今知っておきたいタイ最新事情(全6回)
第1回 中進国となったタイ、2016年度のタイの経済動向
バックナンバー
2016/07/27
さらに増え続ける日系企業
ASEANの中進国として成長中のタイは、古くから製造業による日系企業の進出が盛んであり、日系企業の進出数、在タイ日本人数もASEANの中でトップを走り続けています。
※2016年4月末時点でバンコク日本人商工会議所の加入者数は現在1,715社。在タイ日本人の数は外務省の登録ベースでまとめた「海外在留邦人数調査統計」で2014年10月時点6万4285人、2016年現在ではさらに伸びているとされています。
JETROタイの調査によると、経済成長率は2012年+7.3%、2013年+2.8%、2014年+0.9%、2015年+2.8%と緩やかながら成長を続けています。
製造業分野は自動車産業、電気機械産業、電子部品産業などが日々成長し、アジアのデトロイトと呼ばれるようになる程に自動車関連企業が数多く進出を果たしました。日系ではトヨタ自動車を筆頭に、いすゞ、ホンダ、日産、三菱、マツダ、日野、スズキなど大手自動車メーカーのほとんどが進出しています。
一方で、今後進出件数が増えることが予想されているのはタイ人を消費者ターゲットに据えるサービス分野関連企業です。すでに日本食レストランはバンコク都内では飽和状態と言われていて、JETROが2015年発表したタイ国における日本食レストラン実態調査では、タイの日本食レストラン数が15年度には前年度比11.5%増の2,364店だったと発表しています。北は北海道から南の沖縄料理まで、あらゆる日本食が食べられる環境になっています。
この他にも、教育・研修サービス、インターネットサービス、日本へ向けたインバウンドサービスなど、ここ数年次々と新しい産業・企業の進出が増えています。
混乱が続くタイ
しかし、日本国内から見るタイのイメージは、近年の政治的混乱や自然災害の様子が度々報じられているためか良いと言い切れる状態ではありません。
2006年タクシン政権がクーデターで崩壊、その後のタクシン派グループによる大規模なデモ活動、2008年にはタイの国際空港であるスワンナプーム空港が反タクシン派グループによって閉鎖されるという事件も発生。さらに、2010年にはバンコク都内中心部を占拠していたタクシン派グループの反独裁民主戦線(UDD)のデモ隊に対して、タイ国軍が投入される事件も発生し、多くの死傷者を出ました。
ようやく総選挙後に落ち着くかと見られた2011年には、タイ中部アユタヤ県を中心としたおよそ60年ぶりの大洪水で数多くの日系企業が被害に遭い、一部の産業では日本国内経済にも大きな影響を与えました。世界銀行の推計によると、自然災害による経済損失額の大きさでは東日本大震災、阪神大震災、ハリケーン・カトリーナに次ぐ史上4位の被害額1兆4250億バーツ(457億米ドル)とされています。
2013年後半から2014年5月まで、再び反タクシングループの大規模デモが活発化、バンコクの主要幹線道路の交差点が封鎖されました。この問題を解決するため、タクシン派政権と反タクシン派グループで幾度も協議が行われましたが、結局合意点が見出せず、2014年5月にプラユット陸軍司令官がクーデターを決行したと宣言。バンコク首都圏での長期にわたる社会の混乱と政治的緊張を収拾し、公正な政治、経済、社会改革を実施するとして、統治権を掌握したと発表しました。本原稿執筆時の2016年6月現在まで、軍政は継続しています。
さらに2015年には都内中心部のエラワン廟で爆発事件があり、外国人を含む多数の怪我人・死者を出すなど、大きなニュースが毎年続いています。
アセアン ジャパン コンサルティング株式会社
代表取締役 阿部俊之
アセアンジャパンコンサルティング株式会社 代表取締役。
早稲田大学商学部卒業後、タイへ渡り、現在タイ国内で現地の経済情報を伝え、タイ企業のリサーチ、日系企業進出支援を行っている。タイ進出案件のコンサルティング、タイの企業支援、日系企業の海外進出支援等、精力的に活動中。アセアンの経済統合に備え、隣国の調査も開始している
『だからタイビジネスはやめられない!』等、タイ経済、タイ株式、タイ不動産に関する書籍5冊上梓。