの安定運用の効果についても言及する。「障害発生時には監視サーバからリアルタイムに通知されるようになり、コアスイッチも冗長化したことで、障害復旧までの時間を大幅に削減できるようになったと考えています。機種も同一メーカに統一され、管理作業も非常に楽になりました」
一方、大学で講師も兼務する原氏は、「PC教室のネットブート式シンクライアント端末のレスポンスも改善し、アクセス障害の報告件数も10分の1ほどにまで減少しています」と満足げだ。
昭和音楽大学では、2014年度中にも内部向けDNSサーバ/DHCPサーバのリプレースや、ファイアウォールのリプレースの他、Webサーバのアウトソースも計画している。
プロジェクトを振り返り、進藤氏はIIJを次のように評価する。「他大学での実績や我々の期待を上回る提案力の高さからIIJをパートナーに選んだのですが、プロジェクトが進むにつれ担当SEや営業のプロジェクトのマネジメント力、要所での的確なアドバイスなどを受けることで、改めてIIJの技術力の高さとコミュニケーション力の高さを実感するようになりました。IIJのトータルサポートがプロジェクトの成功に貢献した要因だと確信しています」
昭和音楽大学のネットワーク環境の最適化はまだ道半ば。今後もIIJは検討課題に対するスマートな提案を継続していく考えだ。
※ 本記事は2014年7月に取材した内容を基に構成しています。記事内のデータや組織名、役職などは取材時のものです。