ページの先頭です
平成の30年が終わり、5月より令和に元号が変わりました。平成が始まったのは1989年。商用のインターネット接続サービスが開始されたのは1993年なので、まだインターネットが一般的に使われる前です。インターネットの普及に大きく寄与したWindows 95が発売されたのが1995年。Googleが設立されたのが1998年。NTTドコモが携帯電話によるインターネット接続サービスであるiモードを開始したのが1999年。NTT東日本とNTT西日本がFTTHサービスであるBフレッツを開始したのが2000年。NTTドコモが世界初の第3世代携帯電話サービスであるFOMAを開始したのが2001年。Appleが初代iPhoneを発売したのが2007年。NTTドコモが第4世代携帯電話サービスであるXiを開始したのが2010年。平成の30年間は、我が国だけでなく、世界的に情報通信が大きく発展した時代でした。
本号は令和に入って初めての「IIR」となります。今、一部の国では第5世代携帯電話サービスが開始される一方、巨大なプラットフォーム事業者による情報の独占が問題になっています。我が国においても、昨年より総務省において「電気通信事業分野における競争ルール等の包括的検証」が開始され、ネットワークレイヤーのみならず、プラットフォームや端末のレイヤーにも範囲を広げ、2030年頃を見据えたネットワークのビジョンが議論されています。情報通信技術は、これからの時代においても、社会の発展に大いに寄与するものであり、IIJもその一翼を担っていきたいと考えています。
「IIR」は、IIJで研究・開発している幅広い技術の紹介を目指しており、日々のサービス運用から得られる各種データをまとめた「定期観測レポート」と、特定テーマを掘り下げた「フォーカス・リサーチ」から構成されています。
1章の定期観測レポートでは、電子メールを中心とするメッセージングテクノロジーを取り上げます。IIJのメールサービスの受信側において、SPF、DKIM、DMARCの送信ドメイン認証技術の普及状況を確認したところ、SPFの認知がかなり高くなっている一方、DMARCの認知は進んでいないことが分かっています。米国連邦政府のドメインの80%がDMARCレコードを設定しているという調査結果もあるなか、日本でもDMARCの認知度をより高める工夫が必要です。本章では、送信ドメイン認証技術の普及状況に加えて、メールの配送経路の暗号化の解説や、筆者もメンバーとして活動しているM3AAWG、JPAAWGの活動について紹介します。
2章のフォーカス・リサーチ(1)では、ブロックチェーン技術をベースとしたアイデンティティ管理・流通の動向を解説します。ここでは、Ethereumブロックチェーンがクレデンシャルに用いられるERC(Ethereum Improvement Proposal) の動きを取り上げ、クレデンシャルが公的な証明書として利用されるユースケースに触れています。また、ここ数ヵ月において、複数のベンダーやコンソーシアムがDID(Decentralized Identifiers)やSSI (Self Sovereign Identity)などの概念を 提示し、ブロックチェーンをベースとしたクレデンシャル管理技術が注目されていることを紹介します。
3章のフォーカス・リサーチ(2)では、eSIMを取り上げます。IIJは昨年、HLR/HSSを自社で保有し、いわゆる「フルMVNO」となりました。フルMVNOになったことで提供できるようになった機能の1つにeSIMがあります。この章では、eSIMが必要とされる背景やeSIMの仕組みを説明したうえで、他社及びIIJの取り組みをお伝えします。物理的なSIMカードが不要となり、通信契約を管理するプロファイルが電子データとしてやり取りされる世界は、通信サービスの契約プロセスを大きく変革するものとして注目されています。
IIJでは、このような活動を通じて、インターネットの安定性を維持しながら、日々改善・発展させていく努力を続けています。今後も、お客様の企業活動のインフラとして最大限に活用していただけるよう、様々なサービス及びソリューションを提供し続けていきます。
執筆者プロフィール
島上 純一 (しまがみ じゅんいち)
IIJ 取締役 CTO。インターネットに魅かれて、1996年9月にIIJ入社。IIJが主導したアジア域内ネットワークA-BoneやIIJのバックボーンネットワークの設計、構築に従事した後、IIJのネットワークサービスを統括。2015年よりCTOとしてネットワーク、クラウド、セキュリティなど技術全般を統括。2017年4月にテレコムサービス協会MVNO委員会の委員長に就任。
ページの終わりです