IIJでは、農林水産省の平成28年度公募事業「革新的技術開発・緊急展開事業」で受託した「低コストで省力的な水管理を可能とする水田センサー等の開発」の実証実験を、共同研究グループである「水田水管理ICT活用コンソーシアム」のメンバーとして、静岡県袋井市、磐田市にある約75haの圃場において、2017年度から2019年度まで実施いたしました。
IoTセンサーで水田の水位および水温を測定し、無線基地局を通してクラウドにデータを送信、測定データを遠隔監視し、自動給水弁を遠隔操作して水位をコントロールできる「ICT水管理システム」を開発。袋井市、磐田市の75ha圃場において、水位センサー300基、自動給水弁100基を設置し、効果を検証した結果、移動距離や作業時間の大幅な削減が見られました。
ICT活用で水管理時間の大幅な縮減により、空いた時間でさらに多くの耕作地の管理やきめ細やかな栽培管理が可能になり、更には大規模経営、収穫量の増加や品質の向上によって、農家の競争力が強化されます。
IIJは千葉県白井市より圃場(約68.5a)を借り受け、代掻きから、田植え、稲作の生育管理、稲刈りまでの一連の稲作作業において、IoTデバイスや通信に用いる無線技術などの有用性を検証する実証実験を、白井市農家様の協力のもと2024年2月から10月まで行っています。
具体的には、現在開発中の水田センサーや、様々なメーカの自動給水装置を設置。新規センサーのフィールド試験、システム間連携試験、カーボンクレジット創出の方法論、新通信規格の有効性の確認などを通じ、稲作作業の効率化や節水効果を検証しています。
※ 上記の実証実験を行ってきた中で、IIJは稲作の水管理において、水田に設置したセンサーから取得したデータを元に、稲の生育状況を算出。算出した生育状況に応じて水管理を自動で行う仕組みを開発し、特許を取得いたしました(特許第7425846号)
日本の農業は、平均年齢が65歳を超える一方、経営の大規模化が進み、農作業の効率化、省力化は大きな課題となっています。その中で農林水産省を中心として、ICT技術を活用する「スマート農業」を普及させる取り組みが全国各地で急速に進みつつあり、2019年から始まった「スマート農業加速化実証プロジェクト」では、全国69地区において、先端技術を活用し、生産から出荷までを一貫して管理する体系を確立するべく、官民一体となった取り組みが進んでいます。
IIJでは、2017年から農研機構生研支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」の支援を受け、水田の水管理の省力化を可能とする低コストなICT水管理システムの開発を進めてまいりました。静岡県磐田市、袋井市での3年間の実証実験を経て、このほど長距離(約1~2km)の通信を可能とする無線方式LoRaWAN®に対応した安価な水田センサーの開発に成功しました。